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26 芸術の秋を堪能しました

朝早く起きた敦子は、まず目の下にクマがないか確認した。


「 よかった~、ないぞ。 」


昨日買ったクリームを塗って寝たせいか、お肌も潤っている気がする。

コスパもいいし、また買おうと決意した。


朝食を食べ、洗濯・掃除を軽くすませて、身支度を整える。


時間は、まだ予定より一時間も早い。


今日行く美術館のホームページを見た。

軽く学習しておく。あとお昼はどこがいいかなとうきうき想像しながら見ていたら、もう時間になっていた。


「 あっ、マズイ。 」


急いで、鏡を見ておかしくないか確認して、玄関を出た。


急いでインターホンを押す。


いつものさわやかな姿で、玉村が出てきた。


「 こんにちは。 」


敦子もあわてて返事をした。


見慣れたはずの玉村の笑みが、なんだかまぶしかった。


「 じゃあ行きましょうか。 」


「 はい、今日はよろしくお願いします。 」


「 いやこちらこそ。今日は車で行ってもいい? 」


2人で駐車場にむかった。


休みのせいか、道路はまだすいていて、スムーズに美術館のそばに着いた。


ひとつのビルの地下駐車場に入っていく。


このビルのオーナーが、この前食事したレストランの彼の父親だということで、駐車させてもらうことにしたらしい。


そこから歩いて美術館まで行った。


美術館では、玉山がチケットを買ってあった。


「 ありがとうございます。後でお支払いしますね。 」


「 いや、今日はこの前のおいしい食事のお礼だから。 」


中に入ると、開館間もなくのためか割とすいていた。のんびり二人で鑑賞した。


敦子がついのんびり見てしまっていても、玉山はさりげなく合わせてくれている。

絵を見るだけで、話も全然なかったが、気にならないぐらい自然で、敦子も気を遣わずにすんだ。


ただ当たり前というか、一度玉山の顔を見てしまった見た人たちが、絵より玉山が気になって仕方ないのか、ちらちらと見ているのが、わかっておもしろかった。

とうの玉山は、周りの視線など気にも留めずに、敦子のほうを向いて時々微笑んでくれるのが、なんとも敦子にとって気恥ずかしいことだった。


それを見ていた周りの人たちも、そうした紳士的な玉山の姿に、またまた目を奪われているようだった。


こうして芸術の秋にふさわしく、絵画の鑑賞を楽しんだ敦子だった。




絵を見終わって、出口付近にあるショップを見ることにした。


敦子は、ふとはがきコーナーを見た。


湖の後ろに滝がある風景画があった。

もちろんそれは、外国のどこかの風景で、敦子の実家のそばの絵ではないが、なんとなく似ているように見えてつい手に取って眺めてしまった。


玉山ものぞき込んできた。


「 きれいな絵だね。 」


まるで耳元で言われたように感じるぐらいに近く感じて、敦子はつい半歩後ろに下がってしまった。

おまけに顔もほてってしまった。


大げさなリアクションをしてしまった敦子は、はっと玉山を見たが、玉山自身気にしていないようで、こちらに笑顔を向けて言った。


「 僕もこれ気に入ったから、二枚買ってくるよ。 」


そう言って敦子の見ていたはがきともう一枚を手に取ってレジに向かった。


レジの人に説明したからか、一枚ずつ袋に入れてあるはがきの一つを敦子に渡してきた。


「 ありがとうございます。 」


敦子は、大事そうにバッグの中にしまった。


その様子を優しい目で見ている玉山に気が付かなかった敦子だった。


2人は、美術館を出て、のんびりと公園を歩いた。


今日は、秋らしいさわやかな風が吹いていて気持ちがよかった。


周りにもいくつかカップルがいて、敦子はつい自分たちもカップルに見えるのかなあなんて想像してしまった。


ただすれ違うカップル皆が、玉山を見るとすごく凝視していて、特に女性の視線がすごかった。

特に女性の中には、玉山を見た後敦子を見て、なぜこの人がという挑むような視線で見る人もいて、少しだけ嫌な気持ちになった時もあった。


( そういえばこの前玉山さんと一緒にいた女の人、どういう関係なんだろう。 )


女性たちの視線をみてつい思い出してしまった。


しかし玉山は、そういった女性の視線などどこ吹く風で、全然周りを気にしていないのが、敦子にとって救いだった。

これできれいな人が、前を歩いていて、玉山がそちらに気を取られていたら、敦子は悲しくなっていただろう。


そして公園を散策しながら、敦子は昨日わかったことを玉山に話した。

あのネイルボトルにかかわっていた人たちが、自分と同じ同郷の人達だったことなどだ。


玉山は、時々うなずきながら真剣に聞いてくれた。


そうこうしているうちに、気が付けば有名なホテルの前に来ていた。


「 ここで、お昼食べよう。ここの創作フレンチがおすすめらしいんだ。受け売りだけど。ここ利用したことある? 」


「 いえっ、行ったことないです。 」


「 じゃあよかった。 」


ふたりで入っていた。

店は、最上階で見晴らしがよかった。


創作フレンチというだけで、見た目も楽しませてくれて、味の方もおすすめだけあっておいしかった。


ただ、二人で景色を楽しんでいたときに、玉山が言った言葉で、思い切りむせてしまったのは困った。


「 滝村さんは、このあたりの夜景も楽しんだのかな。 ここも夜は、夜景がきれいだよね。 」


それから玉山は言った。


「 滝村さんの故郷にある神社や湖や滝、見てみたいなあ。いつかドライブに行こう。 」



敦子も思った。いつかが来ればいいなと。


ただ玉山を連れていくのはいいけれど、みんなに見られないかなあ、それが心配だった敦子だった。

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