40 今回ははっきりした夢でした
今更ですが、プロローグを追加しました
卒業アルバムを見たり、みな思い思いにコーヒーや紅茶などの飲み物を飲んでいたが、あらかた飲んでしまったので食事会はお開きとなった。
玄関まで皆に見送られて、玉山と敦子は大家さんの家を出た。
階段をのぼりながら、玉山が言った。
「 今日は、つき合わせちゃってごめんね。 」
「いえっ、おいしいお料理もいただきましたし、いろいろお話を聞かせていただいて楽しかったですよ。 」
敦子が心から言うと、玉山はずいぶん安心したようだった。
「 それにしてもびっくりしたよ。親父やおふくろもいるなんてさ。 」
本当にサプライズだったようだ。
敦子の部屋の前に来た。
「 また連絡するよ。お休み。 」
敦子が自分の部屋に入るのを見届けて言った。
そうして玉山は、自分の部屋に戻っていった。
敦子は、自分の部屋に入って、ほっとした。
どうやらずいぶん緊張していたようだ。
楽しかったが、やはり玉山のご両親もいたので、自分でも気づかないうちに気を張っていたらしい。
明日は会社なので、早々にお風呂に入り、やっとのんびりすることができた。
その夜は、またあの夢を見た。
『 あつっ、待ってたぞ。今日は遅かったな。 』
『 舞の練習をしてたの。早くここへ来ようと思ってたら、気が入ってないって怒られちゃった。 』
自分のようで自分でない何者かが、滝の前に立っている人にしゃべっている。
『 それにしてもりゅうちゃん、全然体大きくならないね。もう私の方が大きいよ。 』
『 ほんとだ、あつ急に大きくなったな。じゃあこれでどうだ。 』
目の前の人というより子供が、急に光ってまぶしくなったかと思えば、光が消えたそのあとには、大きくなった人が立っていた。
『 すご~い。今度は、また私のほうが小さくなっちゃった。やっぱりさっきの小さい姿に戻ってよ。 』
『 いやだ。我は、この姿が気に入った。あつも早く大きくなれ。 』
『 急に大きくなれるわけないじゃん。りゅうちゃんじゃあるまいし。ふん。 』
『 そうすねるでない。昔に比べればずいぶん大きくなったものよ。 』
りゅうちゃんと呼ばれた人が、あつと呼ばれている子の頭を優しくなでた。
『 へっへっ、あつもっと大きくなるもん。 』
ふと滝の下の池に映る姿が目に入った。着物を着た女の子が水に映っている。
水に映った顔は、目がぱっちりとしたきれいな顔の女の子だった。
そこで、目が覚めた。
時計を確認すれば、ちょうど起きる時間だった。
今日はずいぶんはっきりした夢だった。しかも光って大きくなった人の顔は、昨日アルバムで見た玉山の顔に似ていた。
声まで玉山に似ていた。
「 やっぱり玉山さんに会ったからかなあ。変な夢。 」
また月曜日が来た。
いつもの日常が始まった。
お昼には、いつもの同期組奈美と結衣、そして敦子の三人でランチに出かけた。
三人でランチを食べていると同期の結衣が言った。
「 ねえ知ってる? 今度うちの会社の専務の娘さんが、途中入社してくるんだって。 」
「 へえ~、ずいぶん変な時に入ってくるのね。 」
奈美が言うと、結衣が訳知り顔で言った。
「 それがね、今度来る子、それこそうちのビルが入っている商社のアメリカ支社にいたらしいんだけど、こちらに戻ってくるらしいのよ。会社を辞めてまで戻ってくるって何かあったのかしらね。 」
「 もしかして玉山さんを追いかけてきたとか? 」
奈美が言うと結衣がまさしくそうだといわんばかりにうなずいた。
「 それそれ、玉山さんも半年前までアメリカにいたんでしょ。もしかしなくてもそうかもっていう噂よ。 」
なぜか奈美と結衣が敦子をじっと見ている。
「 あっちゃん何か知ってる? 」
「 ううん、玉山さんがアメリカから帰ってきたっていうのも今聞いた。 」
「 そうなの~? しっかりしてよ。 」
奈美と結衣が手でこぶしを作って、敦子の顔の前に持ってきている。
「 今度入社してくる人、どの部署にくるのかなあ。 」
敦子は、一番気になっていたことを聞いた。
「 企画みたいよ。他の子から聞いたんだけど。 」
結衣が答えた。
同じ部署じゃなくてよかったと思った敦子だった。
ひとり黙々と料理を食べる敦子をよそに、後の二人がまだ噂話をしていた。
おかげでランチが終わって帰るときには、時間が押してしまい走ってビルのロビーへと戻っていくこととなった。
やっとのことでビルのロビーに着いて、エレベーターを待っていると、右手の玄関ホールをちょうど玉山が一人歩いているのが目に入った。
敦子が、玉山さんだと思った時だった。
どこからか大きな声がした。
「 玉山さ~ん。 」
玉山が声の方を見ると、後ろの方から一人の女性が走ってきた。
「 小池さん。久しぶりだね。 」
どうやら玉山の知り合いだったらしい。
「 私、今度からこのビルで働くんですよ。またよろしくお願いしますね。 」
「 支社から戻ってきたの? 」
「 いえっ、このビルの中にある会社に再就職したんです。 」
「 そうなの? 」
チ______ン。
ちょっとびっくりした玉山の声が聞こえたところで、エレベーターが待っている敦子たちのところで停まった。
敦子が乗り込むときに、ちょうど玉山と先ほどの声の主の女性の顔が見えた。
声の顔の主は、あの夢に出てくる女の人と同じ顔をしていた。
そして玉山も、穏やかな優しいまなざしでその女の人を見ていた。
エレベーターの中で、結衣が言った。
「 さっきの子じゃない?今度うちに入社する子って。確か専務の苗字って小池じゃなかった? 」
「 そうかも~。ずいぶんかわいらしい子だったわね。 」
2人は、敦子のほうをちらっと見ていった。
敦子はといえば、先ほど玉山が女の人に見せていたあの顔を思い出していて、奈美や結衣が言っている言葉が一つも頭の中に入ってこなかった。
まるで夢の中で話をしていたふたりみたいだと思った敦子だった。




