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兄貴の最期の言葉

作者: 紀希



俺には兄貴が居た。


3つ。歳の離れた兄弟。



兄貴は優秀だった。



俺なんかよりも。


ずっと。



どうして俺じゃなくて、


兄貴だったのか。



それは、



"あの時から"



今に至るまで。



到底。理解する事等、出来なかった。



嫌な事があれば、兄貴は決まって。


「ドライブに行こうぜ」


って、自転車の後ろをポンポンと叩いた。



それは俺の時も、同じだった。


まるで、俺の気持ちが分かるかの様に。


俺は兄貴の口癖を聞かされる。



静かな夜の街を。


2ケツで走った。



兄貴の背中から。


俺は世界を見ていた。



夜の風は気持ち良くて。


考えていた事が馬鹿馬鹿しくなる程に。



そんな時間が楽しかった。



「今、何時だと思ってるの!!」



けれどその度。母親には怒られた。


2人して、玄関で正座させられて。


痺れ始めると、2人して笑い合っていた。



母親が寝ると、父親が見に来て。


いつもの様に、俺達の反省の時間が終わる。



父親「そろそろ寝ろ、


あまり。母さんを心配させるなよ?」


『はーい』



父親は、怒ると怖い。


だからきっと母親が。


先に怒り役を買って出ていたのだと、


今ではそうも、思える。



兄貴の背中を追おうとするも。


必ず。後少しの所で手が届かない。 


だからか、兄貴の後ろ姿が。


ずっと、、瞼に焼き付いている。



親父「馬鹿野郎!!」


兄貴「何だよ!


分からずや!!」


兄貴と親父の怒鳴り声。



原因は分からなかった。


子供の時の喧嘩とは違い。


大人になってからの喧嘩は、


直ぐに仲直り出来るモノでは無かった。



その日の夜。


「ドライブに行こうぜ」


久しぶりの誘い文句だった。



今は本物の車に乗っていて。


助手席を開けられた。



俺は、何だか懐かしかった。



形も大きさも。


全てが違ったが。



あの時の風は。



何だか寂しかった。



兄貴「俺。出て行くわ、、



母さんと父さんの事。


よろしくな?」



それが兄貴との最後のドライブになった。



兄貴が家を出て、1年も経たない間に。


交通事故で、"俺の兄貴"は死んだ。



来年。兄貴はお父さんになる予定だった。



「何やってんだよ、、。



兄貴。。」


警察の調べによると、巻き込まれた人はいなく、


スピードの出し過ぎによる事故だったそうだ。


車は大破し、遺体は直視出来るものではなかった。



親父は自分を責めた。


母親も。



人間は、誰かが死んでからじゃないと。


本当に、気付けない事もある。



それは、きっと。


何処かで、"死ぬハズは無い"のだと。



心の何処かで強く思っているのだろう。



だが。残酷な事に。



誰にも。死ぬ日は分からないのだ。



俺は自分を責めたりはしなかったが。



『俺と兄貴が逆だったら良かったのに』



と。


今でもそう、思う。



今日は兄貴の命日だ。



俺が行くと、墓には既に綺麗な花が供えてあった。



「兄貴、、。



また。ドライブ。



行きたかったぜ、、」



手を合わせ、、深く心に願う。



どうか、兄貴が幸せで居ます様に、、
























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