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28 勘違いされました

また夢を見た。


滝の前で待っている自分のところへ、いつものように滝の中から竜が出てきて人になった。

自分のところへその人が歩いてくる。


いつもならそこで目が覚めるのだが、今日は違った。


自分の目の前に立った。


いつもなら顔の部分が、霞がかかったようにぼんやりしている。


しかし今日は、はっきりと相手の顔が見えた。


なぜか玉山に似ている。


『 あつ、どこへ行っていた。 』


声まで似ている。また相手の顔を見れば、目が金色だった。


( 目が金色? )




そう思ったとたん目が覚めた。


焦って時計を見れば、まだ朝の4時すぎだった。


今日は日曜日だと思ったとたん、また眠くなって、お布団に入ったままでいたら、いつのまにか寝ていたようで、次に気が付いた時には、朝の6時になっていた。


起きてカーテンを開けると、今日も朝日がまぶしかった。


起きて朝ご飯を食べ、洗濯をした。


今日は、掃除もしっかりとやった。


ただ掃除しながらも、見た夢の事をついつい思い出していた。


「 今日は、声まで聞いちゃったな。なんだか顔も似ているけど声まで似ていた。やっぱり、玉山さんを意識しているせいなのかなあ。 」


余分なことを考えないように、集中して掃除をしようとしたのに、いつの間にかあの夢の事、玉山さんの事を考えている自分がいた。


「 玉山さんは、私の事少しは思い出してくれているのかなあ。たぶんないんだろうな。 」


そう考えたら、なぜか少しむなしくなった。


お昼も、冷蔵庫にあるものを食べて、午後から買い物に行くことにした。


買い物に行く前に、いくつか献立の参考になるかと思い、ネットを見た。


買い物の参考に見たはずが、気が付けば、ほかの記事を見ており、気が付けば2時間近くたっていた。


「 早くいかなくっちゃ。先に本屋さんに行こう。 」


先ほどの記事の中に、付録に財布が付いている雑誌を見つけたのだ。


買った本を入れるべくちょっと大きめのリュックを背負い出かけた。


外は、まだ暑かったが、吹く風は涼しくなっていて、つい昨日のことを思い出してしまった。


手をつないだことも思い出してしまい、つい立ち止まってつないだ方の手を見ていると、声をかけられた。


「 滝村さ~ん。 」


声の方を見れば、大家さんが、すぐそばに立っていた。


「 こんにちは。 」


慌てて敦子が、返事をすれば大家さんが言った。


「 どうしたの。具合でも悪いの。 」


どうやら心配してきてくれたようだった。


敦子が、いきなり立ち止まって、手を見つめていろいろ回想していた姿が、はたから見れば具合が悪そうに見えたに違いない。


「 すみません。ちょっと午前中に掃除をした時に手をひねったみたいで。痛い気がして。 」


「 そうなの。大丈夫? 」


人のいい大家さんが、心配顔でいってくれる。


「 大丈夫です。ご心配おかけしました。今は、なんともないみたいです。 」


まさか玉山とのことをいろいろ思い出していましたなど、とてもじゃないが本当のことなど言えるはずがないので、もう大丈夫だと力説することになってしまった。


「 よかったわ。大丈夫なのね。 」


どうやら敦子の言い訳を信用してくれたようである。


「 あっ、そうそう竜也と仲良くしてくれているようでありがとう。竜也ってあの顔でしょ。なのに昔から女の子が苦手でね。私も妹も竜也から滝村さんと仲良くしてもらってるって聞いて、びっくりしたのよ。ほんとよかったわ。これからも竜也の事よろしくね。 」


そういって大家さんは、去っていった。


敦子は、竜也が、敦子の事をなんといっているのかすごく気になったが、とてもじゃないが聞くことができなかった。


敦子は、気持ちを切り替えて本屋さんに向かった。


本屋さんで、ほしかった付録付き雑誌を買えて満足した敦子は、雑誌を背中のリュックにしまい、今度は、スーパーに向かった。


いろいろ買い物を終えて、スーパーを出た時には、あたりはすっかりオレンジ色に染まっていた。

ついついまた昨日の事を思い出してしまい、一人気恥ずかしくなってしまった敦子だった。


アパートに急いで戻り、いろいろ作業を終えた時には、すっかり夜になっていた。

忙しかった分、玉山の事を思い出さなくてよかった。


お風呂にゆっくりと入り、のんびりテレビを見ていると、スマホが鳴った。


慌てて電話に出ると、声の主が、玉山ではなくて少しだけ、がっくりした敦子だった。


「 あっちゃ~ん、元気? 」


電話は、大学からの友人酒井恵美からだった。


「 元気だよ。えみちゃんは最近どう? 」


「 元気。あっちゃん、彼氏できた? 」


「 ・・・いないよ。えみちゃんは? 」


いつもあいさつ代わりに言うセリフである。


敦子は、彼氏という言葉を聞いて玉山の事を思い出したが、ちょっと言えなかった。


「 全然! ねえ今週金曜日うちでお泊り会しない? くにちゃんも誘って。 」


えみは、敦子のちょっとの間を気にもしないで要件を言ってきた。きっと気づかなかったのだろう。


「 いくいく! くにちゃんこれるの? 」


「 くにちゃん話があるみたいでね。 」


くにちゃんとは、大学時代からの友人横橋久仁子の事で、たしか付き合って一年になる彼氏がいたはずである。


「 時間なんか詳しくは、また連絡するね。待ち合わせしてデパ地下でいろいろ買おうね。 」


そういって電話が切れた。


一瞬玉山からまた誘われるかなあと考えもしたが、予定があるほうが、無駄にあれこれ考えなくていいかもしれない。




いつもなら日曜日の夜は、少し憂鬱になるのだが、デパ地下で何買おうといろいろ考えているうちに、楽しい気持ちになった敦子だった。

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