表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/52

タミーナフ治世緑 第二部第七章

 若き神が、聖王にして賢君、タミーナフを頼り、十月が経った。

 魔に染まり、堕ちし、かつての神々。その数、合わせて一〇二四柱。

 神々への反逆の首魁にして魔神王、クームベサム。その力、創世にさえ比肩する。

 彼らは人の形をした魔の群衆を従え、地上と神の国へ侵攻を続けていた。

 聖王タミーナフであっても、聖都のつわものであっても、彼らに敵うはずもなし。

 しかしタミーナフは、その瞳で確かに、彼の勝利を見たのだ。

 魔神たちの千人長が破れ、領主もまた砕かれた。

 一〇二二柱の魔神が、聖王の前に跪き、その力を貸し与えた。

 残すは二柱。

 大嵐と旱魃の王にして、魔神王クームベサム。

 洪水と戦争の王にして、将軍たるクン・プユス。

 いずれも創世に歯向かい、にもかかわらず、打ち倒すこと叶わなかった強大な魔神。

「おお、我らが新たな主よ、それは死出の旅、定められし負け戦。魔神王と、その将軍は神すら叶わぬ、無比無双の存在。決して挑むべきではない。われらと共に、聖都へ引き返し、その繁栄に務めよ」

 涙をこぼし、膝を負って、タミーナフの新たな臣下は王に訴えた。

「哀れな子らよ、汝らは、かの神々、かつての汝らの主人を究極と信じて疑わぬ。だが汝らの新たな主は、一〇二二の零落せし神々を従え、古の知恵を得た英雄の王なり。我にとって、彼奴らが誇る神力など、些事に過ぎず。彼奴らが揃える軍勢など、雑兵に過ぎず」

 タミーナフの言葉に、しかし未だ忠臣は恐怖を覚え、思わず体を震わせる。

「恐れるな。我は聖王、魔術の祖、魔を理解し、操りし者。若き神さえ我に頼るというのに、何を恐れることがあろうか」

 王の勇ましき言葉に、此度においては忠臣は鼓舞され、喜びに心を震わせる。

 王は一〇二二の供を連れ、魔神王統べる領土に足を踏み入れる。

 その宮殿は、零落した神々の威容を伝え、その玉座は、魔に染まった支配者の脅威を現す。

 かつてそこには、神を讃える神殿があり、周囲には荘厳な城壁が立ち並んでいた。しかし最早その面影は無い。神の代わりに、魔王が鎮座する城塞となっていた。

「我はタミーナフ、聖都の王、若き神の友なり。魔に堕ちた神々を誅すべく、この地を訪れた」とタミーナフは、大いなる門の前で声を荒げる。

「愚かな。そのようなことができる人間がどこにいようか」と魔神たちの主にして将、大水をもたらすものと、砂嵐を導くものが答える。

「一〇二四柱の魔神の王よ、汝らは我が糧となる。汝らは我に平伏する。汝の力、我が物としてみせよう。その力を以て、タミーナフ、賢君にして、至上の王たる我が、魔を統べるものとなろう」

 タミーナフは杖を掲げる。しかし魔神王と将軍は王の威光を受けてなお、ひるまず。

「おお、タミーナフ、汝の力、見事なり。だがそれでは足りぬ。我らが力を託すに能わず。我らが魂を継ぐに能わず」

 タミーナフは、魔神の言葉に怒りを示し、杖を力強く振るう。

「我に従わぬなら、汝らは我が敵に過ぎぬ。汝らの仲間を束ね、魔を統べた我が奥義を以て、魔神王と将軍の、その魂を砕こう」

 タミーナフの杖より放たれた、世界を焼き尽くす火炎は、またたくまに二柱の魔神の頂点の身を焦がし、膝を折らせた。

「おお、タミーナフ。汝の力に、零落せし我らの神力は及ばず。我、クン・プユス、氾濫を司るものの終身に及ぶ隷属をもって、先の非礼への謝罪とさせてほしい。そして願わくば、我らが主の命も、見逃してほしい」

 寛大なるタミーナフは、魔神の将軍の嘆願を受け入れた。クン・プユスはその身を力に転じ、タミーナフの指に宿らせた。クームベサムは、人と神の世界への侵攻を、今後行わぬとタミーナフと約定を交わし、我が物としていた土地を神へと返した。

 一〇二三柱の魔神の力を携え、タミーナフはとうとう、彼が治める聖都へと舞い戻った。

 これにて若き神より任ぜられた魔神調伏は相成った。人よ讃えよ。これは聖王タミーナフの誇る、万の事績の一つである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ