【1分小説】追憶の木
ある村には、「追憶の木」と呼ばれる大きな木がありました。この木には、人々の思い出や願いが宿ると言われていました。
村に住む若い女性、エミリーは幼い頃からその木に特別な思いを抱いていました。
両親が亡くなった後も、木の下で過ごす時間が心の支えだったからです。木の葉が風に揺れる音は、まるで両親が語りかけるかのようでした。
ある日、エミリーは木の下で古びた日記を見つけました。それは祖母が書いたもので、木に託した願いや思い出が記されていました。
エミリーは日記を読み進めるうちに、祖母が若き日の恋人との再会を願い続けていたことを知りました。
「祖母の願いを叶えるために、私が何とかしなきゃ」とエミリーは決意しました。
村を離れ、多くの人々と出会いながら、祖母の恋人を探し続けました。
そして、ついに祖母の恋人である老人、トーマスを見つけました。
「あなたが祖母の恋人だったのね」とエミリーが言うと、トーマスは頷きました。
村に戻ったエミリーは、追憶の木の下で祖母の日記を読み上げました。トーマスは涙を流しながら、長年の思いを木に語りかけました。
エミリーの心にも、新たな未来への決意が生まれました。
その後、エミリーは村の人々に祖母の物語を語り伝えました。
「追憶の木は、これからも多くの人々の思い出を守り続けるわ」とエミリーは人々にそう言います。
木の下で過ごす時間は、エミリーにとってかけがえのない宝物となりました。
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