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ギリギリ生きてる陰キャのサバイバルストーリー

みなさん、真面目に生きてますか?社会には本音と建前、表と裏がある。

自分を建前で守っているときは安心していても、騙されるのは辛いですよね。

この小説は要領のいいクラスメイトからチー牛と呼ばれてしまった

ごくごく平均的な人が本音と建前の剥離がひどい現実から逃げまくって逃げまくった先に何があるのか、というコンセプトで書いたお話です。

 僕は有名私立大学に通う大学四年生。親がその大学のOBというだけで、なんとなくその大学を受験した。世間的に見ればかなり良いとされる大学で、きっと周りも僕みたいに真面目に勉強をするタイプなのだと思っていた。しかし、「頭が良い」にもいろいろな種類があることを僕は人生21年目にして学んだのである。

 

 大学三年のときに選択したセミナーはゆるすぎた。ひたすら映画を見て「チル」してればいい授業内容だった。就職活動のことを考えて教授が簡単な授業を用意してくれたのかもしれないが、授業が簡単すぎるせいで授業内容に興味がないのに単位のために選択するような、普段あまり見かけないようなクラスタの人たちと選択がかぶってしまった。夜の繁華街が好きそうなK君は僕に洗濯機みたいな音ゲーやってそうとか言って絡んできたのに、しまいにはあだ名がチー牛とか犯罪者予備軍になった。他にもいろいろ変なあだ名をつけてきた気がする。それに便乗して、一見真面目そうなY君が僕のことを糖質とか言ってきた。言葉の暴力にもほどがある。僕のイメージはゴリゴリの音ゲーマーからチー牛犯罪者予備軍に、チー牛犯罪者予備軍から糖質になった。最近、また犯行の意図も目的もはっきりしない変な事件があり、アニメ好きの犯罪者の顔がまた報道され、SNSではチー牛とイジられている。Y君とK君はそんなチー牛が怖くないのか。何をするかわからないんだぞ!


 彼らに言わせると、僕は人生経験が足りないんだそうだ。親からお小遣いを少しもらって、実家から通って、中学生、高校生の時と何もかわらない温室にいるらしい。彼らが童貞いじりをしないのは、なぜだろう?もし彼らが童貞いじりをしてきたら、K君にはヤリチンSTD野郎、Y君には下北沢でスカウトされて真夏の夜のなんとかに出演して欲しすぎィ!と言うつもりだったが、彼らはなぜか童貞いじりはしてこない。


 大学3年になり就職活動を意識しはじめたせいか、僕は教授が講義のために用意した環境問題や人権についての映画を見ているフリをしながら、YくんとKくんの就活をシミュレートしてみた。Yくんは、21にしてヤクザ脳で、すごく要領のいい優等生だ。自分が怪しいブラックバイト先からもらった仕事を、ちゃっかり下請けを探してきて、ヤクザが原発作業員を探すような手際の良さでとんでもない仕事量をくれるバイト先に恩を売る。そして遊びながら収入を得るのだ。バイト先は教授の出入りしている新興宗教とかで、普通の人は立ち入れない領域だ。きっと就職活動をしたらこういうのが有名な企業に入るんだろうな。K君はクラブばかり通っているようで「人脈」を作っている。よくわからないインフルエンサーやモデルの彼女が沢山いて、よくわからないベンチャー社長とかに名刺をもう貰っているから、簡単に内定がもらえるんじゃないかな。残念ながら、僕にはそのいずれの能力もない。他の学生は生きにくい社会の中で変なやつらに恩を着せて積極的にサポートネットワークを見つけているのに、僕が「支援」という言葉から連想するのは家族だ。僕は僕の就職活動をシミュレートしてみた。僕は大学院に実家から通いたい。食いっぱぐれることなく生きたい。家に帰って親に進路のことで院進を望んでいると言ったら、「別にいいよ」と言われた。「大学院にいる間に公務員試験でも教員免許でも取ればいいじゃない。」そう言われた。今度こそは、大学院でこそはヤクザ脳やパリピがいない環境で勉強できるぞ、と思った。


 学期末、教授の用意した人権についてのレポートを発表することになった。いつもサークルの後輩に仕事を投げてるY君は大企業の搾取について詳しすぎるし、インフルエンサーモデルを食い散らかしてるパリピのK君はフェミニズムについてレポートを用意してきた。しかも、教授の評判はすこぶるよかった。Y君は財閥による搾取について、K君はトー横キッズや風俗について書かれた女性の論文を引用しながら社会批判をした。やつらは自分の本性を隠すために沢山書いたのだ。必死になって沢山調べて書いたのだ。たくさん調べて書いた彼らのレポートの評判はすこぶる良かったが、教授に言わせると僕のレポートは「浅い」らしい。僕は学生運動時代のことを調べたレポートを作成したが、教授は内容が暴力的だと感じたらしい。Y君とK君からの言葉の暴力に耐えてたんだから、どこかに暴力的な部分が出てしまっても仕方ないだろう?教授はいつも狭いセミナー室で僕が犯罪者予備軍だの糖質だの言われてるのを見てたはずなんだけど、なんでY君とK君のレポートのほうが平和的で素晴らしいみたいな評価なわけ?

 

 とくにY君の研究は先生視点では素晴らしかったらしく、もし研究者を目指すなら先生が学士をとった国立大学や修士号、博士号を取ったアメリカの大学にも推薦状を書いてあげようと言っているのを見て、僕は気が狂いそうになったね。しかし僕はY君の本性を知っている。どうせ就職活動の企業研究とレポート用の研究を同時進行させてるんだと思った。君は原子力の研究をしながら終戦イベントを企画できるような男だ!企画とっとと財閥系でもどこでも行ってネクタイに首を絞められてくれよ!君は危険だから! 


 K君はレポート発表後、教授よりも女子に褒められていた。女子といろいろ「エアドロ」してた。僕は見たぞ。本当はインフルエンサーモデル食いまくりのくせに、学内でも「女の子の気持ちが解る素敵な人」という評判になった。学校では「ごめん、俺、彼女いるから!」って好青年風に返してるけど、インカレだのナイトクラブで知り合った彼女は同時進行中だ。


 裏表もなく単純な僕は、ただ実家から大学に通いたかっただけの僕は教授から見るとつまらない人間だったらしい。僕は教授に聞いた。「院進」していいですか?教授は頭を掻きながら困った顔をした。

僕は空気を読まず「院進」を進路先にすることにした。


 学期末というので教授が大学近くのレストランに僕達を連れてってくれることになった。大学の近くのレストランまで歩いて行く途中で、「K君もY君も頭いいねえ。どうしてもっと難しい大学に行かなかったの?ほら、某国立大学とか・・・。」と聞いてみた。いつの間にか、なにか質問する前に二人を褒めるようになっていた。「あー、Kはもともと真面目ちゃんだったんだけど予備校にいた女子校の女に振られてね。」Yが言う。「あいつはT大に入った。医者になるんだと。どうでもいいよね。」Kが投げやりに補足した。どうやらKは真面目ちゃんだった時に真面目ちゃんに振られてこの様らしい。女性とゲーム感覚で遊べるのも女性を信用できないからだと言う。「俺は中学の時以来無勉。」Yが言う。僕は高校のときも一生懸命勉強してやっとこの大学に入れたんだけどなあ。Yに高校時代何をしていたか聞いたら雀荘通いだそうだ。


レストランでは教授が「みんなの進路」を話題に挙げた。僕は答えなかった。誰も僕が答えないのに気づいてないし興味がないみたいだった。K君はITベンチャー狙いでY君は財閥狙いだと言う。大企業の悪事に詳しい左寄りの教授も、Y君が財閥に入りたがっている事について何も言わなかった。それどころか「頑張ってねー」と応援してた。


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