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呪い泣かせ  作者: 平田 一
7/11

初対面

瞬と雪湖と篝さんの三人一組体制です。


少しずつ本編の秘密に迫っていきます。

「う、う……ん」


 どれくらい眠っていたのか、あんまり覚えていなかった。

 いや……言葉を言い直す。どれだけ気絶をしていたか……。

 確か、最後に覚えているのは、鼻血を出してる男の子、いっぱい集まってきた《腕》。腕たちに捕まって……


 ≪痺れ≫が戻りそうだった。

 忌むべき痺れが再び身体へ伝達しようと試みる。私は唇の裏側を噛みきろうと考える。痛みで恐怖が忘れられれば、呪いの力も遠ざかる。忘れようとした7……。


「あー、ちょっと、ムリしないで。抑え込もうとしないで」


 どこかで聞いた声が突然、私に向かって訴える。

 瞳はまだ開けていない。起きたかどうかも知らないはずが、相手は何故か、確信を持って、私に接してる。


「サーモグラフィーなんか無くとも、オレにはよーく見えんのよ……どういう原理でこうなってるか、全く分かってねえけどよ」


 不本意だって言いたげな、口振りがよく通る。

 というか、この声、確かどこかで聞いたような。

 この声は……そうだ。これはさっきの……


「あの時の!」


 得心がいった私は、思わず身体を激しく起こし、


『いてっ!!』


 相手の頭と、衝突をしてしまう。

 自分の身体を起こすことしか、私の意識がなかったせいで、頭頂部が頭頂部と接触事故を起こしてしまう。


「イッタぁ……」

「イッテぇ……」


 お互いに痛がった。

 頭がパックリ割れたんじゃ?って思うぐらいに痛くって、頭長部の中心地に異変が無いか調べた。

 幸い大したケガもなく、大きなコブが出来たぐらい。

 試しにコブに触ってみると、ちょっと触れただけで痛い。

 でもお陰でボンヤリしていた意識の方はバッチリだ。

 バッチリ覚めて、頭の方が状況把握に回り出す。

 なのにあんな衝突事故があっても瞼を開けられない。こんなスッゴい痛みがあるのに、開けられないってどうして……。


「何で瞼が開かないか、知りたいって顔ですね」


 さっきとは打って変わって、少年は冷静だ。


(え? ちょっと待って? 私の部屋に、知らない誰かが、二人も今はいるってこと!?)


 仰天のうち真っ当な仰天ごとを拾い上げ、頭のズキズキ緩和の代わりに、別問題で埋まってく。


「おい、瞼に憑りついている、恐怖を取ってやったらどうだ?」

「最後のコイツがしつこいんです。も少し待ってくださいよ」


(……ん?)


 意味が全然分からぬままに、勝手に話が進んでる。

 いや、ホント、分からない。

 《恐怖を取る》って、どゆこと?


「……終わりました。オレのところに移ってます」

「ゆっくりと、開けてみろ。さっきよりかは良いはずだ」


 もしかして、開けてみろって、私の瞼を言っている?

 そういやさっき、瞼に憑りつく何とかかんとか言っていた。

 いやいや、それ以前にあなた達はどちら様!?

 私今、強いて言うなら、そっちの方が気になるけれど……。


「無理っすよ。年下にあんな感じに助けられて、メンツも角も立たない今、恥の上塗りでしょ次は」

「……は?」


 いくら助けてくれたからって、見ず知らずの年下相手に何でそこまで貶される?

 しかも何? この男子、すっごいエラそうなんだけど……。


「……何様のつもりよアンタ! 一体どこの誰なの!?」

「言ったとおりだな。自分でちゃんとできるって」

「え?」


 よく見ると、私の瞼は、ちゃんと上まで上がってた。

 見慣れた自分の部屋模様が、瞬時に視界を埋め尽くす。

 いや、一つ訂正する。

 汚部屋が綺麗になっていた。

 あの時私を助けてくれた男の子もボンヤリ見える。


 そこでようやく気が付いた。

 ≪一杯≫食わされたのだと。


「お前がただのエロガキじゃなくって安心したよ」

 

 艶めかしい女性の声に促されて彼を見る。くせッ毛がちょいちょい目立つ、三つ編みの黒髪と、メンズタイプでバーガンディのフーデッドライトパーカー……見られて恥ずかしくなったのか、深くフードを被りだす。気のせいかもしれないけれど、頬が染まったようにも見えた。口元は笑顔の種類で言うなら、素直な喜びだ。あの口調に反して実は、純朴な子なのかも。


 艶めかしい声の主は私のベッドで座ってる。黒のライダースーツ、艶のある黒い髪とポニーテールが目に入り、デカダンさ、アンビバレントさを感じさせる雰囲気だ。で、背後に細くて長い、サバゲ―とかに出そうなケースを、私のベッドの上にドーンと悪びれもせず置いている。


(クールそうな見た目だけど、飲みの席だと酒豪っぽい……)


 勝手な憶測を考えて、その女性を見ていると、挑発的な微笑みを私に対して向けてくる。その眼差し一つだけで、コロッと行っちゃいそうだった。

 慌てて私は赤面したかもしれない頬をパンパン叩き、目の前の光景に対する疑問に向き合った。

 けれど、その前に、


「さっきはありがと。私のことを助けてくれて」


 目の前の男の子に私は感謝を伝える。

 体を45度倒し、綺麗なお辞儀を見せながら、私は今思いつく限りの感謝を言っていく。


「こうして生きてられて、また誰かと話が出来る……けれど、その後のカミングアウトは余計だね」


 感謝に照れたと思っていたら、手痛い指摘に「ウッ」となって、やっぱりさっきの口調は背伸びで、ホントは素直な子なのも。


「確かにアレは無かったな。いくら事情があるからって、流石に赤裸々すぎたぞ。まあ、お前は吐き出さなくっちゃ、もれなく拗らせるからな」


 横からの追加射撃でさらに「ウッ」となった彼。

 どうやら女性は味方であるけど、すべての味方じゃないらしい。


「えっと……ところで、あなたたちは誰ですか? さっきの行動を見る限り、敵では無いって思うけど……」


 当然の不信感を素直に私は打ち明けて、相手が次に返す言葉をドキドキしながら待っている。

 最初に口火を切ったのは、


「私は夢渓篝(むけい かがり)。夢渓の字は中国の「夢渓筆談(むけいひつだん)」からだ」

「夢渓筆談?」

「平たく言うなら中国の、歴史や考古学とかを研究して、その成果をまとめた本……コトバンコにそうあった」


 さらっとネットから情報を仕入れたという夢渓さん。

 今の動きでクールビューティー要素が瓦解したような……


「篝の意味は、照明のために燃やす火とあった。これも……」

「コトバンコ?」

「そう、そこに乗っていた」


 まったく隠す素振りも無しに、白状した夢渓さん。

 やっぱり絶対、お酒の席では酒豪に変貌タイプだ……。


「相良瞬。中学2年」


 何故か少し言いにくそうに、


「オレは“呪い泣かせ”って、能力の持ち主だ」


 これが私と、呪い泣かせの瞬との最初の会話だった―――。

主人公たる瞬くんの特徴に関しては「レッドフード」(川口勇貴著)の主人公・ベロー君がイメージです(主に三つ編みなどといった外見を参考に)。篝さんに関しては「ようこそ実力至上主義の教室へ」に登場の茶柱佐枝ってキャラクターを参考にしています。

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