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革命期

 紅玉星では、第三次文明崩壊以降、多くの国家で王政が敷かれた。魔力資源を最大に有し、そして何より魔力の高い人物こそが支配者となる、実力主義の社会であった。しかし多くの国家は、数世代ほど跨いで、王国の交替が行われ、再び新たな血筋の王を擁するようになった。例え魔力に優れた人物の子であっても、必ずしも優秀な魔力を備えているとは限らなかったためだ。

 しかし、その中でも例外があった。それが竜因である。

 最大の魔力保持者でもある竜因は、次の世代に必ずその力を引き渡していく。従って、文明崩壊以降四千年以上の歴史の流れで、王国の頂点には竜因という図式が生まれていった。事実として竜因の力は、魔力こそ最大の価値を持つこの星で、崇敬に近い感情を民衆に抱かせ、実際にその力は、歯向かう敵を圧倒した。

 

 紅玉の歴史が、竜因の歴史として定まりつつあった、九二〇〇年頃、紅玉に歴史的な転機が訪れる。神気をこそ重要視する天藍星にて、新たな神王が誕生した、一千年にもわたる統治を行った神王の崩御は、一時は天藍を大きく揺るがしたが、一方即座に即位した新たな神王によって、動乱はさほど大きくはならなかった。特に継承した神王の実力は、先代に勝るとも劣らず、天藍の神王として必要とされる大自然の制御も完璧にこなした。


 しかし唯一の差異、それが政治的な点であった。これまで、天藍の神王はあくまで象徴であり、超国家的な存在で、王とは言えど、各地の政治に干渉することも、直接、あるいは間接的に領地を支配することもなかった。

 だが、この新たな神王は、即位から二十年ほど経ち、九二二一年、天藍の統一を宣言、自らを「唯一王」と称して、天藍の国家全てに、軍門に下るよう命令を下した。新たなこの神王の過激な布告に、従うものはいなかったが、神器『デュオートの錫杖』の使い手と、彼の治める王国がその支配下となってから状況が一変、残り五か国の神器使いたちも、時間こそかかったが、神王のその布告を認める結果となる。そして九三四五年、従わない国家に対して諸国征伐を開始する。


 そして玄黄星でも、九三八一年に星界統一同盟という、事実上の玄黄星一国支配が始まってしまう。こうした軍国主義の台頭は、紅玉の人々に危機感を持たせると同時に、神王や玄黄の強権的支配者と、竜因王たちの姿が被って見えてしまった。今まで竜因の力に畏敬の念を覚えていた民も、自分たちも同じように竜因によって支配されかねないという恐れから、竜因の王政に反対するようになり始める。これは「革命期」と後に呼ばれるようになったが、しかし多くの国家では、竜因が自ら退く、争いの無い無血革命を達成した。パエス王国を最後に、紅玉からは絶対的権力者としての竜因は消え、階級と格差の無い社会が、紅玉星に初めて誕生することになる。


『紅玉星世界政府公報―革命期―より』


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