DEATH!!
ー この星型の痣、奇跡ですね。 ー
「「「「奇跡??」」」」
沈みゆく夕日をバックに、ビトが頬を赤らめながらゆっくりとズボンを下ろすと、オシリには小汚い星形の痣があった。
なんでも姫の話では、それは奇跡と呼ばれる凄い力を持っている証らしく、先ほど死んだはずのビトが突然目の前に現れたのもその奇跡の力かもしれないという。
まぁこんな世界に来てるんだ、いまさら何を言われても驚きはしないが。
ともあれビトが無事なのなら今はそれがなによりである。
「あ!! ある!! サゴとマギのケツにもあるぞ痣!!」
「いやそういうアルさんのおケツにも星形の痣がありますよ!!」
「まっじっかっ!!」
ー す、すごいですね、奇跡ってこの世界では100万人に一人くらいの割合らしいんですけど……。 ー
ビト如きにあるのなら俺達にだって、そう思って始まった尻の出し合いだったが、予想外の展開に俺達光の四戦士は尻を出したまま踊り狂った。
そんな俺達のケツダンスに、若干引き気味の姫が俺たちの美尻から目を逸らして砂文字を起こす。
100万人に一人か……。
それがここに4人も。
すげーミラクルじゃん!!
「なぁ! どんな力が使えるのか試してみよーぜ!!」
「だな!!」
「そっすね!!」
「へへ! 波動拳とか撃てたら良いなぁ!!」
しかし何も起こらなかった。
ハァ!! と構えた両手を前に突き出しても何かが起こるわけでもなく。
もちろん忍術が使えるわけでもなく。
レイガーンもかめはめ波も出ない。
ゴムみたいに腕が伸びたりしないし、手首から蜘蛛の糸とかも出ない。
派手な魔法が使えるわけでもなく、時を止めることもオラオラも出来なかった。
「だめだ~、何も出ねぇや。」
「そっすね……。」
ー そんな攻撃的な奇跡は聞いたことがないので、多分何も出ないですよ。 ー
「悔しいです!!」
「まったくどうかしてるぜ!!」
ふざけ半分にキレるサゴとマギを見て、姫はクスクスと幸せそうに笑った。
あんなんで笑ってくれるなら俺もっと面白いこと出来るぞ。
笑う姫を見て「てへへ」と頭を掻いて照れている2人に、俺は猛烈に嫉妬した。
「まぁいいや、ひとまず街で姫の服買おうぜ。」
「そうだな、そのままじゃ流石に怪しまれそうだし。」
ー あ、お金。少ないですけど持ってます。 ー
魔女は死んだ、と扱われている可能性があるとはいえ、流石にお尋ね者の姫が着のみ着のままという訳にはいかない。
そんなわけで俺とサゴは、ひとまず姫から服屋の場所を聞いてお金を預かり、賑やかなの街へお買い物。
マギとビトには、護衛も兼ねて姫と共に街の外で待っててもらう事となった。
そして……
「おい、なんだ……この箱。」
「それにマギがいねーぞ。」
「え…えっとー……っす……。」
ー すみません……。 ー
姫の服と食料、雑貨などを買って、小一時間ほどで3人のいるところに戻ると、そこにマギはおらず、代わりにヒト一人入る程の大きな箱がデーンッ! と落ちているのだった。
その箱はドクロマークがでかでかとトップに貼られて、ポップなゴシック体で「DEATH!!」と書かれており、鉄か何かで出来てるのか、叩くとガンガンッ! と音が反響し、中が空洞であることが解る。
そして異常に重たく、4人がかりでも微動だにしない。
なんでもいいけどよ、マギはどこ行ったんだよ……。
ー これが、マギさんです。 ー
「だろうな。」
申し訳なさそうにその箱を指さした姫とビトから事情を聞くと、どうやら俺達が買い物に行ってる間に、ゴッドタンブラザーズと名乗る2人組のゴロツキに絡まれてしまったらしい。
ビトとマギがなんとか応戦するも、凄まじい悪臭のタンを吐かれ絶命してしまったそうだ。
なんだそりゃ、わけ解んねぇ世界だな。
てか治安悪すぎだろ。
「んじゃビトは奇跡の力で蘇って? マギは……箱?」
「みたいっすね。あんま覚えてないっすけど。」
「意味わかんねぇな。」
「ところで姫っち、怪我はしなかったか?」
ー 私は全然大丈夫です。走って余裕で逃げれましたし。 ー
サゴの気遣いに何のロマンスも可愛げもない答えが笑顔で砂の上に刻まれた。
ひとまずこのバカでかい鉄の箱は置いといて、泊まる場所も確保したいし、姫には着替えて貰わないと……。
「あ……そうか。着替えるとこが、ねぇな……。」
「確かに……。」
ー むむ、困りましたね。 ー
「あ、この箱ちょうどいいっすよホラ!!」
ー 嫌です。 ー
嫌がる姫を箱の中に押し込んだ。