第十三話 自分の常識は他人の非常識
執筆スピードの低下。なにかサクサク話が書けるコツでもあればいいんだけど……。
第十三話 君の常識は俺らの非常識
「シヲリーっ、コウちゃん連れてきたぞー!」
「あっ、ハイラちゃん! それにコウ先輩も」
わざわざ二年生の階まで迎えに来てくれたようで、廊下で待っていた音那詩は生徒Bを見るなり軽く会釈をした。
「……ど、どうも」
いまだに服の袖を掴まれている少年は挨拶を返すなり、人目を気にして目だけを動かしてあちこちを見回した。
目立ってるぅ……誰か、時を昼休み終了まで飛ばしておくれーっ!
「で、俺はなんで呼び出されたんだっけ?」
逃げるという選択肢はないと判断した生徒Bは歩きながら尋ねた。
厳密には呼び出されたというより、引きずり出されたが正しい。
強行突破過ぎて、モブの人権がしっかりと確立されているのか六法全書で確認したくなるくらいだ。
「ハイラちゃんが、昼食はコウ先輩とって言ってたので……もちろん私も大賛せ」
「コウちゃんは我をもとの世界に返すためなら、なんでも手伝うと言ってたからの! ひとつ目の手伝いは、我のお腹を満たすことじゃ!」
勇者の豪快な声で遮られたせいで音那詩の話は最後まで聞き取れなかったが、要するにふたりは俺を社会的に抹殺したいらしい。
もう既に男子たちの殺気の視線が痛いというのに、噂の美少女転校生と昼食をしろだなんて世界史に出てくる公開処刑か?
しかもひとつ目の手伝いって……。
ふたつ目があること確定してるとか、雲行き怪しいどころか暴風雨注意報出てるだろこれ。
「まぁ飯にするって言っても、購買でなんか買うか食堂行くかの二択しかないけどな……で、どうしたい?」
まぁ食堂が無難だと思うけどな。
というかシンプルに購買付近の人混みには関わりたくない。
俺みたいな自己主張が苦手な船は、ひしめきあう人の海の前では出航以前から既に藻屑同然なのだ。
「ただ座って食事を待つなんてつまらぬ! 我はこの広いダンジョンを探索して、食料を確保するつもりじゃ!」
突拍子もない第三の提案を受け、音那詩シヲリと生徒Bは額に呆れ汗を浮かべた。
まずここはダンジョンじゃない。
「ハイラちゃん、残念だけどそれは無理だと思うよ……?
同感だ。歩き回って食料集めだなんて……さてはこの勇者、実の職業は僧侶か? それは托鉢。
「案ずるには及ばぬ。我は探索が得意だから今に豪勢な食事を見つけ……」
そこで勇者はなにかを発見したようで、一瞬じっと進行方向斜め下を凝視すると、標的に飛びつく捕食者のように走って行った。
「パンを拾った!」
「なんでコロッケパンなんか落ちてんだ……?」
「落とし物にしては珍しいですね」
音那詩シヲリと生徒Bが不思議そうに見ている一方で、満面の笑みを浮かべた勇者はというと。
「ジュギョーとやらで小難しい話を聞かされて、スタミナが減っていたからの。ちょうどいい補給物資じゃ!」
パクッ!
「「えっ……‼︎⁉︎」」
包装のビニールも取らず、コロッケパンを丸呑みにした。
「うーんっ、美味いのう! 他にも食料は……」
そして今度は、他クラス内の机の上で鎮座している出前の蕎麦に目をつけた。
「「それはダメーーー!」」
今にも他人の食事にがっつこうとする勇者を止めようと叫ぶ声は、昼休みの廊下の喧騒を一層賑やかにしたのであった。
落ちているものは絶対に食べないように気をつけてください。
ハイラちゃんは特殊な訓練を受けています。
次話から新たな人物、集団が動き出します……!
この先の話を考えるのに今回は投稿数少なめになりますが、書くのが億劫になったわけではないので、これからもよろしくです。




