表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪い泣かせ  作者: 平田 一
9/11

呪い泣かせ②

瞬が今回久しぶりにアホな発言かまします。


昨今の規制に関するボクなりの懸念とか、疑問も反映させたような内容になっています。

 アタマを少し冷やしたくって、オレは屋根の上にいる。端から見たらのんきに月見の真っ最中に見えるかな。

 雲もなく、星も月も、今日はハッキリよく見える。

 こういうときは空を眺めて、見惚れる時間になるんだろうが、生きるか死ぬかの瀬戸際だから、そんなゆとりは諦めた。

 敵は悪霊。さっきのことで多少は向こうも警戒してる。けどこっちの常識だとか、セオリーなんか通じない。

 ましてや欲望がエンジンのケダモノだったら尚更だ。


(まあ、そういう意味では、オレも似たり寄ったりか)


 そんな事を考えながら、オレは時間を待っていた。

 下の部屋の携帯のアラーム機能が鳴るときを。


「プ――――――!!!!!!」


 アラームが鳴りだした。

 仮眠は終わりの合図だ。

 鳴ったと言っても、携帯のバイブ機能が鳴っただけ。近隣住民の安眠を妨げるほどのものじゃない。


「もう時間か?」


 オレは屋根から窓へと移って、一応の確認を。

 某クモのヒーロー映画みたいな逆さ吊りのまま。

 姐さんが「そうだ」と言った。

 ちゃんと理解したオレは、逆さ吊りからクルっと回り、先輩の椅子へとめがけ、シュッと飛んで着地する。

 当然着地で椅子を壊すアホがないよう慎重に。


「ほら」


 姐さんがシューズバッグを渡してくれた。

 シューズバッグは背中に背負える仕様のものになっていて、あるないではいざってときに動けないから重宝だ。

 さっさとバッグにシューズを入れて、前に背負って、背もたれの上に両腕を置いて、


「……やりますか」

「その為に来たからな」



     ◆ ◇ ◆



「先輩に憑いてる呪いの処遇をそろそろ決めましょう」


 休憩後、開口一番言ってきたのはそれだった。まだ意識はぼんやり気味で、気怠さもあったんだけど、自分の生死に関わる以上、無理やりにでも自分を起こす。

 何よりどんな方法なのか、興味がないわけないからだ。


「先輩はホラー映画を相当見てると聞きました。ならいくつか祓う策をご存知なんじゃないですか?」


 そう言われて、考えて、遠慮しがちに私は、


「私より見てる人は絶対いるから何ともだけど、例えば、悪魔祓いにおける祈りの言葉とか……」


 “呪い泣かせ”と呼ばれる彼は、結構真面目に聴いている。


「神父が悪魔に挑むとき、何を拠り所にしているか? どっかの映画のパンフだったか、どこだったかぼんやりだけど……神様への信仰心、もっと簡単に言っちゃえば、神様への信頼感、愛情を糧にする……そういう感じだったかな? 正直自信はないけど」


 言い訳みたいな感じで最後、返答した私に対し、彼の代わりに篝さんが、咎めずに返事する。


「大雑把ではあるが、まあそれでも良いだろう。信仰って言葉だけだとカルトじみてて引けるだろうが、実をいうと心得自体は、みんなもよく知るとこからだ」

「よく知るとこ?」

「《信じる気持ち》だ」


 一瞬まだ寝ぼけているかと、本気で私は思った。


「背中にライフル背負ってる人が、そんな事を言いますか?」


 思わず冷たい口調になって、そのまま指摘をしてしまう。


「ハハッ。確かにその通り。ぐうの音も出ないよ。だがな、結局はそこに帰結するんだよ」


 大きく笑っていた顔が、次第に真剣さを帯びて、


「勿論信じたからと言って、救われるとは限らない。信じても命を落とすものは大勢存在した。だが悪魔や悪霊と、呪いに抗いたいのなら、結局信じていくしかない。相手は勿論、自分もな」

「自分?」


 篝さんから意外な返答が返る。


「お前の場合は自分のことをもっと信じるべきだな。事情が事情ゆえだから、難しいかもしれないが……」


 一旦そこで言葉を切って、篝さんは私に向けて、


「お前が内に秘めてるものを、バカ瞬に打ち明けろ。それも他人に聞かれたくない、認めたくない内容を……」


 数秒か数分か、私は固まっていたらしい。

 生き残りたいのなら、自分をさらけ出せっていう、この大人の女性に対して、固まっていたらしい。


「え? 何ですか、今なんて言ったんで……」

「言ったとおりだ。オマエの中にあるものをコイツにさらけ出すんだ。死にたいなら話は終わり。今すぐここから出ていくさ」


 文字通り、有無を言わさぬ、物言いの篝さん。

 私は瞬時に頭の中で色々想像してしまう。


(内に秘めてるもの? え、何? どゆこと? 悪いこと? かくしごと? え、どれ? どれのこと!?)


 完全に頭の中がパニック一色だった私に“呪い泣かせ”の彼がちょっと気遣ってか、付け加え、


「悪霊とか悪しきモンは、標的が背徳感に感じるところを狙うんです。そこはスッゴイプロテクトが強固なようで一番脆い。だって人はバレないように日々を過ごしてますからね。特に昨今、上っ面は真人間ぶってるヤツが、実はセクハラしまくっているサイテー野郎だったとか、身の程知らずのプロテクトに足元を掬われる……プロテクトが昔よりもアキレス腱なんですよ」


 一旦切って、メモに何か、ツラツラ書いている彼は、


「取り敢えず。オレが試しに先輩に言いますと、」


 急に準備運動みたいなモーションをし始める。

 何だ? 大それたことことでも言う気か? と思い、モーションの完了まで、ジッと私は待ってると、


「俺、アンタのおっぱい眺めて、スッゲー元気をもらってました」


 唐突なセクハラ発言を、ぶちかましてきたのだった―――。

元々人って不徳なものとか、背徳感のあるものに惹かれる生き物だと思って、だからこそ表現の価値は高いと思ってます。なので此度は真面目にバカ(とエロ)を大事にしたってところですw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ