第十一話 圧倒的マイナス要因
朝ごはんだけは絶対抜かさない人なので、ひとり暮らしの時の必ずなにかしら自炊してましたね。
朝、アラーム音に設定している音楽の優しいメロディとともに目が覚めた。
ワイシャツに袖を通し、ベルトをしっかりと締める。
冷蔵庫で冷やしてあったお惣菜のサンドウィッチをひとつ取り、適当にスマホのニュース記事を眺めながら畳んだ布団を背中にしてもたれかかった。
マジネクラソフトが上場か。え、蓋又監督が結婚って。
記事の見出しで知っただけの、たいして興味もない会社や有名人の名前を眺め、生徒Bは知ったようなコメントをひとり呟いた。
「この格好はなんだか窮屈じゃの。このリボンはなんのためにあるのじゃ?」
「リボンがあった方が可愛いじゃない? それよりハイラちゃん、鎧は窮屈に入らないの?」
「まぁ初期装備は重量がアレだが、どれも着心地は抜群じゃぞ! 今度試してみるか?」
「うーん、また今度ね」
……幻聴、だよな?
生徒Bは隣の部屋から微かに聞こえてくる声を聞いて、画面をスクロールする手を止めた。
壁の向こうからひしひしと伝わってくるため、鞄を取って玄関へ向かう。
生徒Bはいつも全く同じ時間に登校するのだが、それは学生寮が学校から近いからできるというだけではない。
いつも一番乗りに到着する暇人や、逆に遅刻ギリギリに登校する生徒。
道に広がって歩くために毎度注意される集団や、規則違反であるジャージ登校を試みる猛者と、登校時間に関しても様々な人間がいる。
モブキャラが目立つことなく登校時間の学校の周りの景色に溶け込むためには、それら個性豊かな学生たちの力を借りなければならない。
そしてモブキャラが登校中に景色に馴染む時間帯、すなわち道路の混雑状況がピークを迎えている時に家を出るのが好ましい。
それには少し時間が早めだったが、生徒Bは構わず出かけることにした。
道路で多少存在感が出てしまうこと以上に回避しなければならないものが、もっと言えば人物が近くにいる気がするからだ。
トントンとローファーを地面に打ちつけて履き、ドアを開けた。
ガチャンっ。
同時に隣の部屋から、金髪の少女が出てくる。
「おおっ、コウちゃんではないか! 奇遇じゃの、我もこれからガ」
バタンッ。即座に扉を閉めてひと息つく。
しかし次の瞬間。
生徒Bの玄関扉を無理やり開けようとする力が外から働き、平均的な体格をした少年は呆気なく競り負けた。
「我の眠り状態を解く指輪じゃ。早くこれをつけてガッコーへゆくぞ!」
「撃退したいのは睡魔じゃなくてお前だ」
渋々出ていくとそこには音那詩シヲリもいた。
「おはようございます、コウ先輩。どうです? 制服姿のハイラちゃん」
「ハイラ……?」
なるべく見ないようにしていた方へ目を向けると、そこには有杉高校の夏制服に身を包んだ勇者が立っていた。
真っ白な半袖に赤いリボン。サブバッグをリュックのように背負っているが、荷物が重いのか、制服が後ろに引っ張られて胸が強調されていた。
早い話、いろいろな意味で毒だった。目とか心とか、理性の毒。
それに、こんな男子校生ホイホイみたいなやつが近くにいたら、こっちまで視線が来かねない。
モブキャラの静かな生活を危惧した生徒Bは、一刻も早くこの場から脱出したかった。
「シヲリにあだ名をつけてもらったのじゃ! ハイラント・エアレーザーの名が持つ威厳に周りの人間が恐れ慄いてしまわぬようにな」
「うん、それよりだな……」
勇者の顔の横と、薄い小麦色をしたすらっと長い足の間から覗く長剣のシルエットを見て、生徒Bは呆れた様子で言った。
「その長い鉄剣の方がよっぽど恐ろしいぞ?」
あれ、学校行ってなくね?
まぁ登下校も学校生活のうちだし、いっか(殴




