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12 緊張しました

 モニターに映った玉山を見たとたん、なんだか心臓が高鳴ったが、あえて気にしないようにして玄関のドア開けた。


 「こんばんは。これ買ってきたので、どうぞ」


 差し出された箱の包みを見ると、会社のそばにある有名なケーキ店のものだったので自然に顔がほころんでしまった。

 おいしいが、その分お値段もすごくお高いので有名なお店だ。


 「ありがとうございます。さあどうぞ」


 昨日に続いてまたもや玉山が部屋に上がる。

 どうやらいったん家へ帰って着替えてきたらしく、ラフな格好をしていた。

 といっても雑誌から抜け出たような感じだが。

 テーブルに案内して、座ってもらう。

 フライパンの中のお料理をちょっと温めている間に、小鉢に入れてあったものをテーブルに並べていった。


 玉山が、じ~とお料理を見ている。

 温めなおしたお料理も、皿に取り並べる。

 炊いたご飯も出す。


 「田舎料理ですけどどうぞ」


 「ありがとう。おいしそうだね」


 玉山は、箸を手に取りお料理を食べていく。

 ちっらと見た玉山の食事をする所作が、きれいでなんだか感心してしまった。

 敦子も食べるが、玉山の反応が気になって仕方なかった。


 (おいしいかなあ?お口に合ってるのかなあ。どうなんだろう)


 とうの玉山は、無言でお料理を次々に口に運んでいる。


 (まああれだけ、食べてるんだから、まずいってことはないかもね)


 敦子は、内心ほっとして自分のご飯を食べ始めた。


 (デザートどうしようかな。作ったチーズケーキあるけど、やっぱり買ってきてくれたケーキ食べたいなあ)


 敦子はご飯を食べながら、デザートの事を考えていた。

 視線を感じてふと前を見ると、お皿が空になっている玉山と目があった。


 「あっ、ご飯とおかずまだありますけど召しあがります?すみません気が付かなくて」


 「いやいや、仕事柄食べるのが、早くなっちゃって。お料理おいしかったよ」


 「今お茶を入れますね」


 敦子は自分の横に置いてあったポットと急須で、お茶を入れて玉山に出した。

 そして自分は、急いで食べ始めた。


 「そんなに急がなくていいよ。ゆっくり食べて」


 「いえっ、すみません」


 敦子も食べ終えて、あわててお茶を飲んだ。


 「げっほっ。げっほっ。げっほっ」


 慌てて飲みすぎてむせてしまった。


 「大丈夫?」


 気が付けば、玉山が立って、敦子の背中をさすってくれた。

 玉山の大きな手を背中に感じて、またむせそうになってしまった敦子だった。


 「もう大丈夫です」


 思い切り顔が赤くなってしまい、玉山のほうを見ずにいった。

 玉山は、自分の席に戻っていった。


 「あのう、買ってきてくださったものお出ししてもいいですか」


 一応玉山に聞いてみる。


 「ああ、ありがとう。あそこのケーキおいしいって評判だって聞いて買ってみたんだ」


 「そうなんですよ、ほんとおいしいんです!」


 強く同意した敦子を見て、玉山は、おかしかったようで、くすりと笑った。


 「じゃあ先に、このお皿片づけちゃおうか。僕もお手伝いするよ。おいしかった料理のお礼に洗いますって言いたいところなんだけど、家事苦手だから、お手伝いで」


 「いえいえ、玉山さんは、座っていてください。私一人で出来ますので」


 「いやいや・・・」


 敦子と玉山はしばらく押し問答のようになっていたが、結局敦子が折れて敦子が洗い玉山がお皿を拭くということで落ち着いた。

 隣に玉山が立ったので、緊張してか、皿を滑り落としそうになってしまいそうなことが、二・三回あったが、何とか洗い終えた。

 玉山も、ぎこちない手つきで、拭いていく。


 「このお茶碗と箸、ペアなんだ」


 「そうなんです。これ、結婚式の引き出物としていただいたもので、今日役立ってよかったです」


 「そうなんだ。今日はじめて使ったんだ~」


 玉山は、一人納得して拭いていた。

 敦子は皿を棚に入れていったが、玉山の爆弾発言にまた皿を落としそうになってしまった。


 「まるで、新婚生活みたいだね」


 敦子は一瞬何を言われたのか、頭の中で理解できなかったが、意味を理解したとたんびっくりして玉山を見てしまった。


 玉山も、自分の発言に驚いたのだろう。

 いってからあっと思ったらしく、敦子を見てびっくりした顔をした。

 お互い顔を見合わせてなんとなく気まずくなって、どちらからともなく視線を外した。


 「コ~、コーヒーか紅茶どちらにしますか」


 気まずい雰囲気を変えるべく、敦子は玉山に聞いたが思いっきり噛んでしまった。


 「あっ、ありがとう。コーヒーで」


 玉山も噛んでいた。

 敦子は、急いでコーヒーの準備をした。

 冷蔵庫に入れてあった箱を出し、先に席についている玉山の前に持っていき、自分も座ってから箱を開けた。


 「おいしそう~」


 箱の中には、三種類のケーキがはいっていた。


 「どれにします~?」


 思いきっりケーキを見ていた敦子は箱から顔を上げて、思わずのけぞってしまった。

 玉山もケーキを見ようしたのか、お互いの顔が近かったのだ。

 玉山も敦子と同時に顔を上げたので、一瞬びっくりした顔になっていた。

 玉山もあわてて体を後ろに引いた。

 よく見れば敦子だけでなく、なんとなく玉山の顔も赤くなっている気がした。


 「どれがいい?おいしいお料理のお礼なんだから、先に選んで」


 なぜか敦子のほうを見ずにいった。

 結局敦子が、先に選んだ。

 なんだか、おいしいはずのケーキの味がわからなかった。


 それから、他愛ない話をしていたが、ふいに玉山が言った。


 「今日はありがとう。おいしかったよ。よかったらまた今度ご馳走してくれる?」


 「えっ、いいですよ。こんな田舎料理でもよければ」


 「じゃあ、また連絡するね。楽しみだなあ」

 

 帰る時もまた連絡するよと言って、玉山は帰って行った。

 隣の部屋だけど。


 「さっきはつい返事しちゃったけど、また次あるのかなあ」



 次があることにうれしいような、なんだか気恥ずかしいような不思議な気分になる敦子だった。

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