15. 面倒な三人
根菜類の言葉を信じるなら……俺の周りには今後も善悪や好悪とは関係なく人間関係が増えるらしい。
生き物としての俺は不死身だとしても……たとえば“悪意を持った人間の集団”なら、未成年の俺を“社会的に痛めつける”なんて事は造作も無いだろう。
明日から学校生活を再開しなければならないというのに……俺は改めて学校での自分の扱いを思い出してげっそりした。
まあ……先週までの俺と今の俺は文字通り別人みたいなもんだ。斉藤とはきっちり話をつけよう。
「そう言えば俺より先におまえの同類ってのを食った奴らってどうなったんだ? 不滅ってくらいだからまだ生きてんのか?」
『さあ? 歴史上の偉人や宗教の開祖として名を残している奴もいるが……そいつらがお前ほど不滅性に特化してるかどうかは分からんからな。どっかで生き残ってる可能性もあるし、死と復活を繰り返して最後には消滅……ってのも普通にあるだろうな』
あー、俺も先々は悩まにゃならんのだろうけど……いつまでも歳を取らないってのも考え物だ。
『そんなのはその時になってから考えりゃいいし……そもそも歳を取ることが出来ないなんて言ってないだろ?』
「えっ? でも不老不死って?」
『そこら辺の融通は効くさ……それよりお前、あの男の申し出はどうすんだよ?』
「色々考えたけどさ……あのオッサンが信用出来るかはさておいて、何らかの後ろ盾はあった方が生きていくには有利だよな」
『それは間違い無いだろうな。ま、あの男を後ろ盾に選ぶかはもう少し様子を見てからでもいいだろさ。それより……』
ん? なんか忘れてたか?
『そろそろ水と液体肥料を足してくれ。お前に毟られた毛を再生したいんでな』
「ちょっと待て? あれって毛髪なのか??」
――――――――――
久宝がインフルエンザを理由に学校を休み始めてから一週間と少し。
俺達は登校中に見つけた奴(?)を強引に校舎裏のスペースに連れ込んだ。
「お前……本当に久宝か?」
佐藤の奴があまりにも変わり果てた姿の久宝を見て本人かどうかを確かめている。
その気持ちも分かる。なんせほんの一週間前まで、奴の体重は余裕で三桁kgはあったはずだが……いまの久宝はどう見ても脂肪がだぶついていた一週間前とは似ても似つかない姿になっていたからだ。
「この一週間食欲が無くてな。随分と痩せちまった」
「なっ、なに舐めた口利いてんだコラ?!」
後藤の奴が久宝の胸ぐらを掴んで凄むが……久宝は迷惑そうな顔をするだけでどこ吹く風だ。一週間前のあいつなら俺達に捕まっただけでオドオドと狼狽えていたのに?
「なあ斉藤……それに佐藤と後藤も──もうそろそろ止めにしないか?」
「……どういう意味だ?」
久宝は胸ぐらに伸びた後藤の手を掴んだ。
「あがっ?!」
それほど力を込めた風には見えなかったのに……後藤が明らかに苦痛の表示を見せて制服を掴んだ手を開いた。
久宝はそれを確認してから後藤の手を離し、乱れた襟元を整えている。
「だから……俺への嫌がらせはもう十分だろ? 確かにお前達の親がクビになったのは、俺の両親が迫下ホールディングス傘下で行われていた不正投棄を告発したせいだ。だけどな……」
あり得ない……この一週間の間にいったい何があったってんだ?
「てめぇ……また痛い目にあいたいのか?」
「よせよ。この一週間で俺も少しだけ賢くなったんでな」
久宝の奴が学生服の胸ポケットをトントンと叩いて……スマホ?
「ここに連れ込まれる前から……このスマホで動画を撮影してる。おっと!」
佐藤の奴が反射的に奴の胸元に手を伸ばすが、久宝の奴は軽いステップで簡単にその手を躱してしまった。
「忠告しておくがスマホを取り上げても無駄だぜ? 動画は自動でクラウドに記録される様に設定済だ。俺がアクセスしてデータを消さなきゃここでのやり取りは一生残る様になってる」
こいつ……本当にあのデブでウスノロの久宝か??
「てめぇ……」
「確かにお前達の親は会社の都合で尻尾切りにあったんだろうが……俺の親は生命まで無くしてんだぜ?」
「クソが! だからってなんでお前の親がやらかした告発に俺達の親が巻き込まれなきゃいけねぇんだよ?」
「確かにお前等の親は上の指示に従っただけの下っ端だろうよ。だが、不正を知りながら手を染めていた以上、お前たちの親も自業自得ってやつだろ?」
「てめぇ?!」
こいつ……まじで許せねえ! 徹底的に痛めつけてクラウドのパスワードを吐かせてや……
『先生! こっちです!! 』
あっ??!
「やばいぞ斉藤!! 誰かがチクったんだ」
「流石に現行犯じゃ言い訳出来ねぇぞ斉藤!」
……………だぁっ!!! くそったれめ!!
「久宝!! 話はまだ終わってねぇからな! 放課後科学準備室まで来い!!」
――――――――――
捨て台詞を残して去って行く三人を横目に……俺は先生を呼ぶ声がした方向に目を向けた。
………案の定、と言うのもなんだが先生なんて現れやしなかった。代わりに現れたのは……セミロングの黒髪を後ろで結ったメガネの女生徒だった。
「やっぱり……宮野さんか。良いのかい? さっきみたいな真似をしたら斉藤達に目をつけられるかもしれないよ」
この学校は迫下グループ傘下の企業に勤める親を持った生徒が大勢通っているし、グループは寄付金や果ては教職員の再就職先の斡旋までを請け負う事で大きな影響力を持っている。
そんな学校の教師が……一部の生徒のガス抜きにもってこいな俺を助けるはずがない。
「知らんわ。朝からけったくそ悪いモン見せられたから邪魔したっただけや。だいたいウチんとこは迫下グループとはなんの関係もあれへんわ」
そう言ってプンスカ怒っているのは、隣のクラスの宮野茜だ。彼女の父親は弁護士をしており、実は俺がいじめの事を相談した相手だったりする。無料相談の枠を超えて色々と相談に乗ってくれたとても良い弁護士だった。
そして俺が相談をして以来、その娘である彼女は、けして大っぴらにでは無いが俺の事を気に掛けてくれている……様に感じるのは気の所為か?
(弁護士には守秘義務があるから、俺が相談した事は知らないはずだけど……まあ、俺がこの学校でどんな目に遭ってるかは一目瞭然だからな)
「それより……あんたほんの一週間やそこらでえらい変わりようやな??」
「ああ……この一週間どうも食欲が湧かなくてさ。随分と痩せたよ」
「……ふーん。ま、前が肥え過ぎやってんからそれくらいが丁度ええんちゃう?」
「なかなかキツいね?」
彼女、見た目はかなり楚々とした少女なのだが……性格はゴリッゴリの関西弁系武闘派なのだ。たぶん無料相談の時にお茶を出してくれた彼女の母親(美人だがド金髪でヒョウ柄セーターを着ていた)の性格を受け継いだのだろう。
「はん! アンタが情けないからやろっ、て言いたいとこやけど……ほんまにこの一週間でどないしたん?」
「ちょっとね……貰った病気がヤバいヤツだったんだよ」
いつも読んで頂き誠にありがとうございます。
やっと! やっと学園パートにたどり着きました! なにげに学園的な舞台は始めて書きます。さあ……どうしたものやらw
そして、読者の皆様には毎度の面倒事とは思いますが……
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