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マネージャーと後輩ちゃん

地区大会が終わり、月曜日の放課後。

今日も部活の時間になった。


私は珍しく、皆を集めて話をしようとしていた。



「みんな集まって~!」


「んー?どうしたの希未?」


「ちょっと今日は皆に話があって」


「希未先輩からですか?」


「なんか怖いねー」


「えっとね、私、今日からマネージャーになります!」


「…え?」



私が言ったことに驚いたのか、みんなぽけっとしている。

そんなに驚くことかな?



「そのね、この間の試合でね、心がぽきーって折れちゃって。これ以上は上手になれなさそうだから、私は試合に出るのをやめようかなって。自分でもびっくりするぐらい皆の足を引っ張っちゃったしね」


「そんなこと…」


「あとね…最近さ、また下着がきつくなってきたんだ」


「え、今でも十分大きいのに?」


「そう。だからさ、余計にプレーの邪魔になるかもだし、でもどうしようもないし。だからここで選手は引退かなって。真子ちゃんとかの1年生もすぐに今の私より上手になるだろうからね」


「先生には言ったの?」


「うん。先生も好きにしたら良いって」


「そっか…分かった。希未の好きにしたらいいよ。練習とかは付き合ってくれるんでしょ?」


「もちろんだよ。部員も12人しかいないんだしね」


「うん、それならいいよ。私は希未を尊重する」


「うん…ありがと、紫苑ちゃん」



キャプテンが同意してくれたお陰で、皆からも認められたのだった。








部活が終わり、家に帰っていると、真子ちゃんが声を掛けてきた。



「先輩。」


「あ、真子ちゃん。どうしたの?」


「その…ごめんなさい!私が先輩を傷つけてしまいました!」


「え?どうしたの急に?そんなことなかったよ?」


「前の歓迎会の時に、私が先輩の胸のことを言ったから…。」


「あ、アレ?気にしてないって言ったでしょ。それに、いずれは気付いただろうし。早く気付けて良かったぐらいだよ」


「ごめんなさい…ごめんなさい…。」


「えええっ!真子ちゃん!?なんで泣いてるの!?」


「だって、だってぇ…私のせいで、先輩が…。」



涙まで流しているのを見て、私は真子ちゃんを抱きしめた。



「ほら、泣かないで!真子ちゃんは悪くないから!」


「先輩…ずびっ…うぅぅぅ…。」


「ほーら、よしよし。大丈夫だからね~」



それからどれぐらいか分からないけど、真子ちゃんが泣き止むまで私は慰め続けたのだった。







「その…すみません、忘れてください。」



公園のベンチに座って、落ち着いた真子ちゃんと並んで座った。

隣を見ると、目元と顔を真っ赤にした真子ちゃんがいた。

泣きすぎて、恥ずかしくなったらしい。



「まさか真子ちゃんがそこまで気にしていたとは思ってもなかったよ」


「すみません、私が悪いんです…。」


「だから真子ちゃんは悪くないって。気にしないでよ。あまり気にされると、私が悲しくなっちゃうじゃん」


「すみません…。」



真子ちゃんはまだ分かってくれてないみたい。



「もう!真子ちゃんしつこいよ!」



私は勢いよく立ち上がり、座っている真子ちゃんの正面に立った。



「せん、ぱい…?」


「もう怒ったからね!しつこい真子ちゃんはこうしてやる!」



私は真子ちゃんに近付き、頭を私の胸に押し付けた。



「わっ!むぐぐぐっ!」


「大人しくしなさい!しつこい真子ちゃんが悪いんだからね!」



私は真子ちゃんが暴れても、頭を離さなかった。



「真子ちゃんは悪くないって言ってるのになんで分かってくれないの?私が真子ちゃんに文句なんか言ったことないじゃん!もっと私を信じてよ!酷いよ真子ちゃん!」


「むぐぐぐぐっ!」


「うるさい!大人しく私の胸に埋まってなさい!

私はね、真子ちゃんや1年生が今から試合に出る方が、皆のためになると思って、悩んだ末に決めたの!私だって皆と一緒に試合に出たいよ!でも、皆の足を引っ張って、でも皆に慰められて、誰も私に怒らないの!下手なのに、誰も文句を言わないの!私はそっちの方がつらいの!

分かってよ真子ちゃん!」


「むぐぅ…。」


「私より真子ちゃんの方が上手になるだろうから、早くから試合に出てほしくて決めたのに。真子ちゃんや皆のためを思って決めたのに、なんで真子ちゃんが自分を責めるの?それじゃあ、私が悪者になっちゃんじゃん……」


「むぅ…。」



真子ちゃんが私の背中をぽんぽんと叩いた。

私は仕方なく、真子ちゃんを解放してあげた。



「はぁ、はぁ…その、えっと…。」



私は、まだ真子ちゃんが謝ってきそうな顔をしていたから、つい睨んでしまった。



「あ、その…先輩の気持ちは分かりました。ごめ…じゃなくて、えっと、ありがとうございます。」


「私の気持ち、分かってくれた?」


「はい。もう、謝りません。」


「うん、それでいいよ。じゃあ、帰ろっか」


「…分かりました。」



私は真子ちゃんの手を引き、ベンチから立たせた。

そして、二人で家に帰ったのだった。







翌日、真子ちゃんの目の周りは、赤く腫れてるだけじゃなくて、クマができていた。



「真子ちゃんどうしたの?寝れなかった?」


「あ、えっと…はい。」


「どうかしたの?」


「え?あ、それはえっと…先輩のせいです。」


「ふぇ?どゆこと?」


「その、胸が…。」


「え?声が小さくて聞こえないよ?」


「その…気にしないでください!」



真子ちゃんは顔を真っ赤にして逃げてしまった。


んー…昨日怒りすぎたかな?後で謝っておかないと。

希未は妹によく同じ事をしているようです。

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