紅式魔術式の歴史
旧来の魔術体系(四属性[天、地、海、無]、五元素[火、土、水、風、無])における二十もの組み合わせに対し、分類的問題や、世界構築に対する理解の浅さへの批判から、紅玉星において、新たに生み出された魔術式のこと。
例えば、旧式の魔術式では、地属性水元素の魔術が「氷結魔術」と呼ばれ、無属性火元素の「火炎魔術」とは区別された体系である。しかし、これは根本的には分子運動の制御として、同一の原理の魔術であるとし、これを「力能魔術」として統一することが提唱された。このように既存の二十もの魔術体系を精査、再評価し、最終的に「力能」「移動」「変質」「生命」「魔導」「思考」の六体系まで絞り込んだことで、紅式魔術式が誕生した。この提唱に携わった魔術の専門家たちは、後に「魔工宗匠」と呼ばれ、その後、彼らは魔導の頂点に座すものとして、紅玉星において確固たる地位を築いた。
魔工宗匠は、基本的に紅式六系統における最高峰の魔工によって構成された六人組であるが、場合によっては一人が複数の系統の宗匠となることもあった。また過去には、「力能」と「移動」が同一系統である提唱され、紅式魔術式が一時的に五系統になり、それに応じて宗匠も五人になるという事態が発生したこともある。しかし後に「移動魔術」でしか再現性のない技術、「空間操作」が発明され、再び六系統に戻っている。
しかし現代、この六系統に再び変化の波が押し寄せつつある。元々当代の「思考」の魔工宗匠、レアケ氏のもとで魔術を修めていたキュペイラ氏が、他の宗匠たちでさえ再現不可能な新たな技術、「自律思考・自動進化」を行う、肉眼では見ることもできない極小機械を作り出す。それは、「思考」を基礎としながらも、他の五系統の理論も高度に応用した技術で、それぞれの理論については、当代の宗匠よりも洗練されておらず、やや単純なものであった。しかしそのキュペイラ氏の「極小機械」自体は、六名の宗匠たちには再現ができなかった。キュペイラ氏は、各分野最高峰の技術者で無ければ宗匠にはなれないという規則と、宗匠は他の追随を許さぬ魔導士であるべきという理念が、初めて矛盾した事例であり、多くの議論を巻き起こした。長い議論の結果、彼女を七人目の宗匠として迎えいれるという方向で決議され、現在は魔工史上初の、七人宗匠体制となっている。無論、これはあくまで暫定的な対処であり、今後六名に戻る可能性もある。
『紅玉星世界政府公報―紅式魔術式の歴史―より』




