プロローグ
「りゅうさま、お願い聞いて」
そういって少女は、目の前のりゅうさまと呼ばれた男に、懐から自分の首にかけてあった袋を取り出した。
少女がその袋から取り出したのは、少女の手の中に入るほどの小さな綺麗な色をした玉だった。
「わかった。しかし我だけ行く。お前はここに残っていろ」
りゅうさまと呼ばれた男は、少女からその玉を受け取った。
「いやだ。私もつれてって。いつも一緒って言ったでしょ」
「いやだめだ。お前はここに残るのだ」
そういったかと思うと男は、竜に姿を変えた。
手には少女が渡した玉が握られている。玉は竜の姿に合わせて大きくなっていた。
竜が少女の元から飛び立とうとしたとき、少女の体が光り始めた。
そして光輝いたかと思うとあっという間に、竜の持っている玉の中に吸い込まれていった。
「お前の願いは、それでいいのか」
竜はやさしく玉に向かってささやいた。
この玉は以前竜が少女にあげたものだった。
この玉に願い事をすれば、願いが叶うといって。
その玉を少女にあげてから、竜は少女の気持ちが手に取るようにわかった。
一方少女の方も言葉を交わさなくても、竜の気持ちがわかるようになった。
今、竜と少女の願いは同じだった。
地上に雨を降らせること。それにずっと一緒にいること。
竜は玉を大事そうに握りしめたまま空に上がっていった。
竜は持っている力をすべて空に放出した。
竜の体が光り始めた。
その時である。大事に握りしめたはずの玉が砕け散った。
すべてその光とともに消え去るはずだった玉が、先に砕け散ったことで、ほんのちょっとの破片が風に舞って消えていった。
竜は風に舞って消えていく破片をただ見ているしかなかった。
竜が白い光をまとい消え去る最後に咆哮した。
『あつっ______!!』
竜の姿が地上から見えなくなるころ、空が真っ白い光に覆われた。
その光が消えたかと思うと、瞬く間に空には雨雲がわいてきて雨が降り始めた。
砂埃をたてていた乾いた大地に雨が降り注いていく。
まるでそれは竜の流した涙の様だった。