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4 空に飛んだ風船をとってあげました

 今日の日曜日も、用事があるわけではなかったので、いろいろ整理整頓することにした。

 今日整理するのは、買ってあるネイルたちだ。

 敦子は、ネイルを塗って楽しんだり、ネイルの色を見て楽しむのが好きだ。



 今思えば、高校生ぐらいの時に友達から言われたことが、この趣味につながったのかもしれない。


 「あっちゃんの爪って形いいねえ。きれい」


 「ほんと、きれいな形の爪してるね。マニキュア塗ったらきれい!」

 顔も平凡、性格も内気な敦子にとって、みんなからほめられたそれは、ご褒美とも言ってもいいくらいにうれしい言葉だった。


 それから敦子のネイル集めが、始まったのかもしれない。


 学校に行っていた頃は、おこずかいの中でやりくりしなくてはいけなかったので、そう買えなかったのだが、働いている今は、あの頃より好きなものを買える。

 とはいえ、働いているので、あまり奇抜な色や目立つ色は、使いたくない。

 そこで最近は、爪のためのネイルオイルにも凝っている。いろいろな香りを楽しめるし、リラックスもできる。



 見事にたまってしまったネイルやネイルオイルなどを、無造作に入れてあった箱から取り出す。

 以前買ってあった仕切り板のついた箱に、色を見ながら、並べていく。


 金曜日に買ったネイルを、取り上げた時だった。


 キラッ___


 この前のように、また光った気がした。


 こんどは、そのネイルをもって、窓際に行ってネイルを掲げて、よく見た。

 ビンの中を揺らして、中の液体をよく見たが、何も光るものは、みえない。

 

 「金曜日も、光った気がしたんだけどなあ。もしかしたら、これつけてみてっていってるのかなあ」


 敦子は、冗談で言ってみたが、そのネイルをテーブルに置いた。


 他のネイルたちを整理し終えた後、敦子はまた塗ることにした。


 「この色なら、目立たないし、明日会社だけど塗っていってもいいかな」


 そして今度は、手の爪だけでなく、足の爪にも塗ってみた。


 塗ったあと、窓ぎわで手をかざしてみた。

 きれいな薄い桜色だが、落ち着いた色合いのせいか、あまり目立たなそうだ。

 敦子は、満足した。


 お昼は、スーパーで昨日買ってきたパンを、簡単に卵ときゅうりでサンドイッチにして、食べた。

 お湯を沸かして、ドリップコーヒーも入れた。

 ちょっとした手間だけれど、それだけですこ~し心が潤う気がするから不思議だ。




 午後は、何をしようかと考えたが、散歩兼本屋さんに行くことにした。


 日曜日の午後は、明日月曜日の事を考えると、理由もないのに気分が沈むので、ちょっと体を動かすのがいい。

 日傘を差せば、そこまで熱くはないだろう。



 歩いて10分ほどのところに大きな公園がある。大きな池や芝生広場があって、休日ともなると人が大勢来るのだ。

 のんびり公園の中にある、池の周りの遊歩道を歩いていると、どこかでもらったのだろう。


 青い風船を持った2歳ぐらいの女の子とお母さんが、敦子の前を歩いていた。


 敦子の前5メートルくらい前を、歩いていただろうか。

 女の子が、石か何かにつまずいて転んでしまった。

 お母さんは、あわてて女の子を起き上がらせるが、女の子は、痛かったからだろう。

 お母さんにしがみついて、抱っこをねだった。

 痛さで風船を持っていたことを、忘れてしまったのだろう。


 風船が、女の子の手から離れて、ふわりと浮きあがった。


 お母さんが、慌てて気がつくが、とても届かない。


 敦子も、ちょうどその様子を、後ろから見ていたので、一瞬焦ってしまった。

 お母さんや女の子と同じように、空に昇っていく風船を眺めた。

 どんどん空高く上がっちゃう!と思った時だった。


 えっ___! 



 敦子には、その時、池のある方向から、何か細くて白い縄のようなものが、出てきたように見えた。


 それが、風船の糸をとらえた。

 まるで何がに引っ張られるように、風船が下に降りてきた。

 そして風船についていたひもが、また女の子の前に来た。

 女の子は、無意識につかんだ。


 風船をひっぱった何かは、細い縄のように見えて、後ろの敦子からは、ちょうど太陽の光で、きらり光って見えた。


 そのなにかは、太陽の光できらきら光りながら、池のほうに戻っていったように見えた。


 すると縄のように見えたものが通った後には、虹が出た。


 あたりにいた人たちは、びっくりしてそれを見ている。

 あの女の子もお母さんも。


 まるで風船の糸から、虹が出ているように見えるのだから。


 敦子も呆然と見てしまった。


 ちょうどこちらに向かって歩いて人たちであろう。

 若いカップルの一人が、スマホで撮影しようとした。


 すると、まるで跡を残したくないぞとばかりに、消えてしまったのだ。


 周りから思わずため息が漏れた。


 敦子も残念に思いながら、けれどなんとなくドキドキしながら、本屋に行くのもやめて、自宅に戻ることにした。


 敦子は、帰る道々、考えた。

 あれは、池から出てきたようだ。もしかしたら水だったりして?

 ありえない想像に、まさかねと思いつつも金曜日に起きた出来事を思い出したのだった。



 玄関に入ったちょうどそのとき、隣の玄関のドアを開ける音がした。


 残念! お隣さんの顔見たかったなと思ったが、また開ける勇気はないので、部屋に入った敦子だった。


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