表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

聖徒会 闇の少年

作者: 麻生弘樹

どこまでも闇が広がる漆黒の世界。

闇の魔物、ガゼルはある一人の少年を産み出そうとしていた。

「さあ、目覚めよ!

闇から生まれし我が配下よ!!」

次の瞬間、闇から一人の少年が産み出された。

闇のオーラを纏った少年はガゼルの前にひざまづいた。

「ガゼル様、私はただ今誕生致しました。

誠に感謝致します。」

と、頭を下げた。

「うむ。

お前は私の配下として尽くしてもらうぞ。」

「は!」

ガゼルは頷くと、

「早速だ、お前に使命を与える。」

と、ガゼルはとある使命を与えた。

「この邪魔者である聖徒会の者共を殲滅させるのだ。

それがお前の使命だ!」

ガゼルが映し出した映像には聖徒会のメンバー四人の顔が映し出されていた。

「承知致しました。

必ずや首を奪ってきましょう!」

そう言うと少年は姿を消した......。


すっかりラブラブなカップルになった蓮と希は買い物の帰りだった。

「すみません、持ってもらって......

重くないですか?」

「これくらい何てことないよ

それにしてもお腹空いたなあ〜。」

「ふふ、今日は蓮君の大好きな唐揚げです。」

「本当に!?」

途端に笑顔になる蓮。

「蓮君......何だか子供みたいです。」

クスクスと笑う希。

いつも一緒に居たいというお互いの気持ちから二人は何と同居するようになったのだ。

二人は幸せを満喫していた。

「さあ早く帰って、ご飯にしましょう。」

と、二人は家へ向かった。


とある人通りが全く無い路地。

仕事帰りのOLが一人で歩いていた。

ふと、物音がしたような気がして後ろを振り返る。

後ろには誰もいない。

不思議そうに首を傾げ、再び歩き出す。

次の瞬間、OLの女性はその場に倒れた。

しかし、怪しげな気配は何も見当たらなかった......。


敬介と仁がその日、訪ねてきたのは夕方だった。

「二人とも、久し振り。」

蓮は喜んで家の中へ招き入れた。

「しばらくだね、女神君とは相変わらずかい?」

「おかげさまで、仲良くやってるよ。」

その他にも

「薫ちゃんは元気にしてる?」

「ああ。

無事に志望していた大学にも受かったしな。」

などと、会話をした。

「所で、本件なんだけど。」

そう言うと仁は真面目な表情になった。

「最近、無差別に人々が襲われる事件が多発しているんだ。

テレビでもその話題で持ちきりなんだ。」

「例の無差別通り魔事件だっけ?

確か、監視カメラにも何も映ってなくて警察もお手上げだとか聞いたけど......。」

「その事件、もしかしたら魔物が絡んでるかもしれないと俺達は推測している。」

「魔物?」

「監視カメラにも映らないと言う事は、姿が見えないと言う事なんだ。

そんな不可解な事件を起こせるのは魔物しかいない。

そう考えてるんだ。」

「確かに......。」

「もしかしたら、魔物が僕達を誘っているのかもしれないね。」

「誘っている?」

「罠と言う事だ。

わざとこんな事件を起こして、俺達、能力者をおびき出そうとしているのかもしれない。」

「何はともあれ、神島君や女神君も気を付けてほしい。

少しでも怪しい事があれば至急に連絡を頼むよ。」


その後、二人と別れた蓮はテレビを付けて例の事件の特集を見ていた。

確かに怪しい......。

自分も調査の必要がある。

そう感じていた。

その時、自宅のドアを開ける音がした。

「お帰り、希。」

「ただいまです、蓮君。」

お互い、笑顔で言葉をかける。


希のお手製の晩御飯を食べながら、蓮は希にも話しておいた方が良いと思い、さっきの事を話した。

「確かに、魔物の気配がします。」

「それで明日、その事件を調査しようと思ってるんだ。」

「分かりました。

私も一緒に調査します。」

しかし、蓮は

「いや、俺一人で行くよ。」

「え?」

「希に危険な目に遭ってほしくないんだ。

だから、俺一人で行くよ。」

そう言われた希は

「蓮君。

そうやって何でも一人で背負い込まないって、前に約束しましたよね?」

希は真剣な顔つきで蓮に言った。

二人が同居する事になったその日、二人はとある約束を交わした。

どんな事でも一人で背負いこまない、お互いに助け合うと。

「あ......、

でも、希を危険な目には......。」

「そんなに、私は頼りないですか?」

「いや、そう意味じゃ......。」

「私の事をそこまで心配してくれているのは凄く嬉しいんです。

でも、逆に蓮君に何かあったら私だって悲しいですよ?」

「......。」

「一人なら無理でも、私達二人なら何だって乗り越えられるはずです。

だから、一人はもうダメですよ?」

「分かった.......。

ごめんな、希。」

更に蓮は

「もう一人で突っ走るのはやめる。

これからは二人で協力し合おうな。」

「はい。」

と希は笑顔で頷いた。

蓮も笑顔になる。

すると希は

「じゃあ、約束破った罰です。」

「え?」

希はニコリと微笑み、

「今晩のデザート、蓮君の奢りで買ってきてください。」

「......分かりました。」

蓮は近くのコンビニへと出掛けて行った。


次の日の晩、二人は事件のあった現場へと足を運んでいた。

現場には黄色いテープが貼られており、立ち入り禁止となっていた。

「お邪魔しまーす。」

と、蓮と希は現場へと足を踏み入れた。

近くの監視カメラには細工をしておいたのだった。

現場には特にこれといった形跡は見当たらなかった。

もちろん、血痕なども見つからなかった。

「だったらこれだ。」

二人は地面に手の平を置き、目を閉じ、神経を集中させた。

こうする事により魔物の気配を感じ取れるのだ。

そして二人の脳内にはある気配が、浮かんでいた。

漆黒に染まった闇の気配。

恐ろしいくらいの闇の気配......。

耐え切れずに目を開ける。

見ると希は辛そうだった。

「希!」

すぐさま駆け寄る。

「ごめんなさい.....、あまりにも強い闇の気配を感じたものなので......!」

何とか二人は立ち上がる。

「この事は敬介と会長にも連絡しておこう。」

「はい。」

蓮は携帯を取り出し、最初は仁に連絡した。

その時である。

「!?危ない!!」

間一髪、二人は謎の奇襲を回避した。

「神島君?神島君!!

どうしたんだ!?」

回避した時に落としたケータイから仁の声が響く。

二人の目の前にはある一人の少年が立っていた。

「お前は!?」

その少年は漆黒のオーラを纏っていた。

強烈な闇の気配を感じられる。

「この闇の気配......、さっきと同じ......!

まさか、お前が!!」

少年は剣を召喚させると二人に向かって構えた。

「我は闇から産まれし者。

漆黒の闇......!!」

次の瞬間、少年は二人に再び襲いかかった。

二人はそれを何とかかわしていく。

「こいつは一体......!?」

「恐らく、今回の犯人だと思われます!」

「ガゼル様の命令だ。

死んでもらう!」

少年は剣から衝撃波を繰り出した。

そのまま二人に直撃する。

「ふん、何とたやすい。」

すると、次の瞬間直撃する寸前に炎の剣士へと変身した蓮は攻撃を防いでいたのだった。

「はあっ!」

そのまま少年へと向かって行く。

ぶつかり合う剣と剣。

「答えろ!

お前は何者だ!」

「言った通りだ。

我は闇から産まれし者!」

そのまま剣を押し返し、斬りつける。

「がは!!」

「蓮君!!」

希が駆け付け、風の衝撃波を両手から放つ。

「ふん!」

少年はたやすく剣で風の衝撃波を防ぎ、跳ね返す。

風の衝撃波は希に命中し、吹き飛ばされる。

「きゃあ!!」

「希!!」

「所詮はこの程度か、少しは楽しませてくれると思っていたが......、残念だ。」

そして

「終わりだ!」

剣から闇の刃を放つ。

二人に直撃する寸前、氷の壁が二人を守った。

「!?」

そして二人の前には

「敬介!会長!」

「来てくれたんですね......!!」

敬介と仁が立っていた。

「危ないとこだったな」

「何とか間に合ったみたいだね。」

「ちっ、新手か......。」

そう言うと少年は

「命拾いしたな。

だがこの次は容赦はせん。」

そして姿を消した。


蓮と希はすぐさま救急車で病院へ運ばれた。

幸い、命に別状は無かった。


「どうやら、また厄介な魔物が現れたようだね。」

「それにしてもあいつ......、前に戦ったラザルドと同じ気配を感じる。」

「いずれにせよ、強敵である事には変わらないだろうね。」

ベッドに上で眠っている二人を見守りながら敬介と仁は突如現れた魔物について話し合っていた。


後日、再び敬介と仁は二人のお見舞いに来ていた。

「その少年の事については僕達で調査を進めておく。

だから、二人はゆっくり休んでくれ。」

と、二人は病室を後にした。


「私、あの子から闇の気配だけではなく、とても悲しいオーラを感じました。」

希が突如、口を開いた。

「どういう事?」

蓮が尋ねる。

「あの子、もしかしたら心の中に悲しみや孤独を抱えているのかもしれません。」


少年は一人、街をうろついていた。

途中、笑顔で楽しそうに会話をしている親子を目にした。

その光景を見た瞬間、少年は複雑な気持ちになるのを感じた......。


後日、蓮と希は無事に退院した。

そして、再び事件が起きる。

違う場所でまた人が襲われたのだ。

四人は合流し、現場は向かった。

現場は向かうと、そこには例の少年が立っていた。

「またお前達か......、今度こそまとめてあの世へ行かせてやろう!」

四人に襲いかかる少年。

蓮は炎の剣士へと変身を遂げ、他の三人は身構えた。

「人数ではこっちが有利だ、バラバラになって拡散しよう!」

四人はバラバラに散った。

そして、希、敬介、仁の三人がそれぞれ攻撃を放つ。

少年は攻撃を防ぐ。

「神島君、今だ!!」

「はああっ!!」

蓮は高く飛び上がり、剣を振り下ろす。

三人の攻撃を防ぐのに精一杯だった少年は蓮の攻撃をまともに喰らった。

吹き飛ぶ少年。

「これでトドメだ!」

と、再び剣を振り下ろそうとする蓮を希が止めた。

「希!?」

すると希は少年の元へと駆け寄った。

「.......何のつもりだ!?」

少年が希を睨み付ける。

「あなた、本当は戦いたくはないんですよね?

あなたの心から、とても悲しいオーラを感じます。

本当はこんな事、望んでいないのではないですか?」

「何を......!!」

少年は立ち上がり、

「俺に心なんてものはない!

俺はただ、ガゼル様に従うだけだ!!」

「ガゼル?」

「俺を産み出してくれたガゼル様の為に、貴様らを倒す!!」

そう言うと、希に剣を振り下ろそうとする。

「希!!」

しかし、直前で剣は止まった。

「何故だ......!?

こんなはずでは......!!」

訳が分からなくなった少年は急いでその場を去った。


「希!

大丈夫か!?」

はい。と希は頷く。

「あいつ、本当に......!」

「あの子は本当は苦しんでいるのだと思います。

だから、私達であの子の心を救ってあげたいんです!」

三人は何とも言えない不思議な気持ちだった。


ガゼルの元へと帰ってきた少年はガゼルに尋ねた。

「どうした?我が配下よ。」

「教えてください!

私はどうしたらいいのか.......!!」

「くだらん事を考えるな!

お前はただの私の配下、お前はただ私に従っていればいいのだ!!」

少年は複雑だった。

「明日、人間界を一斉攻撃を仕掛ける。

愚かな聖徒会の人間もろとも、全て排除するのだ!!」

少年はただ、拳を握りしめるだけだった。


翌日、遂にガゼルが人間界に君臨した。

「我はガゼル!

愚かな人間達よ、滅びるがいい!!」

次の瞬間、ガゼルが攻撃をけしかけた。

悲鳴や叫び声、泣き叫ぶ声までもが至る所から響き渡る。

少年は呆然とその光景を眺めていた。

すると、少年の近くで子供の泣き声が聞こえた。

見ると、小さな男の子が瓦礫に足を挟まれていた。

次の瞬間、少年は瓦礫をどかし、男の子を助け出した。

「大丈夫か!?」

少年は男の子の足の怪我を魔力で治癒した。

「うん!

ありがとう、お兄ちゃん!」

すると、その子の母親が男の子の元へ駆け寄って来た。

「ママ!!」

「大地!!」

大切な息子を思い切り抱きしめる。

「良かった、無事で!!」

「うん!このお兄ちゃんが助けてくれたんだよ!」

母親は少年に頭を下げた。

その瞬間、少年の心の中である感情が芽生えた。

少年は早く逃げろと伝え、その場を後にした。

猛攻撃を仕掛けるガゼル。

少年はガゼルの前に立ち上がり、叫んだ。

「お辞めください!ガゼル様!!」

「何のつもりだ?」

「こんな事は、間違っています!

だから、おやめください!」

「貴様あ!!」

ガゼルは少年に攻撃する。

「所詮は出来損ないか......!

ならば、消えろおお!!」

ガゼルは口から闇の弾を放った。

少年は両手を広げ、後ろにいた親子を守った。

煙が晴れると、少年はボロボロだった。

そして、ガゼルを思い切り睨み付ける。

「お前は......間違っている!!」

「貴様ぁ!産んでやった恩を忘れたのか!

何故、愚かな人間なんかの味方をする!?」

「理由などない!

だが、こんな小さな命だからって、見捨てて言い訳がないだろ!!」

「貴様あ!!」

ガゼルは再び闇の弾を放つ。

だが、その攻撃は四人によって防がれた。

「!?」

少年の前には聖徒会のメンバーが立っていた。

「何!?」

希が少年に微笑み、頭を撫でる。

「よく頑張りましたね、あなたの本当の気持ち教えてもらいました!」

「......!!」

「これでお前もヒーローの仲間入りだな!」

「ま、大した根性だな」

「グッジョブ!」

「お前達......!」

「私達と一緒に、あいつを倒しましょう!」

希が手を差し伸べる。

少年はその手を掴み、立ち上がる。

「ふん!こうなればまとめて滅ぼすのみ!」

ガゼルが巨大なレーザーを放つ。

五人は能力でその攻撃をガードした。

爆風が立ち込める。

「うおおおお!!」

そして、

「火炎斬!!」

「ストームシュート!!」

「アイスブレイカー!!」

「シャイニングレイン!!」

「パニッシュメントスラッシュ!!」

五人の強烈な必殺技がガゼルを直撃する。

「うがあああ!!!」

壮絶な悲鳴をあげ、ガゼルは消滅した。


少年は綺麗な夕日を眺めていた。

「綺麗ですね。」

近くに希がやってくる。

「.......ありがとう。」

少年はお礼を言った。

「あなたのおかげで、俺は心というを手に入れた。

これはかけがえのない大切な宝物だ。」

更に少年は蓮達に向かって

「あなた達にも申し訳ない事をした。

心から謝罪する。」

と、頭を下げた。

「ありがとな、一緒に戦ってくれて。」

「え?」

「これでお前も俺達、聖徒会のメンバーだな。」

と、手を差し出す。

「......。」

「俺は神島 蓮。

それと......」

「女神 希と申します。」

「氷神 敬介だ。」

「会長の神山 仁だよ。」

「よろしくな、えーと......、」

そこで少年の名前を尋ねた。

「俺の名前......。」

少し考えた後、少年は言った。

「アランだ。

よろしく頼む。」

と、握手を交わした。


後日、四人はアランにこの世界の楽しさを知ってもらおうと遊びに連れて行くことにした。


有名な観光スポットに行ったり、ゲーセンで遊びまくったり、カラオケで盛り上がったり......。

アランにとってはどれも初めての体験だった。

最初は戸惑っていたものの、次第に笑顔が見られた。


その日の帰り道、皆と歩いていたアランは足を止めた。

「ん?

どうした、アラン?」

他の四人がアランを見る。

「こんなに楽しかったの.....、産まれて初めてだ......。

この世界にはこんなにも楽しい事があるんだな。」

すると、それを聞いた希は

「この世界は悪いことばかりではありません。

それ以上に楽しい事、嬉しい事がたくさんありますよ。」

と笑顔で答えた。

「ああ。

これからも楽しい事や嬉しい事はたくさん待ってるよ。」

敬介と仁も頷いた。

すると希は

「行きましょう。

楽しい事はまだまだたこれからですよ!」

と、手をアランに差し伸べた。

アランは笑顔でその手を取った。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ