第十七話 これだから人混みは苦手なんだ
帰宅部視点はひとまず今話まで。
よろしくお願いします。
瀬羽月世凪を先頭に、一一と京風峯の帰宅部員は食堂へと向かっていた。
本来なら帰宅部の部室から近い中央棟の購買部へ行った方が時間が節約できるが、ふたりにあの混沌を生き抜けるほどの力はない。
「まったく、男の子なのに甲斐性ないなぁ。あんたたちもう少し筋トレとかしたら?」
瀬羽月になると話が違った。
男勝りな彼女なら、押し合いへし合いの大海原を軽々と乗り越えて大好物の焼きそばを掴んで持って帰るに違いない。
勢い余ってお金を払い忘れないか心配なくらいだ。
「指の筋トレならしてる」
「俺もだ」
「それどっちもゲームしてるだけじゃん……」
瀬羽月が呆れていると、はじめが勝ち誇ったように言った。
「まぁギャルゲーなんかやってるやつとは鍛えられ方が違うがな」
「ほぅ? 俺が大手ゲームサイトの攻略班が丸々一ヶ月かけても攻略しきれなかった、ギャルゲー史上最難関と言われる『集金愛菜 ドキドキスイートスイートマイハニー』の全ルートを七日で炙り出したのを知らないようだな」
「こっちは指どころかマウスで手首も鍛えられてるのだが? それにFPSや音ゲーの激しい操作はノベルゲームのポチポチとは運動量が違う」
「あはは……また底辺の争いが」
ふたりが指の筋肉量と体脂肪率がどうのこうの話しているうちに、三人は目的地に到着した。
「私そこらへんで席取りしてるからさ。ふたりとも、はいこれ」
「「相撲部にでも入ったのか?」」
「それは関取! ってそうじゃなくて、席確保してるから早く行ってき」
それぞれ五百円玉を一枚ずつ渡すなり、瀬羽月はしっしと追い払うようにふたりに昼食を買いに行かせた。
有杉高校の食堂では、どんな料理でも中間のサイズならワンコインで食べられる仕様になっているので、軍資金は十分だった。
ふたりはカレーやハンバーグといったご飯系の料理が売っている窓口へ向かった。
列に並んでいる間に、混雑緩和のためにいくつも並んでいる券売機を眺めながらなににするか相談していると、風峯が思い出したように言った。
「そういえば、カウンター席を取っておいてくれって要望を伝え忘れたな……」
ぎくりと少し肩を震わせ、はじめが答えた。
「ま、まぁあいつなら分かってるだろ」
お盆を取り、それぞれカレーとサバの塩焼きを受け取り口で待っていると、はじめのスマホに電話がかかってきた。
「あ、もしもし?」
「はじめー、麺系の受け取り口の近くで席取れたからねーっ。見つけたら手ぇ振るから!」
電話が切れたタイミングで風峯が尋ねた。
「なんて?」
「麺系の近くの席だって。手を振ってくれるらしい」
無事に昼食を確保して瀬羽月を探し始めたふたりは、ふと嫌な予感がして足を止めた。
「あれ、手振ってるの世凪だよな……?」
「……いやぁ違うだろう。あの陽キャラ軍団がわいわいやってる横の席のだろ? ナンバーズ『女王』の真隣じゃないか。うん、ないない」
そこで瀬羽月のよく通る声がふたりに呼びかけた。
「なにやってるのー? こっちこっちーっ!」
「……世凪だ」
「世凪みたいだな」
げっそりとしたはじめに風峯がおうむ返しに答えるなり、ふたりは顔を見合わせた。
陰キャラに関取メンタルを求めやがって……あの三次元、やっぱり相撲部じゃねぇかッ‼︎‼︎
今日中に書けそうにないので、次話の投稿は明日になりそうです……。
次はついにモブ高生たちと合流!
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