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この恋に終止符(ピリオド)を  作者: キムラましゅろう


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12/14

終止符をうつ……時?

噛み合っているようで噛み合わない劇場、開演です。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「「次の休み、時間ある?」か?」



「「え?」」



百貨店をぶらぶらした後、このまま出仕するというレオンに寮まで送って貰った。


その別れ際に互いの言葉がそう重なったのだ。


レオンとわたし、奇しくも同じ事を考えていたみたい。


……次の休みの日で終わりにしよう、と。



サーラさんの瞳の色のエンゲージリングを眺めていたレオンの姿を見て、決心がついた。


エンゲージリングの宝石()は、贈る女性の瞳の色を用いるのが一般的だから。


青い石を見ていたという事、それはつまり……


レオンは間違いなくサーラさんとの将来を望んでいる、そういう事だ。


きっと彼もとうとう、わたしに別れを告げる覚悟を決めたのだろう。


わたしと付き合っている限り、昨日のように恋人という肩書きであるわたしを優先させなくてはならない。


最愛の人を後回しにしても。


でもそんな事を続けていては、レオンの心が疲れてしまう。


わたしもそんな不毛な恋を続けても仕方ない。


わたしは、わたしの瞳の色のエンゲージリング、新緑の石のリングを贈ってくれる人を探さなくては……。



わたしとレオンは、互いに少し硬い表情で次の休みの約束をして別れた。



次に会うのが、恋人としての最後の日。



わたしはその日までに、

東方の国の硬~いスイーツ“カタヤキセンベイ”を食べて、少しでもプリンメンタルを屈強なものにしようと頑張った。


結果……ガッチガチのメンタルになれたのではないかと思う。



ちなみにレオンと百貨店に行った次の日、サーラさんがわざわざわたしの所まで来て、酔っ払って醜態をさらした上に押し掛けるという暴挙に出た事を平謝りされた。


レオンにも物凄く叱られたらしく、申し訳なさそうに菓子折りを持って、土下座する勢いで謝られた。


若干引いてしまっていたわたしの代わりに、ヘレン女史がそれを止めてくれたけど。


サーラさんとも同期であるヘレン女史は、前々からサーラさんの常識の無さが腹に据えかねていたとお小言を言い始めたのだ。


サーラさんはヘレン女史に非常識さを散々指摘され、挙げ句の果てに、「そんなのだから同性から嫌われるのよ!」という辛辣な言葉を食らわされた。


その言葉にショックを受けたサーラさん。

でもヘレン女史の言う事は全て尤もな意見だったらしく、言い返す事もなく打ち拉がれた様子で去って行った……。


ヘレン女史強し。


心から尊敬いたします。

あ、つまらない物ですがハンカチーフどうぞ。


いえ、いつもお世話に、たった今もお世話になったお礼です。


ええそう、新しく出来た百貨店で購入しました。あそこいいですよね。


ボーナスが出たらまた行きたいです。


そうですね、そろそろ仕事に戻りましょう。



と、そんな感じで日々を過ごし……



そして満を持して迎えた約束の日。



わたしはこれ以上ないくらいオシャレをした。


一番お気に入りのワンピースを着て、髪も編み込みをして、少し手の込んだアレンジにする。


そしてお化粧をして、コロンなんかも手首と耳の後ろになんかつけちゃったりした。


最後の日は、わたしの中ではとびっきり綺麗な姿でレオンとお別れをしたいから。


長い人生の中でふとわたしの事を思い出した時に、その姿を思い出して欲しいから。


鏡の前の自分を見つめる。


わたしの新緑の瞳。

これが青い瞳だったのなら、あのエンゲージリングはわたしのもの?と少しでも希望を持てたのに。


なんて、そんな事を考えても仕方ない。


覚悟を決めて、寮を出た。


寮の玄関を出るとすぐに前庭の木の下に立つレオンを見つけた。


非番だと聞いていたけどレオンは騎士服を着ていた。

きょとんとするわたしにレオンが気付く。

そしてキラキラスマイルでわたしの名を呼んだ。


「リゼカ」


眩しいっ、キラキラスマイルが眩しい。


「おはようレオン。どうして騎士服?今日は非番じゃなかったっけ?」


「おはよ。急なシフトチェンジで夜番だったんだ」


「えっ?じゃあ徹夜?大丈夫?日を改める?」


わたしがそう言うと、レオンは慌てた様子で首を振った。


「いや、大丈夫だ。こんな事よくある事だし慣れている。騎士の体力は無尽蔵だぞ」


「無尽蔵ではないだろうけど……わかったわ。それで、今日はどうする?」


どこで別れ話をする?



「そうだな。(落ち着いて話をしたいから)静かな場所がいいな」


「なるほど……それもそうね」


別れる話だもん、人の少ない静かな場所がいいよね。


「あそこはどうだ?初めて一緒に出掛けた時に行った、王立動植物庭園」


「あ、あそこなら静かな場所が多いから(別れ話には)丁度いいわね」


「ああ。(思い出の場所だから)丁度いい」



初デートの場所が別れの場所になるなんて皮肉なものね……。


わたしは心の中でそう呟き、レオンと共に動植物庭園に向かった。


王立動植物庭園は、動物園や植物園、そして広大な美しい庭園を誇る国民全ての為の憩いの場だ。


一年半前、レオンとお付き合いをする事になって初めて訪れた場所。


どうやらそこがわたし達の終焉の場らしい。



「……え?馬で行くの?」


城門の所に繋いであったレオンの馬を見てわたしは驚いた。


「ああ。辻馬車で行くと遠回りになるし、歩くには距離があり過ぎる。馬で行くのが丁度いい。団の許可は取ってあるから大丈夫だ」


「大丈夫って……」


わたしが大丈夫ではない。

わたしは馬には乗れないから当然レオンと二人乗りで行くわけだ。


別れ話の後、帰りは庭園の所で別れて帰るのだと思っていた。

これでは帰りもレオンと一緒という事になる……?


いや、わたしは辻馬車で帰ればいいか……?と思いを巡らせていたら、急な浮遊感に驚く。


「きゃっ?」


レオンに抱き上げられ、馬に乗せられたのだ。

わたしの後ろにレオンがひらりと騎乗する。


くそう、騎士め……まるで自分の一部のように馬を扱って……。


平静ではいられない体の密着に粟立つ心を、訳の分からない八つ当たりでやり過ごした。


だけど馬で行くと言ったレオンの判断は正しかった。

庭園に向かう馬車の渋滞に巻き込まれる事もなくすんなりと動植物庭園に着く。


レオンも着いてすぐに別れ話をするつもりはさすがにないのだろう。


初デートの日のように植物園を周り、動物園で動物たちに癒され、途中カフェでランチをして、広い庭園を散策した。



アレ?普通にデートみたいで楽しいわね。


でも、やはりレオンの表情はどこか硬くて。


緊張している感じがする。


別れ話を切り出すタイミングを見計らっているのだろう。


それならやっぱりわたしから切り出した方がいいか。


レオンに池の畔の東屋に行かないかと提案してみよう。

あそこのなら人の通りもまばらで話し易いと思うから。


思い切ってレオンに告げる。


「レオン。わたし…今日レオンが何を言いたいのか分かっているつもりなの。でも此処では何だから、池の東屋に行かない?」


「……えっ?分かって……?え?本当かっ?俺、そんなに分かり易かったかっ?」



言い当てられてビックリしたのだろう。


珍しく狼狽えるレオンを見て、ちょっと意趣返しをした気持ちになった。


「ええ。あなたの気持ちは全て分かっているわ。だから……」



もう終わらせましょう。


レオンの目を真っ直ぐに見て、話を聞く覚悟を示す。


そんなわたしにレオンが言った。



「……分かった。でもそれなら余計に丘の上に行ってみないか?あの夕焼けをもう一度一緒に見たいんだ。そこでもちろん俺から告げさせて欲しい」


告白はわたしから。


交際の申し込みもわたしから。


でも別れの言葉はあなたからなのね。


そうね……その方がいいのかもしれない。



わたしは黙って頷いた。



そして丘の上に向かって歩いてゆく。


一歩一歩。思い出を噛み締めて。


あぁ……近付いてゆく。


この恋の終わりが。


わたしはその場所に自ら向かい、


そしてそこで終止符(ピリオド)を打つのだ。



わたし達はどちらも口を利く事もなく、無言のまま丘の上に辿り着いた。


「……!」


先にその光景に気付いたレオンがわたしに言う。



「リゼカ、見てごらん。とても綺麗な夕焼けだ……」


「わ………」



丘の上からは庭園全てと、遥か遠くどこまでも広がってゆくアデリオール王都の街が夕日で真っ赤に染め上げられていた。



あの日、初めて二人でここを訪れ、初めて一緒に見た夕日もこんな美しい夕日だった。


隣ではレオンが目を細めてこの光景を見ている。


その姿を見て、やっぱり彼が好きだなぁと心から思った。


こんなに優しく素敵な人と一年半も付き合えたんだ。


それを良い思い出としてもいいじゃないか。


レオンには幸せになって欲しい。


この大好きな人の幸せを、素直に心から願えた。



「リゼカ」



レオンがわたしの名を呼ぶ。



時が来た。


この恋に終止符(ピリオド)を打つ時が。



わたしは彼に向き直る。


覚悟は出来ている。


さぁ、告げて下さい。別れの言葉を。



すると徐にレオンがわたしの前に跪いた。



跪いて別れの許しを乞うスタイル?


そこまでしなくてもいいのだけれど、彼がそうしたいのなら仕方ない。


わたしはすっ……と目を閉じた。



「……リゼカ」



「はい……」



「俺と………」



「っはい……」



「結婚して欲しいっ……!」






「………………………………………はい?」




予想していた言葉と違うものが聞こえた。



しかも信じられない言葉が。


わたしが驚いて目を見開くと、


レオンがわたしに青い石のエンゲージリングを差し出している姿があった。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





次回、お待たせしました、レオンsideです。





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