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貴方も死んで、僕と付き合いませんか?

作者: 小悠田

昼下がりの午後。ここは会社の屋上。

目の前に広がる限りない青い空。

私は今から飛び降りる。


理由は、生きるのに疲れたからだ。

人の目ばかり気にして、自分を偽って、どんなに頑張っても誰を私を認めてくれない。ダメなとこばかりに注目し、いい事をしても当然の如く扱われる。

そんな世界が嫌になった。


(来世ではありのまま生きて行きたい)


私が片足を前に出そうとした時。


「お姉さん、今から死ぬんですか?」


誰かに声をかけられ、咄嗟に足を元の位置に戻した。

気が付かない内にすぐ隣に人が立っていた。

年齢は20代くらいの男性。焦る様子もなく笑顔で私を顔をマジマジと眺める。


「貴方には関係ありません、ほっといてください」


「いやいや、そんな冷たい事言わないで下さいよ、僕は言わば、これから貴方の彼氏になる人物なんですから〜」


「は?なにを言ってるんですか.....??」


私はきっと今やばい人に絡まれているのか。

今日は辞めておこうと思い、戻ろうとした。


「あれ?自殺辞めちゃうんですか?」


「今日は辞めておきます。変な人もいますし。」


「変な人だなんて失礼だなー」


「失礼なんかじゃないです。事実です。

だいだいなんなんですか?私の彼氏が貴方だなんて」


「だって事実ですもん!お姉さんがあのまま自殺してたら、お姉さんは死んでた、だから僕の彼女になれますよね!」


「意味不明なんですけど.....」


「だから〜、僕はもう死んでいるから、お姉さんも死んで幽霊になれば僕と恋人同士にもなれますよねって話ですよ〜」


こいつはなにを言っているんだ。

死んでるなんて有り得ない。

だって私は霊感なんてない。

しかも、この人には足がある。しかもはっきり見えている。幽霊なわけがない。


「人をからかわないでください。

もし幽霊なら証拠でもあるんですか?」


「なら、今から宙に浮いて見せましょう〜!」


宙に浮くなんてそんなの無理に決まってる。

私は疑いの眼差しで彼をみる。

そんな彼は軽くジャンプをした。

するとなんと驚く事に本当に彼は宙に浮いていた。


「...は?...うそ.....」


「嘘じゃないですよ〜、それに僕、貴方に触れられないし、逆にあなたは僕に触れる事は出来ません!」


そう言うと彼は驚いてる私を他所に私の体をするりと通り抜けた。


「ほっ...ほんとに...幽霊.....」


「だから、そうだって言ってるじゃないですか〜」


「でっ...でもなんで私、幽霊が見えるの.....?」


「なんでですかね〜、もしかして、僕が貴方のこと好きだからですかね〜」


「こんな時にふざけないでください」


「ふざけてません。本気ですよ、だから僕、貴方が自殺するのも止めません」


「てか、さっきからなんで私が死ねば貴方の彼氏になることになってるんですか!?」


「だって〜お姉さんが死んだら僕は貴方に触れる事が出来ますもん!同じ幽霊同士なら付き合ってくれますよね?」


「はぁ...?あなたと付き合うとか死んでも無理なんですけど...」


「なんで!?」


「この状況で良く付き合えると思いましたね!」


「こんなにイケメンなのに.....」


「いや。貴方、失礼ですけどイケメンの類には入らないと思いますよ」


「えー!?ショックだなー」


私はこんなバカ幽霊との会話に疲れて、その場に座り込んだ。


「あれ?疲れちゃいました?」


「えぇ...あなたとの会話にね」


「幽霊になれば疲れませんよー、死んでみませんか?」


「連れ去るわけでもなく、死を推進する幽霊なんて初めて聞きましたよ」


「ふふっ、お姉さんの初めてをひとつGETです〜」


「気持ち悪いこと言わないでください」


「もぉー、軽いジョークですよ」


彼は馬鹿なことばり言い続ける。

こんなやつ生きてる時も悩みなんてなかったんだろうな


「ねぇ、あなたはなんで死んだんですか?」


「え〜!そこ気になりますぅ〜?じゃあ当ててみてください!」


「えっ!?めんどくさいですね。えっーと事故死ですか?」


「ぶっぶー!正解は自殺でしたー!」


じ、自殺.....。こんなに楽しそうなのに.....?


「なんか意外でした。.....なんで自殺したんですか?差し支えなければ教えてください」



「んー。お姉さんの事好きなんでいいですよ〜、少し長くなりますが大丈夫ですか?」


「大丈夫です、ありがとうございます」


彼はひとつ咳払いをし語り始めた。


「僕、元々明るい方じゃなかったんです。根暗なタイプで人付き合いも苦手でした。でも、社会人になる前に周りからそんな根暗な性格じゃこの社会やって行けないって言われて.....だから僕は自分を偽って明るくて社交的な自分を演じていたんです」


「そうだったんですか.....」


「でも、そうやって上手くやり過ごしていたんですけど、ある日、会社の人から僕はいつも無理して明るく振舞っている、もっと自分らしくいた方が言いよって言われたんです」



「そんな言葉かけてくれるなんていい人達じゃないですか」


「はい、そうなんですけど.....僕は明るく振舞っているのが僕らしさだと思っていたんです。

確かに最初は無理していましたが、今はそんな事無かったので僕でも変わる事が出来たと思っていたんです.....でも違ったみたいで.....でも本当の自分がどれかも分かんなくって。

そんなこと考えてる内に仕事でもミスが多くなってきて、前までは仕事の出来る人で慕われてたんですけど、気が付けば、会社のお荷物扱いに.....

その時思ったんです。

人ってどんなに功績を積んでも1回のミスで全部無かったことにするんだなって.....。

その後、どんなに仕事頑張っても誰も僕のこと見直してくれることはありませんでした」


今の私に似ていると思った。彼も人目ばかり気にして、気が付けば自分の事が分からなくなってしまっている.....。

誰かに認めて欲しいだけのに、見向きもしてもらえらい。



「.....それで自殺したんですか.....」


「はい、でも僕は後悔しています」


「.......どうしてですか.....??」


「だって、自分らしさなんてそんなもの生きていればいつか見つけられるものだったから。

生きていればいつか必ず誰かが僕を見つけてくれる日が来たかもしれないから。

でも死んだらなにも見つけられない、見つけてもらえない」


確かにそうかもしれない。死ぬ事で後悔したり、後で悔やんだりすることもあるだろう。

でも死ぬことで全てを失った訳では無いと思った。


「死んでからでも見つけられるし、見つけて貰えます、だって今私があなたを見つけたから」


私には、今目の前に彼が見えている。

話してる声も聞こえる。

これは紛れもない真実なのだ。


「!!.....そうですね...

あーあ、あなたとは生きてるうち出会いたかったな〜」


「.....死んだから出会えたんですよ、きっと」


「.....そうかもしれませんね、どうですか?これも何かのご縁、お姉さんも死んで僕と一緒に新しい人生歩んでみますー?」


「お断りします、貴方と一緒にいるくらいなら寿命まで生きます」


「あら残念〜!またひとつ死んだ事に後悔する理由が増えちゃったなー」


「なんで生きてたら付き合ってくれると思ったんですか.....。

まぁ、私と付き合いたいなら、後悔ばかりしてないでさっさと成仏してください、来世がイケメンなら考えてあげますよ?」


「ほんとですかー!?でも僕が成仏するよりも先にお姉さんが死ぬほうが先かもですよ」


「そうなったら、貴方の負けですね、お付き合いは絶対しません」


「あらあら、こうなったら意地でも成仏しなくちゃ!」


「頑張ってください、私が生きてるうち、来世の貴方の見られるのを楽しみにしてますよ」


「じゃあまた来世の僕を見つけてくださいね」


「もちろん、嫌でも見つかりますよ」


「かもですね」


「じゃあ私はこの辺で、もうすぐお昼休みおわっちゃいますから」


「はい、じゃあまた」



私は生きていればいつか必ず今の辛い日々が報われる日々が来ると信じることにした。

そして来世の彼を見つけてあげるために最後まで生き続けることを決意した。

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