第1話 『プロローグ1 勇者召喚』
◆はじめに
多分、途中で更新しなくなります。
執筆のリハビリと、今まで一人称ばかりだったので、三人称視点に挑戦の為の練習作です。
日本の武器、十手を使ったアクションを書きたいですが、アクションより持たせる理由付けの方が、難易度高いてす。
三人称だと、あまり満足のいくプロローグが書けませんでしたが、見切り発車です。
【物語スタート】
「勇者よ、魔王を倒したら、元の世界に返そう」
少女は、唐突に告げられた言葉に、目を開ける。
眩しい光に包まれて、気が付いたら見知らぬ場所にいた。
何かに満たされる感覚がした。
「ここは、君の知る世界じゃない」
床を見れば、権力を象徴する、赤いカーペットが広がっている。
少女が目を上げれば、白い玉座があり、そこに座る中年のおじさんがいる。物語に登場する、王様みたいな恰好をしている。
左右には、帯剣を許された騎士風の人物が四人おり、少女の事を見ていた。
(おい、勇者は男ではなかったのか?)
(記録では男性のみですが……)
王様の側近らしき騎士がひとり、王様と小声で何かを相談していたが、少女には届いていなかった。
「突然の事で、混乱しているだろう。ただ、我らの世界は今、魔王という脅威にさらされている。魔王を倒せるのは、異世界から召喚した勇者だけなのだ」
日本で生まれ、平凡に過ごしていた少女だったが、言葉は理解できていた。
「勇者にあれを」
一人の騎士が、剣やバックといったものを、板に乗せて持ってくる。
・剣が一振り
・ナイフが一本
・勇者の証の首飾り
・金貨1枚と銀貨が10枚
・財布
・簡易マジックバックだというショルダーバック
・植物の葉が数枚
典型的な、勇者スタイルの装備品。その知識は、ゲームに限定されたものだと思ったが、現実で遭遇すると苦笑いしか出てこない様子だった。
「古い決まりで、勇者には最低限の装備を持たせ、過度の干渉をせず、旅へ送り出す事が決められている」
「……」
「頼む。世界を救ってくれ。その後、この王城へ戻る事ができたら、元の世界へ帰還できる」
王様のいう最低限の装備は、魔王を倒すというには、貧弱なものだった。
そうはいっても、騎士へ支給されるものと同じ剣やナイフであり、戦うには十分な性能は持ちつつも、品質は最低限より上くらいで、戦闘経験を積んだ騎士は自ら剣を購入するようになる。
何か言いたげな表情をする少女は、それでも無言で、それらを受け取る。
「勇者よ、名前を聞かせてくれ」
「……優紀」
「勇者ユウキよ、魔王を倒してくれ。そうしたら、元の世界へ返そう」
「……」
ユウキという少女は、王様と数秒間、視線を合わせる。
「……もう行きます」
そう言うと、王様や騎士から背を向けて、質問もないまま立ち去っていこうとする。
王様や騎士たちは、あまりの手ごたえの無さに、自分たちが無茶ぶりをした事を棚にあげ、声をあげてしまった。
「ゆ、勇者よ、待ってくれ。この世界の常識や、戦い方を騎士に聞かなくて大丈夫か?」
「いりません。自分でなんとかします」
「そ、そうか。せめて城外までは、騎士が案内する」
「わかりました」
王様たちにとって、勇者とは「くじ引き」に近い。
世界に魔王という脅威が現れた時、神様が手助けできる人材を、異世界から呼び出してくれる。
ただし、魔王が必ず討てる訳ではない。失敗して死んだり、魔王を倒す意欲が無くなれば、一か月ほどで新しい勇者が召喚できるようになる。神に愛された人類が、救済されるためのシステム。そこに、召喚される勇者の意志は関係ない。
勇者が去ったあと、王様は騎士のひとりに声をかける。
召喚システムには、明確に神が決めた定款とも言うべき指針がある。
「分かっているな? 一か月は干渉できない。してはならない。だが、それ以降は……」
権力者は、後ろ暗い事を明言しない。それに仕える者も、主が言葉にしなかった行間を読む能力を必要とされる。
ただし、その場にいる者は全員、勇者の反応が乏しくて気づかなった。
――勇者よ、魔王を倒したら、元の世界に返そう
この言葉に、勇者は首をほんの少し傾け、内心では全く反対の事を考えていた。
勇者は、帰りたいと思っていなかったことに。