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16 実家に帰りました

三連休のわりに道路は、すいていた。


順調に車を走らせることができ、敦子と聡の二人は、お昼前には、実家に着いた。


家の玄関に入ると、母と犬のしろが迎えてくれた。

特に犬のしろの歓迎は、すごいものがあった。

このしろは、今11歳の小型犬チワワだ。


敦子が、高校生の時にうちにやってきた。

大学で家を出るまで、子犬のころ毎日お世話をしてあげたせいか、敦子にはすごくなついている。


足元にはりついているしろと一緒に、リビングに行く。


「 これっ、お土産。一応テレビ番組でやっていた評判のもの。 」


「 うわぁ、おいしそう~。そうそうこれテレビでやってたわねえ。 」



やはりというべきか母親は、敦子が買ってきたお土産が入った紙袋から、喜々として箱を取り出しては、一人浮かれていた。


「 ねえちゃん、大木さんがねえちゃんが帰ってきたら、連絡ほしいってさ。 」


「 そう~、連絡してみる。 」


大木さんとは、大木美代子の事で、敦子の小さいころからの幼馴染であり、聡と同じ役場に勤めている。

二年前に同じ同僚と結婚しており、子供が一人いる。

翔也という名前の子供で、一歳になったばかりだ。


夏休みにも会ったばかりだったので、今回は特に連絡していなかったのだが、連絡してみるのもいいだろうと思った。


「 母さん、一個お土産とっておいて。美代ちゃんと会うかもしれないから。 」


「 わかったわ。どれとっておけばいい? 」


「 夏休みにも買ってきたこれにする。いい? 」


「 いいわよ。そうそうお昼よね。支度するわね。 」


そういって、お昼の準備をしに行った。


敦子は、父親の気配がしないので、聡に聞いた。


「 お父さんは~? 」


「 親父なら、祭りの準備。たぶん朝からいったんじゃない? 」


「 そうか、祭り好きだもんね。 」


結局父親は、帰ってこずに、母と聡と三人で、お昼ご飯を食べた。




敦子は、それから自分の部屋に戻って、大木美代子に連絡した。


『 今帰ってきたよ。元気? 』


すぐ返事が来た。


『 よかったら、うちきて! 』


敦子は、歩いて大木美代子の家に行くことにした。


大木美代子の家は、母屋の横に立っている離れで、家族三人で暮らしている。


ご主人は、入り婿さんだ。

子どもは、自分の親が見ていてくれるので、もう職場に復帰している。


「 お久しぶり~。といっても一か月ぶりだけど。翔也君こんにちは! 」


「 あっちゃ~ん。 」


美代子は、敦子が来るだろうと家の前の庭で、翔也君を遊ばせて待っててくれていた。


美代子は、そのまま翔也君を母屋の親に預けて、離れの家に行く。


敦子が、お土産を美代子に渡すと、母親の時と同じような反応をした。


「 あっこれ、テレビでやってたね。おいしそう。 」


そういってずいぶん喜んでくれた。


美代子が入れてくれた紅茶を飲みながら、二人いろいろ話に花を咲かせた。


「 そうそう、あの林君ね、やっぱり別れちゃったんだって。 」


「 へえ~、林君、大変だったね。 」


夏休みに帰ってきたときには、同じく帰省してきた子たちも含めて同級生5人で、会った。


その時同じ同級生で、小学校の先生をしている林君という人の事も話題になった。

林君は、当時勉強・スポーツもできるさわやかな子で女の子たちから人気があったのだ。


かくいう敦子も、当時林君にあこがれていたうちの一人だったのだ。



林君は、転勤でこの4月から、こちらの学区の小学校の先生になったらしい。

大学時代から付き合っていた彼女と、別れそうだという話をしていた。

というのも、おしゃべりした同級生の一人が、同じ同級生同士で付き合っており、その彼が林君と仲がいいので、愚痴られたらしいのだ。


「 そうそう、今日うちの主人も祭りの準備に行ってるんだけど、林君もいるのよ。後で見に行ってみない? 」


「 そういえばうちのお父さんも言ってるんだけど、今って何やってるの? 」


「 今日は、滝のそばにある神社の掃除や草刈り。 」


「 広いから大変だよね。うちのお父さんなんて、暇さえあれば行ってるみたい。」


「 うちの主人は、普段仕事だから、たまにしか行けないんだけどね。 」


「 いいんだよ、暇な人がやれば。 」


2人して言いたい放題だ。美代子は、敦子の近況を聞いたが、敦子が特にないというとそれ以上詮索してこなかった。


2人で、ひとしきり話していたら、二時間近くもたっていた。

そして、二人で、神社のほうへ行ってみることにした。





神社に行く前に、母屋に行ってあいさつした。


玄関を入ると中から、にぎやかな声が聞こえてきた。


2人で中に上がっていくと、小学生の子供たち二人と翔也君、そして女の人が、二人いた。


「 こんにちは、お久しぶりです。 」


敦子があいさつすると、女の人たちも次々に挨拶してきた。


「 こんにちは、あっちゃん、覚えてる? 姉の洋子。今日帰省してきたの。 」


「 こんにちは、あっちゃん。大きくなって、久しぶりね。息子と娘。 」


洋子は、美代子の姉だ。

歳が少し離れていて、もう小学校の子供が二人いる。


子供たち2人も、かわるがわる挨拶してくれた。


「 そうそう、あっちゃん。洋子が、いっぱい羊羹持ってきてくれたの。少し持って行って。 」


そういって、美代子の母親が、奥の部屋に行き羊羹が入っている小さな箱を一本持ってきた。


「 ありがとうございます。これ、有名ですよね。いただいちゃっていいんですか。 」


「 いいのよ。いっぱい買ってきちゃったの。よかったらもらって。 」


姉の洋子が、そういった。


そして、何気なく羊羹を受けとった時の敦子の手を見た。


「 あっちゃん、前から思ってたけど、ほんときれいな手をしているわね。指も爪もきれい。 」


「 そうでしょ。あっちゃんは、昔からほんときれいなんだもん。」


美代子が、自分の事のように自慢をした。


「 私、今化粧品の工場で働いているのよ。今生産しているネイルなんだけどね、あっちゃんに似合いそう。 」


「 そうなんですか、洋子さんは、どこの会社なんですか。 」


洋子が、敦子が買ったあのネイルのメーカーの名前を言った時には、心臓が飛び出るかと思った。


こんな偶然あるのかとびっくりして、声が出なかった。

とはいえ、あのネイルのことを言うわけにもいかず、月並みな言葉で返事した。


「私この前、新色買ったばかりなんです。気に入ってるんですよ。 」


「 そうなの、あの桜色ね。じゃあお得意さんね。 」




そういって敦子と洋子は、笑ったのだった。

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