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ローグライクな美少女勇者がモブキャラ高校生の俺を攻略しようとしているのですが  作者: はんぶる
モブ高生は不本意にも脱エキストラを果たす
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第十六話 裏ナンバーズと世話好きな幼馴染

家から出て人混みに入れば、そこら中に物語が転がっている。

現実では他人の生活を覗き見ることはできないけど、この話ならそれができます。

群像劇の本格的スタートです。

「やっちまったな……」


 メタボの(にのまえ)(はじめ)はゲーム中のスマホから一瞬手を離すと、額に浮かんだ汗をタオルハンカチで拭くついでに眼鏡を押し上げた。


「ああ、これは実に由々しき事態だ。どうする?」


 目の下までかかるくしゃくしゃの髪をかき上げて、(かなどめ)風峯(かざね)は尋ねた。


 半分物置状態になっている帰宅部の仮部室。


 黒板に対して間隔を開けて平行に机を並べて座るふたりは、個性の強い陽キャラの集団【ナンバーズ】に対して、【裏ナンバーズ】と呼ばれる陰キャラ組だ。


 彼ら以外にも内向的な人間やサブカルチャーを楽しむ人間はたくさんいるが、裏ナンバーズと呼ばれるのはこのふたりだけ。


 そもそも【ナンバーズ】という名前は、メンバーの苗字が全て数字であることから来ているのだが、不幸なことにこのふたりも苗字が数字なため、陽キャラの彼らと比較されてこのように呼ばれるようになってしまったのだ。


 はじめと風峯のふたり組は昼休みの喧騒から無事に避難したものの、新たな問題に直面して頭を悩ませていた。


「まさか俺のくじ運がここまで悪かったとは……」


 風峯の机の上に並べられたクリアファイルやキーホルダーなどのグッズ。


 その中心には、両の拳を手首のところで合わせ、その上に顔を乗せた『集金(つどがね)愛菜(あいな) 頬杖タイプ』の美少女フィギュア。


 そして同キャラクターが体育着に着替えようとしているところで、振り向いて顔を赤くしている『恥じらいタイプ』の二種類が立っていた。


「いや、頬杖タイプを入手したところまではよかった。問題はその先、当たらなくてくじ買いまくったから、どうせラストワンまであと少しだろと軽はずみに考えたことだ……」


 風峯はポケットからふたつ折り財布を取り出すなり、中身が空っぽであることを再度確認した。


 ちなみにこの財布も黒髪美少女高校生、集金愛菜がプリントされたプライズ品で、風峯はこれをクレーンゲームで獲得するのに二万円溶かしている。


「まぁ欲しいものが手に入っただけいいじゃないか。ワイは確率アップしてるはずの音ゲーのガチャイベで大爆死してるんだから。それよりそこのタオル、余ってるなら一枚くれないか? ワイのタオルはもう飽和状態なんだ」


「ぶっ殺すぞ。貴様の汚い汗をあいあいの麗しき素肌で拭おうなど、万死に値するに決まってるだろう」


「ワイは今日何回殺されればいいんだ。てか素肌って、それマイクロファイバーだし。あ、死んだ……くそ」


 他にもスマホに入れていたFPSのゲームで頭を撃ち抜かれ、一のアバターが倒れ込む。


 溜息をついて、メタボな眼鏡の少年はスマホを机にそっと置いた。


「なにが楽しくて人殺しのゲームなんてするんだか。全くもって理解に苦しむよ」


「いやいやそれは誤解ぞ。人殺しが楽しいんじゃなくて、仲間と助け合いながら戦場を生き抜くという連帯感というか、戦友との交流が楽しいんだよ」


「ふむふむ、成る程……ってお前ソロプレーヤーやないか!」


「るっせ。デュオとかスクワッドとか、複数人でパーティー組むことだってあんだよ」


 そこでふたりの会話を中断するように、帰宅部部室のドアがガラガラと開かれた。


「おまたせーっ! ごめんね、待った?」


 彼らの悩みの種は課金やグッズ入手による金欠だけではない。


 金欠で昼食を抜かすことにあれやこれやと母親のように言ってくるであろうこの女、瀬羽月(せわづき)世凪(せな)のお節介を懸念していたのだ。


「三次元が来たか……」


「まずワシらは世凪ちゃんを待ってるなんてことはないが……『おまたせ』と自分で待たせていることを事実確認しながら、『待った?』と質問するのは矛盾かと」


「えー、これは『今来たとこ』ってフォローするところだよ?」


 全く歓迎されていない空気をぶつけられるも、瀬羽月は少しも(ひる)まない。


 彼女は教室の後ろ半分を占拠している山積みの備品の中から机をひとつ取ってくると、はじめと風峯の間に座った。


 そしていつものようにポケットからヘアピンを取り出すと、前髪を適当に束にと取ってくるくると数回巻き、頭の上でふわっと留めた。


 おでこを露わにするポンパドールのヘアアレンジは、彼女の丸くて平たい、愛嬌(あいきょう)のある顔をパッと明るく見せた。


「あれ、ふたりともお昼は?」


 やはり()かれるか、という風に男子ふたりは顔を見合わせた。


 本当だったら昼食くらい飛ばしても構わないふたりだが、このお節介な幼馴染はそうさせてくれない。


 できることなら彼女から逃げ隠れしたいところだが、それができたらここにはいない。


 クラスで居場所のないふたりにとって、この部室は唯一無二のシェルターなのだ。


「金がない」


「俺もあいあいに全財産を貢いでしまった」


 深々と溜息をついた瀬羽月は、購買で買ってきたお弁当を再び輪ゴムで閉じて立ち上がった。


「仕方ないなぁ……ツケにしとくから、ご飯買いに行くわよ!」

次話はさらに既出のキャラクターが絡みます。

書いてる身ながら、すごく楽しみです笑

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