27. 旅は道連れ
「……名前は宮野茜、彼女の父親が三ヶ月前に起きた『男性医師首刈り殺人事件』で捕まった容疑者の弁護を担当してる。宮野茜は今日の放課後、帰宅が遅れたところ……おそらく18:30以降に拉致されたと思われる」
………爺さんの表情が途端に渋くなる。
「そいつは厄介だな……そもそもその娘は本当に拉致されたのか? お前が言う事件に関わっているモンが拉致したと考える根拠は?」
(なあ……宮野弁護士が冤罪を覆す証拠を抑えている事は話して良いと思うか?)
『さあな……この世界の職業的倫理観の事は俺には分からん。ただ“宮野茜を無事に救い出す為に必要”ならお前に躊躇う理由なんぞ無いんじゃねえか?』
そうだった……そもそも俺が墨花組に乗り込んだ事自体が法令遵守の精神からはかけ離れた行動だ。今更多少の情報を漏らしたから何だと言うのか……
「まず、彼女の父親は容疑者が冤罪である証拠を握っている。次に彼女が拉致されたと仮定するなら……それは帰宅が遅くなったせいだと思う。本来の通学時間帯なら通学路には必ず誰かの眼があっただろうからな。そして彼女の家族は不測のトラブルが起こって帰宅が遅れる報せを“事務所の電話”で受けた」
おっ? 爺さんの顔に“ピンッときた”表情が浮かんだ。
「なるほどな……盗聴されてたか。ならその盗聴してた奴らは以前から冤罪の証拠が抑えられてる事も知っているわけだ。だがな……それなら何故弁護士本人を狙わない?」
「……当然だが拉致した奴らは“このまま容疑者が真犯人として裁かれる”のを望んでるだろ? もし弁護士が行方不明になったら裁判期間は延びるし事件その物にも注目が集まるかもしれない。しかも新たな弁護士に変わったところで何処から新たな証拠が出るか分からない」
爺さんが嫌そうな顔をする……反社会的勢力を率いていても嫌悪感というのはあるらしい。
「つまりその弁護士をコントロールして裁判を早く終わらせたい……って訳か」
「予測の域は超えないけどな」
「だが、それに従って裁判が結審したとしても……」
更に何かに気付いた爺さんの表情が嫌悪感を通り越し……怒りの表情に変わった。
「そうだ。このまま行けば娘が無事に帰って来る可能性は極めて低い。相手の規模にもよるだろうが……最低でも娘は他言無用を強いられる様な目に遭わされるだろう。そして下手をすれば結審した瞬間彼女らは家族ごと消される可能性すらある」
俺は爺さんが口に出しづらいだろう事まできっちりと口にした。俺が危機感を持ってる事をしっかりと伝えないと……爺さん達が彼女の捜索に対して危機感を抱かない可能性もある。
「……話は分かった。まあ聞いた限りじゃ単に拉致されたわけじゃ無く、結構な期間を事務所の盗聴やら家族の監視までやってるわけだ。ならそれなりに情報は漏れてる可能性はある。だが……確実に俺らが見つけられかは分からんぜ?」
…………まあ、そうだろうな。
― ヒュッ ―
俺はリポ◯タンの瓶を爺さんに向かって放り投げた。爺さん……俺が頭を撃った時より驚いた表情してやがる。
「分かってる。それは労働に対する対価だ。無茶な仕事だからな……先払いしておくよ」
「……おめえ、コレを俺に渡して俺が何もしなかったらどうするんだ?」
おいおい………それを俺に聞くのか?
「……そいつは丸一日しか効果は無いんだ。それはつまり 明日以降にまたヒットマンにヤられても……魔法の薬は無いって事だぜ?」
――――――――――
「てめぇ……」
こいつ澄ました顔して(いや見えてねぇんだが……)恐ろしい事を言いやがる。
「勘違いすんなよ? アンタは自分の仕事をしてくれさえすれば良いんだ。俺の連絡先は瓶に書いてあるメールアドレスへ送ってくれりゃいい」
そう言いい残して……あちこちに穴が空いてるはずの男は組長室を去ろうとした。のだが……
「ちょっと待て!」
殆ど無意識に男を呼び止めた。
「何だよ? 俺は俺で急いでん……」
俺はポケットに手を突っ込んで通勤用のマイバッハのスマ―トキーを放り投げた。
「下のガレージに俺の車がある。乗ってけ。使い終わったら何処なりと乗り捨てて構わん」
男はじっと手の中のキーを見つめてから……俺の予想の斜め上を行く返答をしやがった。
「気持ちは受け取っとく。たけどな……ああ……俺は免許を持って無いんだ」
………?!?
「クッ、クハハハハハッ!!! そうか……おめぇすげぇヤツだな? そうか……免許も持ってねぇのにこんなトコにな……」
すげぇわ……久しぶりにすげぇ男を見つけちまった!
「分かった……付いて来い」
俺は……何故かここに来て一番あたふたしてるホッケー男の横を通り抜けて廊下に出た。
扉の手前に蝶野の野郎がひっくり返ってるが……こいつの言った通り眠ってるだけだな。
「おい! 起きろ!!」
俺はひっくり返ってる蝶野の顔を二〜三発張り飛ばした。
「……んん……はっ、オヤジ?!!」
ありがてぇ事に、見たところどこにも怪我はない。って……俺の後ろに立つホッケー男を見つけてパニクってやがる。
「あたふたすんじゃねぇよ。 おら……お前、これ持って息子んとこへ行け。何をすりゃいいかは伝えておく。そうだな……譲二は、おめぇの代わりにこっちへ戻すとして……おい? これは飲ませなきゃ効果は無いのか?」
「……………無理なら注射でも構わん」
「だそうだ。おめぇと幸太郎はその場に残って事の次第を見届けて俺に連絡しろ。分かったな?」
「へぇ……分かりやした」
ま、頭は回って無さそうだが……なんとかなんだろう。
「よし……分かったならさっさと動け。おれはちっと出かけてくるからよ」
なんでぇ……呆けた顔しやがって?
「おい!! どういう意味だよ爺さん?!」
ほう………俺の背後に立つ鉄面皮野郎が慌ててやがる。いい気味だぜ(笑)
「バカかおめぇ……免許がねぇなら運転手が要るだろうが?」
当作をお読みいただきありがとう御座います!
さて、作中時間の流れがとても遅くて皆さんイライラしてるかも知れませんが……申し訳ありません!m(_ _)m
もう少しだけ続きます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
何卒お赦し下さいますように……お願いしいたしますm( _ _ ;)m
本当は読者の皆様へお願いをするのは恐縮なのですが……
もし少しでも興味を持ってもらえましたなら……
イイネ、ブックマーク、☆評価、感想など……どんな反応でも嬉しいです!
是非応援のほど……よろしくお願いいたしますm(_ _)m




