23. 面倒事の夜
(?)
ホームセンターを出てすぐに掛かってきた電話……スマホのディスプレイには宮野さんの実家である『宮野総合法律事務所』と表示されていた。
「もしもし? 久宝です」
「宮野法律事務所の宮野です。夜分に突然連絡して申し訳ない」
さっき通話に出る前に、ディスプレイに表示されていた時間は21:00を少し過ぎたくらいだった。中学生が一人で外を歩くにはやや遅い時間帯だが、夜分と言うには早すぎる。
「いえ、僕の方こそ先程はお騒がせして申し訳ありませんでした」
「暫く振りだね……元気そうで安心したよ。それで……つかぬ事を尋ねるけど──今、娘と一緒にいたりするのかな?」
は??
「いえ、宮……茜さんとは学校の正門で別れましたが?」
まさか……まだ帰宅していないのか?
「そうか……いや申し訳ない。ちなみに……それは二時間前くらいの事かな? その頃、妻の携帯にこれから帰ると連絡があったらしいんだが……」
『ええ……間違いありません』
宮野総合法律事務所は学校からは電車で二駅、そこから徒歩五分の位置にある。どれほど多く見積もっても帰宅に一時間はかからないはずだ。
「……失礼ですが連絡は?」
「幾度か電話したのだが……どうやら携帯電話の電源が切れているみたいなんだ」
宮野弁護士の声が俄に緊張を帯びてきた。何処かに寄り道している可能性はゼロでは無いが……いや……
(たとえ夢だと思っていたとしても、今夜の出来事の後にフラフラ寄り道するとは思えない……)
まさか?……という思いと共に不吉な想像が生まれる。
あんな事があったばかりなのに“そんな偶然があるわけ無い!”と自分に言い聞かせるが……心の中に不安感が頭をもたげるのは止めようが無かった。
(行方不明届け? いや今の時点で警察を頼るのは流石に早すぎるか……)
実際、帰宅が少し遅れたくらいで警察が動いてくれるとは思えない。宮野弁護士だってそれくらいの事は考えているはずだ。
(いや……本当にそうか?)
「宮野弁護士……もしかして茜さんが遅くなってる理由に何か心当たりがあるんじゃ……?」
「…………」
沈黙……当たりだな。
(だけど……よりによって今日みたいな日に拉致されるなんて事があるのか? まるで宮野さんの帰宅が遅くなるのを知ってたみたい……)
………!!
(なんてこった。もしかして……俺の電話のせいか?)
「宮野弁護士。一度通話を切って僕の方からも茜さんに連絡してみます」
「……お願いするよ」
回線が切れたと同時に宮野さんへコール。
(頼む……思い過ごしであってくれ)
だが願い虚しくスマホからはコール音が響くばかりだった。
(……クソ。やっぱり……)
俺はもう一つの想像が当たっていない事を祈りながら、事務所ではなく宮野弁護士の携帯電話に電話を掛けた。
『宮野です。どうだろうか?』
俺は……覚悟を決めて小声で自分の想像を告げた。
「センセイ……俺が何を言っても驚かないで聞いて下さい」
『?? ああ、分かった』
「事務所の電話か……もしくは事務所自体が……盗聴されている可能性があります」
『何だって!!』
だからセンセイ……驚かないでって言っただろ!
――――――――――
『センセイ……静かに……もし本当に盗聴されてたらヤバい』
「あ……ああ、そうだね」
私は動揺をかろうじて抑えるのに精一杯だった。誘拐? それは最悪の可能性としては考えていたが……
『センセイ。今から通話を切ってショートメッセージでのやり取りに切り替えましょう』
私の動揺を慮ってのことだろう。それとも私がへんな事を口走る前に……という事か?
「そうだね……よろしくお願いするよ」
(確かに初対面の時から利発な子ではあったが……以前の弱気な感じからずいぶんと変わったな)
― ブッ ―
通話を切って数秒……彼からのメッセージが届いた。
『事務所は危険です。自宅の方に移動して下さい』
『可能なら外からの窓が無い部屋かトイレへ』
(これは……盗聴と監視を心配してるのか?)
私は急ぎ自宅へと移動した。キッチンで自分のスマホを見つめてじっとしていた妻の横を通り抜ける。
「久宝君とは二時間前に別れたらしい」
「そっか……ほんま何しとんねんあの子は……」
まだ本格的に心配するほどの時間が経ったわけでは無いが……あの子は公認会計士である妻に似たのか几帳面な性格だ。
妻の心配は無理もない。
「私は書斎にいるよ。茜から連絡があったら知らせてくれ」
「うん……わかったわ」
―――――――――――
『移動したよ』
書斎に入った私はすぐに久宝君へとメッセージを送った。
『先生、単刀直入にお聞きしますが……いま引き受けておられる案件で近日中に動くと考えられる物はありますか?』
それは……確かにあるが……
『ああ……守秘義務があるので詳細は明かせないが、弁護を引き受けている殺人事件がある。だが彼女……拘留中の被告人は明らかに冤罪なんだ。それを証言してくれる人物と証拠もこちらで保護している。明後日の公判ではその人物に証言台に立って貰う予定だ』
『それはかなり怪しいですね』
『だが……私が証人を保護している事実は家族にすら知らせていないんだが……?』
『もし事務所が盗聴されていたらその事実を知られた可能性はあります。先生、その被告人が冤罪だと証明されたらまずい利害関係者は居ますか?』
いや……
『そういう人物は今の所思い浮かばない。被告人が無罪だったとしても、他に有力な被疑者は居ないんだ。もちろん今のところは……だけどね』
(あえて言うなら検察くらいか……)
もちろん冤罪となれば検察は起訴した手前面目丸つぶれだが……いくら何でも検察がそんな手段を採るとは思えない。
(本当ならこんな事を無関係の久宝君に話してはいけないのだが……)
『分かりました。答えにくい質問をして申し訳ありません。先生はこの後どうされるおつもりでしょうか?』
実際どうするべきか……
『とりあえずは日が変わるまでは茜を探しながら待ってみる。もし、日が変わるまでに見つからなければ捜索願いを出す事になるだろう』
『……分かりました。もし先生のお仕事関係の事が絡んでいるなら僕にはどうしようもありませんが……僕もいくらか心当りを探してみます』
いったい……本当に彼は僕の知ってる久宝君なのか?
『ありがとう。くれぐれも無理はしないで下さい』
――――――――――
― Piッ ―
センセイとのメッセージのやり取りを終えた後……俺はリンクを使って自宅の根菜類に状況を説明した。
(悪いな……今夜はもう少し遅くなりそうだ)
『まあ、しゃあねえな。で……当ては有るのかよ?』
『そうだな……とりあえず真壁刑事に電話して相談してみよう』
いつも読んで頂き誠にありがとうございます。
それと……
更新遅くなってしまい申し訳ありません!m(_ _)m
今回はなんと……宮野パパとの会話だけで一話終わってしまいました(-_-;)展開が遅くて申し訳ありませんが……少しだけ主人公達とお付き合い下さいm(_ _)m
そして……そんな不器用な作者からお願いです!
本当は読者の皆様へお願いをするのは恐縮なのですが……
もし少しでも興味を持ってもらえましたなら……
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是非応援のほど……よろしくお願いいたしますm(_ _)m




