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ポータルの向こうへ: 癒し手と戦士と王女

物語は、普通の高校生であるヒロシと彼の幼馴染、アカネから始まる。ある日、彼らの前に突如として現れたのは、彼らの生活とはまったく異なる世界への「ポータル」だった。そして、エラーラという謎めいた転校生によって、この異世界に導かれた二人は、自分たちが想像を超えた役割を果たすことになると知る。


ポータルの向こうには、美しい風景と古代の伝説が広がり、闇に覆われた危険な地が待ち受けていた。この世界の王女であるエラーラは、彼らに助けを求める。その願いを胸に、ヒロシは「癒し手」、アカネは「戦士」として、この新たな地で力を発揮することを決意する。


しかし、この旅路は単なる戦い以上のものだった。友情、成長、そして自己発見――。異世界の運命が二人に託されたことで、彼らの心に宿る真の力が試されることになる。


「ポータルの向こうへ:癒し手と戦士と王女」は、異世界に引き寄せられた者たちが、異なる運命に抗い、絆を深めながら真の自分を見つける物語である。未知なる冒険と魔法の力が交錯するこの物語で、彼らがどのように成長し、世界を救うために立ち上がるのか、どうぞ見届けていただきたい。



---


ヒロシの頭は割れるように痛んでいた。彼は目をしばたたき、強い光に思わず目を細めた。ここは…どこだ?周りの景色が何かおかしい。空気が重く、土と野花の香りが漂っている。遠くからは聞き慣れない声が叫んでいるのが聞こえた。


その隣には、見覚えのある姿が立っていた。アカネだ。古びたソフトボールのバットを握りしめ、近くの人々に向かって、今にも唸り声を上げそうだった。彼女はバットを武器のように構え、目には怒りが燃えている。


「近寄らないで!」アカネの声が鋭く空気を切り裂いた。「あんたたちが誰か知らないけど、あと一歩でも近づいたら、ぶっ飛ばすから!」


ヒロシは頭をこすりながらふらついて立ち上がり、状況を把握しようと周りを見渡した。甲冑を身にまとった人々が、何人かはロイヤルブルーのマントと見慣れない紋章をつけ、慎重に手を挙げてこちらをなだめるような仕草をしている。アカネは、今にも彼らの頭を吹き飛ばしそうな勢いだったが、相手の方は彼女の強気な態度に少しばかり愉快そうに見える。そんな中、ヒロシはその集団の中に見覚えのある顔を見つけた――エラーラだ。彼女は、今朝学校で見たばかりの新しい転校生だ。


ただ、今の彼女は完全に違って見えた。


あのときの制服姿はどこへやら、長く流れるようなドレスを身にまとい、刺繍が太陽の光で煌めいている。髪は柔らかく肩にかかり、穏やかだが力強い雰囲気をまとっている。


「アカネ、待って…」ヒロシは彼女の肩に手を置き、なんとか言葉を絞り出した。「たぶん彼らは、助けに来たんだと思う。」


アカネは振り返り、信じられないような顔をして彼を見た。「助け?ヒロシ、こいつら中世から出てきたみたいな格好してるのよ!」


エラーラの冷静で落ち着いた声が会話を断ち切った。「どうか、説明させてください。」彼女は前に出て、鋭い視線でヒロシを見つめた。その目には今朝見たのと同じような強い意志が宿っている。「混乱しているでしょうが、あなたたち二人をここに連れてきたのは、私の世界を救うために、助けが必要だからです。」


エラーラの言葉に、ヒロシの中で何かが引き金を引かれ、突然すべてを思い出した。



---


あの日はいつもと変わらない朝だった。ヒロシはバインダーを胸に抱えながら学校の廊下を走り、靴が磨かれた床に音を立てて滑っていた。今日は新しい転校生、エラーラを案内する役を任されており、良い印象を残そうと必死だった。


角を曲がると、幼馴染のアカネとぶつかりそうになった。彼女はあきれたような顔でヒロシを見た。


「なんでいつも遅刻ギリギリなの?」アカネはため息をつき、スポーツバッグのストラップを直した。彼女の視線がヒロシのバインダーに向かう。「まさか…今日は転校生のお世話役?」


ヒロシは照れ笑いを浮かべて頭をかいた。「そうなんだ。校長先生の命令でさ。新しい環境で緊張してるだろうから、学校を案内して、安心させてあげてって。」


アカネは肩をすくめた。「ああ、あの子、間違った場所に来たんじゃない?ここ、五つ星ホテルじゃないんだから。」


二人は学校の入口に向かって歩き、転校生のエラーラが待っているのが見えた。その姿を目にした瞬間、ヒロシもアカネも言葉を失った。エラーラは入口のそばに立っていて、その姿勢は優雅で落ち着き払っており、まるで喧騒の中の高校ではなく宮殿の大広間に立っているようだった。長い髪が流れるように肩にかかり、制服を身にまとっているにも関わらず、妙な気品があった。手はきちんと前で組まれている。


彼女はこちらを見て、少し首を傾げると、柔らかな微笑みを浮かべた。


「…綾波ヒロシさん、ですね?」彼女は完璧な日本語で話し、声は穏やかで心地よかった。


ヒロシは一瞬驚き、目を瞬かせた。彼女の発音には異国の訛りはなく、完璧だった。「あ、ああ…そうです。」ヒロシは動揺を隠しながら返事をした。「こっちはアカネ。学校を案内するよ。」


エラーラは感謝の意を込めて小さくうなずいた。「ありがとうございます。お会いできることを楽しみにしていました。」



---


二人はエラーラを連れて校内を案内しながら、ヒロシはいつもの説明をしていた。教室の配置、カフェテリアの利用時間、そしてアカネが半分を過ごしているスポーツフィールド。しかし歩くにつれ、ヒロシの心には違和感が残った。エラーラはこれまでに会ったどの転校生とも違っていた。彼女はどこか、まるでこの場に完全にはいないような、落ち着きすぎた態度だった。


歩く間、エラーラは静かに周囲を観察しているようで、ロッカーに手を触れ、何か見えないものを探しているかのように見えた。


「…今までにも転校したこと、あるんだよね?」ヒロシは会話をつなぐように質問した。「なんか、かなり慣れてる感じがするし。」


エラーラの目が和らぎ、彼に強い視線を向けた。彼はその視線に少し居心地が悪くなった。「そうですね。似たような場所には来たことがあります。でも、ここは初めてです。」


アカネが腕を組み、眉をひそめた。「それで…あんた、どこから来たの?いつもの交換留学生とは違う感じがするけど。」


エラーラは一瞬視線を逸らし、少し遠くを見るように目を細めた。「遠いところです。あなた方には…少し奇妙に思えるかもしれません。」


アカネは疑いの目をさらに鋭くし、じっと見つめた。「そう…まあ、ここには色んな変わった人がいるから、居心地は悪くないと思うわ。」


廊下の端に差し掛かると、エラーラは急に足を止め、ヒロシに向き直り、不思議な、鋭い目つきで彼を見つめた。学校の喧騒が遠ざかり、彼女の存在が全ての注意を引きつけた。


「綾波ヒロシさん。」彼女は優しいが緊迫感を帯びた声で言った。「ずっとあなたを探していました。」


ヒロシは背筋に冷たいものが走るのを感じた。「…どういうこと?」


彼が状況を理解する前に、エラーラはそっと手を伸ばし、優しくもしっかりと彼の手を握った。その温かさは予想外で、彼を不思議と安心させるようだった。


「お願いです。」エラーラの視

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