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残業デイズ



わたしが籍を置く総務に定期監査が入る事になった。


定期監査とは王太子殿下が定期的に各省の業務をチェックされる事をいう。


不正、不備、不適切な業務内容は無いかを殿下直属の監査部のお役人様がお調べになるのだ。


これは平等に各省に回って来るので特別な事ではない。

特別ではないが、やはり監査が入る前に書類や記録に不備が無いか、紛失している物はないかをチェックしておく必要がある。


しかしこれがまた地味に面倒くさい、結構大変な作業なのだ。


我が総務は謹厳実直と定評のあるシードル侯爵がトップにおられるだけの事はあり、他の省よりも比較的まだマシな方だが、それでもそれなりの記入ミスや押印漏れなどの不備が見つかり、書類の手直しや新たに文書を作成するなどの作業がある。


よって、わたしもその作業に追われて連日の残業続きである。


今日も当然の如く定時では上がれず、エネルギー源のチョコレートをつまみながら書類仕事に追われていた。


「もーヤダ!なんで監査なんてあるのよぅ!」


同期のジェナがヒステリックに判子を押しまくっている。


「まぁ……必要な事ではあるわよね。この監査のおかげで不正などが防げているんだもの」


わたしが答えるとジェナは更に口を尖らせて言う。


「でももう二日連続で残業してるのよ?二日も帰って寝るだけの生活よ?お肌ボロボロよ?酷くない?」


「言わないで。心が折れるから」


当然わたしもまったく同じ生活をしているのでそれを言われると泣けてくる。



……でもまぁ今は仕事に追われているくらいの方がいいのかもしれない。


仕事をしている時は余計な事を考えなくて済むから。


レオンにいつ別れを切り出されるのだろうかと考えを巡らす暇もないし、

今頃サーラさんと食事でもしているのかしらと考える暇もない。




うん、残業万歳。監査万歳。



その時、今回総務(ウチ)と同じく監査が入る経理の文官が明細書を持って入室して来た。


「事前に申し入れのあった明細書をお持ちしました……って、リゼカ=リューズ、お前か」



ーーゲ。


部屋の入り口で明細書の入った封筒を持ったジョージ=ハリンソンが立っていた。



「はっ、こんな時間まで働いてんのか、ざまぁだな」


ジョージは相変わらず意地の悪い顔をして意地の悪い事を言ってくる。


「そのセリフ、そのまんまお返しするわよ。経理の方がてんやわんやとか聞くけど~?」


「なっ…!ホントに嫌な女だなお前はっ!レオン兄さんもなんでこんな奴を……っ」


「余計なお世話よ。とっととその明細書を置いて出て行って。それとも何?今日も足を踏まれたいの?それとも頭からコーヒーシャワーでもいっとく?」


わたしがコーヒーの入ったマグカップを手にすると、ジョージは慌てふためいて去って行った。


扉を閉める寸前に「フン!このブスがっ!」と悪態を吐いて。


………子どもか。



そりゃあ、サーラさんに比べたら誰でも見劣りはするでしょうよ。


「………仕事しよ」



わたしはそう呟いて仕事に戻った。




結局、4時間も残業してその日の業務はやっと終わった。


「っ疲れたぁ……」


精も根も尽き果てた様子でジェナが言う。


そのジェナに先輩文官のヘレン女史が声を掛けてきた。


「お疲れ様。ミス・ラウス(ジェナの姓)、あなた今日もウチの馬車にお乗りなさいな。家まで送ってあげるわ」


ヘレン女史は男爵家のご令嬢で、いつもお家の馬車で登城しているのだ。


「え?いいんですか?今日は昨日よりさらに遅い時間だから助かります!ありがとうございます」


嬉しそうなジェナのお礼に頷きながら、ヘレン女史はわたしに言った。


「ミス・リューズは独身寮だったわね」


「はい。近いので大丈夫です」


わたしがそう返事するとヘレン女史は言った。


「王宮敷地内でも遅い時間だし若い娘の一人歩きは推奨できないわ。だから連絡しておいたの」


「え?連絡?」


「迎えに来てくれているはずだから彼に送って貰いなさい」


「彼?」


はて?彼とは?


わたしが首を傾げながらドアを開けると……



「終わったか?リゼカ」



「彼ーーっ!?」



レオンが部屋の前に立っていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ヘレン女史の、うら若き乙女の同僚への目配り。 雇用機会均等法以前の古代を思い出すほど、対応が鮮やか。 (22時以降の帰宅時、タクシー券が支給されるのが当然だと父が真顔で言い放っていたけれど…
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