終止符をうつために
よろしくお願いします!
「このところ時間が取れなくてごめん」
彼が言った。
「仕方ないよ。仕事でしょう?」
なんでもない事のようにわたしが答える。
「あぁ。新しい団長が厳しい人で、訓練時間や哨戒が増えた」
ーーでも、嬉しい事もあったでしょう?
わたしは心の中でそう呟く。
でも口にするのは労わりの言葉。
「わ……大変ね、しっかり食べてしっかりよく寝て。
騎士は身体が資本だものね」
「そうだな……それで……「さぁ出来た!食べましょう!温かいうちに召し上がれ!」
何かを告げようとした彼の言葉を遮ってわたしは元気よく告げた。
「………いただきます。今日も旨そうだ」
そう言って彼はまた、
本当に言いたい言葉を呑み込み、我慢する。
「ふふ、嬉しい。おかわりも沢山あるからね」
「ああ。いつもありがとう」
ーーごめん、わかってる。
あなたがわたしに告げたい言葉。
本当はわかってるの。
でもね、
わたしから始めた恋だから。
わたしから終えさせて欲しい。
あなたがようやく自分の素直な気持ちをあの人に向けられる時が来たのだから、
わたしは潔く身を引くべきだとちゃんとわかってる。
わかっているけど、
メンタルがプリンのわたしには段階が必要なの。
この恋を終わらせるための階が。
少しずつ、少しずつ、あなたを解放してゆくから、
だからもう少し待ってほしい。
わたしはそう思いながら、
わたしが作った食事を美味しそうに食べてくれる彼を見つめた。
「食事が済んで、後片付けが終わったら今日は帰るね」
「え、なんで?」
「仕事キツイんでしょう?そして朝練もあるんでしょ?ゆっくり休んで」
「でもせっかく久しぶりに会えたのに」
「次のレオンの非番に合わせて、また来るから」
「リゼカ?」
とりあえず、今日から始めてみよう。
彼から…レオンから少しずつ距離を置く事を。
この恋に終止符を打つために。