22. 電話
(結局こんな時間か。まだホームセンターは開いてるんだろうな?)
俺は、全ての後始末を終えてから学校を飛び出し手近なホームセンターへと走っていた。
結局……斉藤は右腕が取れる前に泣きながら全てをゲロった。
奴らの浅はかさにはゲンナリだ。だいたい俺が両親から金を残して貰ったなんて誤解もいいとこだしな。
『しかし……どこの世界でも人種の類ってのは似たようなもんだな』
(異世界にも自己中な奴らは居るって?)
『そうだな。ま、この国も桃源郷とは言えねぇが……たいていの世界よりはマシな方だぜ?』
(異世界にすら夢も希望も無いじゃねえか……そんなん聞きたくもねぇよ)
『そう言うなよ。あいつらが見つかる時の事を想像すりゃぁ多少は溜飲も下がるだろう?』
………ぷっ
(はははははははっ!! 確かにな!)
ちなみに……斉藤、後藤、佐藤の三人はきっちり煮汁で回復させた後、まとめて科学準備室に放り込んでおいた。改めて睡眠薬も振りまいておいたので、最低でも明日までは昏倒したままだ。
しかも……
『クククッ……アイツラ全員を全裸に剥いたのは傑作だったな? しかも空の酒瓶まで調達して転がしとくなんてよ……お前も意地が悪いや』
(いや……アレは苦肉の策だからな? 酒も飲まずに昏倒してたら流石におかしいだろ?)
だからわざわざ近所の飲み屋から、ビールやら焼酎の空きビンをくすねてきたんだ。あっ、ちゃんと空き瓶の代金は箱に放り込んでおいたからな?
『中学生が学校で酒盛りやらかした上に不純同性交遊、しかも三人で……とくれば学校側もおいそれと揉み消したりは出来ないだろう?』
(さあな……今は多様性の時代だからな。案外飲酒以外のやらかしは無視されるかもよ?)
とはいえ……あそこを見つける人間によってはどう噂が拡がるかは分からない。
(ま、あれだよ“神のみぞ知る”ってやつだ)
『ククッ そんな奴が居ればの話だがな』
俺が頭の中で根菜類の奴と話しているうちに……今日の本当のお目当てだった【スーパーバンザイホーム】に到着した。
このホームセンターセンターは店舗の規模も然ることながら品揃え……特に園芸関係の内容がとても充実している。
営業時間も21:00まで開いていて仕事帰りの人にも便利な店だ。
利用した事は無いが商品の配達や軽トラの貸出サービスまで行っており、近隣住民の生活に多大な便宜を図っている。
俺はお目当ての肥料を物色するため、店内の案内表示に従って園芸コーナーへと急いだ。閉店まであと少し時間はあるが……出来れば商品はしっかりと吟味したい。
一口に肥料と言ってもその内容は千差万別だ。配合される成分も、窒素・りん酸・カリウム・炭酸カルシウム・鉄・マンガン・ホウ素などなど……多岐に及ぶ。
しかも植物の種類によっては生育に必要な物は微妙に変わるので、俺の様な素人からすれば何を買えばいいのかさっぱり分からない。
(参ったな……いったい何を買えばいいやらさっぱりだ。なあ根菜類、お前はここにある肥料ならどれが欲しいんだよ?)
『だから……俺は見た目がそれっぽいだけで根菜類でもなんでも無いんだよ! って、今はそれどころじゃねぇ。うーん──品揃えが豊富過ぎて決めらんねぇ……』
(おいおい……お前なら自分の身体(?)に必要な成分くらい分かんじゃねえの?)
何と言ってもこの植物……この世界の他の植物と違い“意思表示”をしてくるのだ。実際、プロの農家や園芸家の皆様から見たら俺の悩みなどチャンチャラおかしいだろう。
なにせ、かの方々は日々無言の植物達と対話してお世話を行っているのだ。それでいて当たり前のように美味しい野菜を収穫し美しい花を咲かせる。
「凄まじい経験と努力とセンス……マジで頭が下がるよ」
『ん? 何か言ったか?』
(……いや、何でもねぇよ。で、お前が必要な栄養って何なんだ? やっぱ窒素やリン酸なんかのメジャーどころのやつか?)
『いや、そもそも俺はこの世界の植物とは存在としての根本から違うから、別に肥料なんか無くても水と太陽さえあれば良いんだが……』
(はあ?! なんだよそれ。じゃあわざわざ少ない生活費から無理して買う必要……)
『待て! 早まるなよ。俺にとっての肥料はお前たち人間にとっての嗜好品と同じだよ。お前らだって甘味や酒が無くても生きては行けるだろうが……そんな味気無い人生は願い下げだろう?』
……確かにな。そりゃぁ切羽詰まればそうも言ってられないが、現状一つ二つ肥料を買うのはそこまで難しくは無いし……
(分かったよ。だが、今回買うのは一種類だけだぞ?)
『オーライ!! 文句ねぇよ。話が分かる相棒で助かったぜ!』
……イマイチ本当に感謝してるのか疑問を感じるが……まあ、いい。コイツには何かと世話になってるし、葉っぱの煮汁は俺が血を入れたら一定時間で効力を失ってしまう。
それを考えたらコイツには積極的に葉を増やして………
(あっ……そう言えば……お前、肥料なんか無くても葉っぱの再生は出来るんじゃねえのか?)
『……ばっ……バカな事を言うなよ。そりゃぁ生育に水だけでも十分だが、やっぱり肥料があるとないとじゃ再生に必要な時間が……』
なんというか……リンクなのに目を背けてるのが分かるのは何でなんだ?
(はあ……まあいいさ。お前には世話になってるからな。そのうち“ここに有るやつ”くらいは好きに買える様になってやるさ)
『おお! 頼もしいな相棒……で、物は相談なんだが……さっき説明してくれてた“太刀川農園謹製!美味しい芋と根菜類を育てる肥料スーパーDX”ってのが良いんだが……』
おい……
(お前……値段で選んだんじゃ無いだろうな?)
『……ソンナハズナイダロ?』
なんでセリフが棒読みになる? お前、根菜類のクセに芸風が細かいんだよ!
(ハァ……まあいいさ。お前には本当に世話になってるからな)
俺は根菜類ご指定の“太刀川農園謹製!美味しい芋と根菜類を育てる肥料スーパーDX”を持ってレジに行き会計を済ませた。
肥料はコンクタイプの容器に入っていて内容量は5kgと結構な重さだが……図らずも肉体改造を成し遂げた今の俺なら、このくらいの重さは負荷のうちにも入らない。
(さあ、今度こそ家に帰っ……)
― Boon Boon ―
俺が予定をやっと消化して家路につこうとした時……今までネット検索以外に殆ど仕事の無かったスマホが、懐で激しく振動を始めた。
(?? 誰だ? もしかして宮野さん??)
さっきの別れ際……IDを交換した彼女が何か挨拶でも送って来たのかも?
俺は制服の胸ポケットにしまってあったスマホをいそいそと取り出して画面を確認した。
「………何でだ?」
ディスプレイに表示されていたのは「宮野総合法律事務所」の文字だった。
いつも読んで頂き誠にありがとうございます。
ほのぼの園芸スローライフの本作ですが(笑)実際に植物のお世話というのは本当に手間暇がかかります。
本作を描き始める前に家庭菜園で水耕栽培にトライしてみたのですが……
結果はまあ……(TДT )
そんな不器用な作者からお願いです!
本当は読者の皆様へお願いをするのは恐縮なのですが……
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