18. 死なない程度に徹底的に
今回すこしだけグロ表現あります……
(何でだ?! 何で俺の拳や蹴りが尽く躱される? ほんの先週までサンドバッグ替わりだったウスノロデブだぞこいつは!!)
― クスッ ―
久宝の奴が……ニヤついてる??
「何を笑ってやがる!!」
瞬間……奴は無造作に俺のスマホをこっちに投げつけやがった。
― ゴッシャッ ―
俺のスマホが……キャッチしようとした俺の手をすり抜けて壁に激突した。
「てめぇっ!!! ただで済むと思う……」
ほんの少し……
スマホに気を取られた瞬間、久宝の奴を見失った?!
そして次の一瞬。
俺は膝裏を蹴られてバランスを崩し、同時に腕をひねられ……床に這いつくばっていた。
――――――――――
後藤はまんまと俺に組み伏せられたのがよほど屈辱なのか……首をねじって凄い目で俺を睨んでいる。
だがいくら藻掻こうとも──肩甲骨の間に食い込んだ俺の膝と、逆手にねじり上げた腕が……後藤に身体を動かす自由を一切許さなかった。
― バキッ ―
「アギィッ?!!」
で、今の音は小指を折り畳んでやった音だ。もちろん……いつもとは違う方向にだ。
驚いた事に……後藤は最初のごく短い悲鳴以外声を漏らさなかった。
(指の骨折なんてとんでもない痛みのはずなのに……俺に弱みを見せるのはプライドが許さないのか?)
後藤は最初に呻いてからは、フゥフゥと荒い息遣いをするだけで……何も口に出さなかった。
「で、もう勝ち目が無いのは分かんだろ? さっさと斉藤達の居場所吐けよ?」
「誰……が……言うか……よ!」
― ピンッ ―
「ガァッ!」
俺は折れた小指を軽く弾いてやった。
「そういう“俺根性あります”みたいなのいいからさ……って言うか本当は斉藤達の居場所くらい見当はついてるけどな」
だいたい学校の中でコイツらが自由に出来る所なんて知れているのだ。まあ、隣の科学実験室……は俺の聴力や嗅覚なら、どれほど大人しくしていても気配くらいは感じる。
なら、廊下の奥の階段から繋がっているのは……
「屋上か……旧校舎?」
ハハッ、ポーカーフェイスは苦手か後藤?
「そうか斉藤達の居場所は旧校舎だな」
――――――――――
だから“心底驚いた”みたいな表情をするのはやめろよ。せめて、こんな役割を引き受けるなら自分の“ポーカーフェイスが苦手”な性格くらいは自覚しておけよな。
「クソがっ!! 次は絶対に油断しねぇ!! お前をめちゃくちゃにボコって……校舎の上からマッ裸で吊るしてやる!! 忘れるなよ、俺は絶対にやるからな!!!!」
おうおう? 目を血走らせて口角に泡を噴いた後藤は……ちょっと見た事がないくらい猛り狂っている。
ただまあ……そういうのは今の俺には無意味だから。
「残念……お前に次は無いんだ。残念だったな?」
「あぁん? どういう意味 ― グジョっ ― ガアアアァ?!?!」
俺はねじり上げた腕に体重を掛けて……腕の関節と靭帯をねじり潰してやった。同時にもう一方の腕も伸び切った肘に体重を掛けて踏み潰そうとしたが……
こちらは残念ながら脱臼で済んだようだ。
正直、自分が完膚なきまでに壊した両腕を見るのはかなり気分が悪い。既に、後藤は両腕に走る激痛に小刻みに震えてほとんど声を出す事すら出来なくなっていた。
俺は準備室の床でヒクヒクと痙攣して失神しかけている後藤から一旦離れて……ヤツの通学カバンからペンケースを引っ張り出した。
「へぇ……上等そうな文具ばっかだな?」
自分の筆箱とは全然違う中身にちょっとだけ悄然としつつ……その中でもとりわけ高価そうな金属製のポールペンを取り出した。
俺は後藤の肩を掴んで強引にひっくり返した。痛みで失神しかけていた後藤は、新たな痛みのせいで無理やり覚醒させられ、“やめぐぁぁ”だとか“ごあうぅ”だとか呻いてるが……
(“死なない程度に徹底的に”でいいんだよな)
『ああ、やるなら二度と関わる気が起きないトコロまでやるんだ』
(よし……)
俺は後藤の髪を掴んで無理やり部屋の隅まで引きずって壁にもたれさせた。
「最後にもう一度だけ聞くぞ? 宮野さんと斉藤達は旧校舎の何処に居る?」
「…………くそっ…………たれ」
お前大したもんだ。だが……自分の得にはならんけどな
「分かった。もういい、来世は真っ当な人間に生まれ変われよ?」
俺はヤツの虚ろになってきた瞳に……立派な金属製ポールペンをゆっくりと近付けていった。
「なっ?ーーーーやめ?!?ッ!!ッ!!!!!!!!!!!」
――――――――――
(うげ―………目ん玉の感触って思ったよりマジでキモいな)
俺は……完全に失神した後藤の口に、俺の血を混ぜた根菜類の葉の煮汁を流し込んで放置し、校舎の外階段を駆け下りて旧校舎へと走った。
『ま、心配するな。あいつの目が覚める頃には怪我は完治してるだろうさ。精神的ダメージまでは責任持てんが……それこそ自業自得って奴だ』
……そうだな。これまでのあいつの仕打ちを思い出せば俺のお仕置きなんぞまだヌルイくらいだ。
『それより……旧校舎ってのはまだなのか?』
(ああ、もうすぐ……あと2〜3分だな)
科学準備室のある校舎は俺が学校に入学する数年前に新築されたんだが……
新校舎の裏にはこの学校の開校当初から存在するという鬱蒼とした雑木林がある。
そして、その雑木林を抜けた先に存在するのが旧校舎だ。そこにはまだこの学校が創立された当初から存在する古い校舎がいくつか残っている。
(今の耐震基準を満たして無いらしくてもう使用出来ないらしいが……)
暫くして……見えてきた古いコンクリートの校舎には、まだ所々に緑の避難誘導灯が光っている。どうやら電気は生きているらしい。
だが……
「だからって、勝手に潜り込んだ場所で照明を点けるとか……どんだけバカなんだよあいつら」
俺の視線の先。
旧校舎の教室の一つ、カーテンの隙間から煌々と灯る蛍光灯の光が漏れ出ていた。
「まあ、後藤の奴が俺にやられるとか思い付きもしないんだろうな……」
(となれば、この時間の旧校舎に現れる様なモノ好きは居ない。巡回はあるかもしれないがそれももっと遅い時間帯だろうな……)
それは半ば独り言だったんだが……それを聞いた根菜類の返答は簡潔だった。
『なるほど……なら暫く邪魔は入らないって事だな?』
いつも読んで頂き誠にありがとうございす。m(_ _)m
今回、少しだけグロい表現がありますが……タイトルからして怪人の物語なので(笑)何卒ご容赦のほどを……
そして……更新が遅くなってしまった上に読者の皆様へお願いをするのは恐縮なのですが……
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