『魔術基礎論』第四章「術式組成」
魔術を実行する場合、その命令となる説を増やせば増やすほど、高度な術になる。しかし、人力で行う場合は、多くても八、九節程度が限界だとされる。
また、あまりに複雑すぎる魔術式は、式を組む時点で多大な魔力を使用することになるため、実際の魔力消費量に対し、出力が低い術になることがしばしばである。
一方、この多節術式の難点を克服したのが、術式組成であり、これにより多くの機械を複雑化させることに成功した。この術式組成は、初めに精巧で複雑な術式を組み、それを繰り返し利用することにより、魔力消費を最低限に抑えつつ、同時に現実的な出力を達成することが可能になった。問題点としては、基本的には一つのことしかできず、柔軟性はないこと、そして、何度も反復使用することで、術式の劣化が発生する点が挙げられる。ただし、この術式組成により、文明崩壊から立ち直る速度は急速に早まった。具体的な発明時期は不明だが、旧星の時代から存在したと考えられている。
簡単な機械であれば、素人でもそれほど難しいことではないが、やはり高度な機械になると、術式の組成は複雑極まりないものになり、魔工たちも、一つの術式を実現させるために一生を費やすことも珍しくない。
ゆえに最高傑作ともいえる高度な術式は、門外不出の知識となり、魔工宗匠の術式組成ともなれば、その一割を得るだけも、天文学的な報酬になる。
神話・伝説の域をでないが、あらゆる事象を再現可能なほど、大量で複雑な術式組成が行われた、「万能機」があると言われており、かつてはこれを実現しようと目指した魔工たちも存在する。ただし現代では、「特定分野の専攻」が重視されており、こうした「万能機」の実現を真剣に考えている魔工はめったにいない。
『魔術基礎論 第四章より』




