7 一週間かけて準備してみました
あれから5日たつが、ありがたいことに『エレベーターの貴公子』こと玉山さんとは、あの日以来会っていない。
というのも会社に行く時間を、30分ほど早くしたからだ。
ビルのエレベーターでも、会わずにすんでいて、平穏な日常生活に戻った。
最初は、玄関のドアをそ~と開けて、あたりを確認しながら、会社に行っていたのだが、無駄な心配だったようだ。
彼もお隣さんということで、挨拶したかっただけなのだろう。
ちょっと残念な気もするが、あの顔面偏差値は、体に良くない。
心臓に悪いので、いいとしよう。
敦子もいろいろ考えることが多かったせいで、玉山さんの事を考える暇がなかったのもよかった。
なぜなら、あれから、水を操ることができるようになった理由・原因がわかったのだ。
それからの日々は、忙しかった。
まず月曜日。
玉山さんと会った月曜日、家に帰ってからも、お隣に玉山さんがいるかもと思うだけで、なんだかドキドキしてしまった。
そこで、無我の境地に入るべく、一心にリムーバーでネイルをとって、リラックスするためにネイルオイルでマッサージした。
そして、お風呂に入り、金斗雲もどきを作ろうと思ったが、全くできなかった。
一生懸命集中したのにもかかわらず、水はうんともすんともならなかったのだ。
お風呂につかりながら、考えてみて、ひらめいた。
前に水を操れなくなったのも、ネイルをとった後だった。
しかも塗っていたのは、買ったばかりの桜色のネイル。
もしかしたら、あれが原因ではないだろうか。
そしてお風呂に出た後、もう一度あのネイルを塗ってみた。
それから、キッチンに行くと、また水を操ることができた。
ネイルのボトルを見れば、使ったせいで、当たり前だが、少し減っている。
ということは、水を操れるのは、このボトルのネイルがなくなるまでの期間限定ということになる。
それじゃあもったいないということで、まずこのネイルを持たせようと、ネイルの上に保護液を塗ってみた。
すると、残念なことに、水を操れなくなってしまった。
そして泣く泣くネイルをリムーバーでとった。
火曜日。
同じネイルを買ってみようと、会社の帰り、同じ店でネイルを買った。
一目散に買って帰り、ネイルを塗ってみた。
水は操れなかった。
ネイルを明かりの下にかざしてみたが、中の液は、光らなかった。
結論、あのネイルしかダメだということがわかった。
水曜日。
ネイルの量を多くしようと、ボトルの中のネイルが固まったときに、使ううすめ液とネイルを少し だけお皿に入れて、混ぜて塗ってみた。
水は、操れなかった。
残念なことに、またまたネイルが減ってしまった。
なんだか悔しくて、ついネイルを塗ってしまった。
お風呂の中で、金斗雲もどきを出して、風呂場の中を飛んでみた。
いい気分になった。
木曜日。
人がいない時間に空を飛んでみようと思い立った。
夜中の午前3時に起きるよう、目覚まし時計をセットしておいて、セットしておいた時間に起きた。
お風呂に入った後の、お風呂の水を利用して、金斗雲もどきを作って、ベランダから外に出てみた。
ベランダの窓の鍵をしめれないから困るなと思ったら、金斗雲もどきから、短い紐のような水が出て、窓のカギ代わりに張り付いてくれた。
そこで、金斗雲もどきに乗って、空を飛んでみた。
落ちないか心配したら、金斗雲もどきは、体の周りを手すりで囲んでくれた。
手すりにつかまって、飛んでみる。
一応目立たないように、黒いTシャツに、下も黒いジーパンをはいてみた。
見られると嫌だなあと思って、なるべく上に上昇したら、寒かった。
すぐ降りた。体が冷えて、朝まで眠れなかった。
そして今日は、金曜日。
仕事中に、急に思いついた。
お店で、液の中が光るネイルがあるか、探してみればいいかもということで、仕事が終わってすぐ店に行った。
お店の人に行って、いくつか出してもらい、明かりの下で光るものがないかよ~く見たが、どれも光らなかった。
お店の定員さんに、変な顔をされて終わった。
気を取り直して、その足で、秋葉原のコスプレの店にいった。
昨日空を飛んだ時、寒くて仕方なかったので、防寒用兼目隠し用として黒いマントを買いにいったのだ。
夜飛ぶものといえば、ドラキュラだ。それを参考にしてみた。
ついでに、すぐに、顔がばれないように、ウイッグと伊達メガネを買って帰ろうと思っていた。
黒いマントを買おうと思ってみたのだが、マントの裏が赤かったり、いいなと思ったのは、お値段が高かった。
もったいないなと思い、買うのをやめた。
それから眼鏡屋さんにいって、安いサングラスを買い、ネットで見つけた安いと評判のウイッグの専門店で、ウイッグを買った。
もしかしたら普段にも使えかもと思い、黒髪で肩よりちょっと下まである、ストレートの髪型のものにした。
いい買い物をしたと家に帰って、夕食もそこそこに、ウイッグを付けたら、なんだかホラーに出てくる女の人みたいになってしまった。残念。。。。
ちなみに敦子の今の髪型は、こけしみたいな感じだ。
昨日のように、夜中の2時すぎから、空と飛ぶことにした。
使わないともったいないので、ウイッグをつけて、サングラスを付けた。
寒さ対策として、黒いTシャツの下に、温かいと評判の機能性シャツを着た。
黒いジーパンもはく。
準備は万全だ。
そしてお風呂にお水をはって、手すり付きの金斗雲もどきを作った。
同じく昨日のようにベランダから空を飛ぶ。
まず、夜景がきれいに見えるところにいこうと思い、高層ビル群に行くことにした。
昨日より、ちょっと低い位置を飛んでいるが、風が強い。
必死に手すりにつかまっていると、左右・後ろの手すりが変化して、敦子の体に巻き付いて、シートベルトのようになってくれた。
しかしである。
昨日のように真上に上昇して、すぐ降りた時は、まだ場所がわかってよかった。
今、いざ目的地に行こうにも、方向がわからない。
「スマホ持ってくればよかったぁ」
敦子は、よし!と自分に掛け声をかけ、適当に地上の明かりを目安に、目的地であろう方角に向かったのだった。