第五話 お隣さんはお姉さん気質の後輩
書いている間、肉じゃが作って持ってきてくれるお隣さんがいたらな!と、いつだか友人が言っていたのを思い出しました。
今話もよろしくお願いします。
音那詩シヲリは、有杉高校に通う高校一年生の女の子。
学生寮でひとり暮らしをする彼女はあまり目立つタイプではないものの、毎日の掃除や自炊を欠かさないしっかり人物だ。
彼女に会った人は、学生というより近所に住む気立てのいいお姉さんと言われた方がピンとくるだろう。
そんな彼女は今、部活帰りで道を歩いている。
右肩にかけた学生鞄は自宅学習のための教材が詰まっており、片側に寄せたチャックの金具にはとんぼ玉のキーホルダーがゆらゆら揺れている。
「あっ、もう食材がないんだった。ちゃんと書き留めておかないとダメね」
音那詩シヲリは胸のポケットにしまってあるメモ用紙を取り出すなり、小さく溜息をついた。
リマインダーアプリやアラームといった便利な機能がついたスマホを持っているにも関わらず、アナログのものを好んで使うのも彼女の特徴のひとつと言えるだろう。
「あら、あれは……」
そこで、彼女の注意を引きつけたものがあった。それは同い年くらいのふたり組の男女だったが、音那詩だけでなくすれ違う人全てが思わず振り返るほどに彼らは目立っていた。
「心配するな。お前みたいな容姿の若い子なら、いくらでもよくしてくれるから」
「いやじゃぁあぁあ! 知らないおじさんたちのところなんて嫌じゃぁあああ!」
「バッカお前っ、変な言い方したら俺が白い目で見られるだろうが!」
道行く人の中にはいそいそとその場から逃げるように小走りで去って行くものや、声をかけようか迷っているものもいた。
そんな中、音那詩シヲリは少し戸惑いながらもこのふたり組に事情を尋ねてみることにした。
「あの、大丈夫ですか? 隣に住んでいる杉高の先輩ですよね?」
「……え。あっはい、そうですけど」
これといって特徴のない、というより特徴がなさ過ぎる不自然さがむしろ特徴的な少年が、彼女に答えた。
背景のような少年の後ろでは、昔の絵画とかに描かれていても違和感ないほどに整った顔をした異国風の少女が絡みついて、金属の靴を引きずるままにしている。
「私、隣に住んでる音那詩です。なにか揉めてるようだったので声をかけたんだけど、大丈夫ですか?」
* * * * *
「なんかすみません、上がらせてもらっちゃって」
「いいえ、私もちょうど買い物に行くために一旦帰って着替えようと思っていたところですから」
事の運ぶままに女子の部屋に入ってしまった少年は、緊張で猫背になって身長を低くしていた。
対して彼の後ろに続いてきた武装少女は楽しげで、廊下に置いてあるものなどをキョロキョロと物珍しそうに見ている。
六畳一間の部屋に入ると、音那詩シヲリはてきぱきとした様子で小さなひとり用のたんすから着替えを引っ張り出し、制服をかけるためのハンガーを壁から取っていた。
「それじゃ着替えてきちゃうので、よかったらお茶でも飲んで待っててください」
一瞬廊下の方へ行ったかと思えば、彼女はすぐさまお盆を持って戻ってきた。お盆の上にはお茶のポットといくつかのコップが重ねてある。
彼女が着替えに出て行ってしまい、可愛らしい部屋の中は鎧を纏った少女と、女子部屋なのに妙に背景に馴染んで逆に怖い少年のふたりが残された。
「ほー、この洞窟は広いのう。コウちゃんの穴蔵とは大違いじゃ!」
勇者は随分と感心した様子であちこちに視線を向けていた。
「同じだわ大きさ。あと、コウちゃんってのは非公認だからな……?」
近所のお姉さんの名前には、これしかないっ!というものが前々からあったので、早速起用しました。
暇すぎてこの小説読むくらいしかやる事ない人だけ、名前に隠された意味を解析してみてください。
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