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30 修羅場にはなりませんでした

敦子は、見知らぬ八頭身美人の後をついていくことにした。


カフェに入る。


八頭身美人は、どんどん進んでいき敦子の入っているビルのが見渡せる窓際に座った。


さすが八頭身美人だけあって、コンパスがながいためか歩くのが速い。


敦子も小走りで追いかけていき、八頭身美人の前の席に着いた。


「 ごめんなさいね。 」


一応謝ってくれたが、なんだか誠意が感じられない謝罪だった。


店員さんが水を持ってきてくれて、ふたりともコーヒーを注文した。


「 あのう、玉山さんの事って何でしょう。 」


敦子は、玉山の名前が出てから気になって仕方なかったので、まず聞いた。


「 私ね、玉山さんとお付き合いしていたことがあるの。 」


敦子の思った通りだった。過去形になってたので、今は付き合ってはいないのだろう。


しかしさすがに八頭身美人だけあって、敦子のような女性から見てもすごくきれいな人だと思う。


玉山さんの隣に並んでも少しもかすまない。


それどころか、お互いをお互いが引き立てあって、余計に美男美女に見えることだろう。


そう考えると敦子は、急になんだか悲しくなった。


そんな思いが顔に出ていたのであろうか。


「 ちっ、違うのよ。今は付き合ってないし、これからも付き合おうとは思っていないのよ。 」


なぜか彼女は、慌てて敦子に言ってきた。


「 あなたこそ、玉山さんとは、お付き合いしてるの? まあ恋愛マスターの私が見れば、すぐわかるけどたぶんまだでしょ。食事をしたぐらいでしょ。 」


敦子の驚きが顔に出ていたのを見て、また彼女は言った。


「 私は今、別な人とお付き合いしてるの。だから別に玉山さんとまたよりを戻そうなんて思ってないわ。

ただね、あなた玉山さんとお付き合いするのは、やめておきなさい。これは、忠告よ! 」


今度も敦子の顔に、疑問符でも浮かんでいたのだろうか。


彼女は、テーブルに身をのりだして、敦子にも手で前に来るように言った。


そして周りを一回確認して、安心してから小声で話し出した。


「 いい? これは本当の事よ。 彼は、()()()なのよ。 」


今度ばかりは敦子は、思い切り声に出してしまった。


「 えっ________。 」


彼女は、敦子が出した大きな声に驚いて、周囲を見回し、自分の口に人差し指を持ってきた。


「 しっ_。声が大きいわよ。 」


「 ごめんなさい。 」


さすがに敦子も声を落として誤った。


「 私の言い方が悪かったわね。どうしてそう思ったのか、話すわね。 」


彼女は、話し始めた。


彼女曰く、彼女は、小さい時からモテていた。

しかしなかなか自分につりあう男性がいないので、困っていた。


高校一年生になったある日、電車に乗ると、彼玉山を見つけた。

玉山も彼女が通う高校の近くの高校に通っているらしい。

そこで、彼女は、玉山の事を調べて、つてを頼って、告白することにした。告白すれば、すぐ付き合うことになるかと思っていたが、なんと相手は、断ってきたらしい。

そこで、彼女は奮起して、いつも彼の通う高校の前で待っていたり、当時彼は男子校だったので、そこにいとこが通っているという自分と同じ高校の子を見つけ出し、自分をアピールしてもらったそうだ。


その頑張りがきいたのか、やっとデートすることになった。デートと言っても一緒に映画を見るだけだったが。



時々自分が当時どれだけモテたのかなど、自慢が入るので、もっと話は長かったが、敦子はそれと先ほどの宇宙人とどう結びつくのかわからなかった。


「 それでさっきの発言とどう関係あるんですか。 」


まだ延々と話されるのかと思い、敦子は先を急がせた。


「 その映画に行った帰りにね、事件があったのよ。 」


「 事件ですか? 」


「 そう、あれは、映画を見た帰りね。映画館を出たら、あたりが暗くなっていてね。見た映画も恋愛ものだったせいだと思うんだけど、私彼と手をつなぎたくなっちゃって。彼の手を自分につないだの。

そしたら、彼ったら私の手を振りほどくのよ。いやそうに。 」


その時の思い出が、よみがえったのか、彼女は少し眉間にしわを寄せていた。


「 それでね、私も驚いちゃって。だって私を拒否したのよ。ありえないでしょ。

それでむっとして彼の顔を見たら........()()()()()()に光っていたの。

あたりが薄暗かったから、よけいに目立ったのね。

びっくりして後ずさって、また彼の目を見たら、黒く戻っていたけど、ほんとに()()()()だったのよ。

私もう何が何だかわからなくて、彼をおいて逃げ出しちゃったの。 」


敦子は、この話を聞いてすぐ夢の事を思い出した。


敦子が、急に何か考えるような顔をしたせいだろう。


彼女は、畳みかけるように言った。


「 気のせいじゃないわよ。ほんとの事よ。あなた宇宙人の映画見たことない? そういう映画があったのよ。

それからは、彼に一切近づかなくなったから、周りには不審に思われたけど、絶対に誰にも言わなかったの。だって言ったら殺されちゃうかもしれないでしょ。私が。 」


「 じゃあどうして私に教えてくれたんですか。 」


そこで彼女は、ちょっと申し訳なさそうな顔をした。


「だって、あなた見た目普通でしょ。それなのに彼が、見たこともない顔をするもんだから、何かわけがあるのかと思って。例えば、連れていかれるとかね。 」


「 連れていかれるって、宇宙にですか? 」


「 そうそう彼の故郷とかね。もしかして人体実験とか。 」


敦子は、なんだか気が抜けてしまった。

敦子にとって宇宙人と言ったら、大人二人に手をつながれて真ん中にいる小さな小人で、目が大きくて口が小さい逆三角形の顔を持ったものだと思っていたのだ。


一気に話した彼女は、敦子の様子も気に留めず、のどが渇いたのか、のんびりとコーヒーを飲んでいる。


その時彼女のスマホが鳴った。


「 あっ、修二さんだわ。 」


そういって、ものすごい早業で、修二さんという人に連絡していた。


「 私今度結婚して、海外に行くの。今日は、最後のあいさつ回りにちょうどあのビルに立ち寄ったのよ。

私広告代理店に勤めているの。あのビルで玉山さんに久しぶりに会った時には、ほんとびっくりしたわ。

けどあのひと、私ってわからなかったのよね。

私が、あまりにきれいになったからかしら。 」


彼女は、最後の言葉を真顔で言った。




ただ最後の言葉を言った時には、背筋を伸ばして手を口に当てて、高笑いしている姿が、思い浮かんでしまった敦子だった。

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