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【てんさま番外編】あなざ~ばぁす。 ~姫と光の四戦士~  作者: otaku_lowlife
3.名探偵シャーロック・アケチコ編
15/30

一人舞い上がっていたおバカンスな私。

「ふぃ〜、いいお湯ですねぇ〜。」


 少し遅めのお昼ごはんの後、一日の疲れを癒やすべく、私はアケチコさんと別れてそのままお風呂へ向かいました。

なんとお風呂は内風呂と露天風呂の2つ、当然露天の方へ直行しました。

岩造りの桶の底はなんだかヌメッとしています。

しかも源泉掛け流しと来たもんですっ。

更にお客さんは今私だけ、完全貸し切り状態。

どうですか皆さん、羨ましいでしょう?

これは、テンション最&高ってやつですよねっ!

けど――


「う〜ん、やっぱりこれ、普通にお金取れると思うんですけどねぇ……。」


 そんな気持ちに反して、モヤモヤは募ります。

木々の隙間から溢れる木漏れ日に、鬱蒼と茂る大森林を眺めながら、お屋敷に到着してからの出来事をボーッと考えていました。


「確かに観光するようなところもないですし、立地の悪さは納得ですけど……。宿泊料金は無料。望めば一日3食付き。しかもご飯は絶品グルメ。なお、事前予約は不要。しかもこんな素晴らしいお風呂まで付いていて、この分ならお部屋も相当期待出来そうですけど……。」


 やっぱり怪しい、怪し過ぎますよ。

幾ら何でも美味しすぎます。

こんな美味しい話、絶対罠に違いありません。

けど――


「なんか、罠でもいっかぁ〜。」


 ヌメッとした温泉に顔までドップリと浸かると、何だかもうどうでも良くなってきました。

実は私、凄く流され易い性格なんですよね〜。

家主の方がどうやって生計を立てているのかとか。

これが罠だとして、家主の方は何故こんな事をするのかとか。

もしかして何処かからガッツリ覗かれてるんじゃないかとか。

実は今回泊まりに来てるヒト達は皆グルなんじゃないかとか。

とかとかとかとか、色々考えてましたけど、所詮は憶測の域を出ませんし。


「ま、考えるだけ無駄無駄、だって私は名探偵じゃないんだもん。それよりバカンスだと思って満喫した方が絶対得だよねっ。」


 その後、一人舞い上がっていたおバカンスな私は存分に貸切風呂を堪能し、身も心もポッカポカ。

本来の目的もすっかり忘れて、鼻歌交じりにルンルンでお風呂を上がりました。


「今日のご飯は何だろな〜。……て、あれ?」


 ウキウキで脱衣所に上がり、豪勢な晩御飯を想像しながらタオルで髪を拭いていてると、ふいに背筋が凍りつくのを感じました。

ん……? あ、いえ。別にヒトの気配がとかじゃないんです。そんなのもう怖くて卒倒してますよ。

けど――


「え……? なんで……?」


 バスタオルは脱衣所に備え付けてあります。

使用後は備え付けの回収カゴに入れるタイプなんです。

そしてその回収カゴ、先程来た時には空っぽだったんですけど、今見たら使用済みのタオルが一枚、無造作に投げ入れられていたんです。


「あれ、そういえば……。」


 露天から上がるとき、脱衣所の扉も開いていました。

私、入る前に閉めたと思ったんですけどね……。

それに何故でしょう、私が上がる前から少し脱衣所の床が濡れてたような……。


「あ、ドライヤーが、温かい……。」 


 おかしいです。

使用済みのタオル。濡れていた脱衣所。開いていた扉。そして温かいドライヤー。

これじゃあまるで、私の他にお風呂に誰かが居たみたいじゃないですか……。こ、これって……。


「ミ、ミステリー……ってっ! そんな場合じゃないですよぉっ!」


 自分でもビックリなんですが、一人ツッコミする位には余裕があったみたいです。

或いは混乱と興奮で頭がおかしくなってたか。

或いはおバカンスでテンションが舞い上がってノリツッコミでもしたい気分だったのか。

けどそんな事考えたって私にはちっとも解りません。

だって私、名探偵でも無ければ心理学者でも無いですもん。

ただの平民ですもん。


「ア、アケチコさぁ〜んッ!」


平民の私は髪も乾かさずに半泣きで名探偵の部屋へ駆け込みました。

ドライヤーあるんかい。

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