ヨシオ(3)
ゴトッ
クローゼットから物音。一瞬ビクッとなる。
ーーなんだよ恐いな……
物音の正体が気になり恐る恐る近付く。
ーー物が倒れただけならいいけど、虫だったら、ゴキブリとかだったらマジないわ
とか思いながらそっとクローゼットにそっと手を掛ける。虫は大の苦手だから。
「ダメだよ、そんなところ開けちゃ」
突然の声にまたビクッとなる。
「……ッッッ! なんだよミホか! 脅かすなよ」
「別に脅かしてないよ? ところで……どうしたの」
「え? どうしたのって……なんかクローゼットから物音がしたから」
「物音……そう、まあそれは置いといてさ、それよりも」
ミホが近付いてきたかと思うといきなり俺を突き飛ばしてきた。こういうのを不意打ちって言うのだろう。油断してた俺はバランスを崩して盛大にコケた。
「痛ッ! ちょ、何すんだよ」
するとミホは馬乗りの姿勢になり俺に甘えるような声で一言。
「気持ちイイことしよっか」
「ぁあ?!」
さすがの俺も動揺する。
ーーおいおいどうした、ミホってこんなアクティブな性格だっけ? 外では可愛い女の子演じといて家では男の精液をしゃぶる嬢王様? 意味分かんね
それでも体は正直で、
「あ、勃ってる。ヒラク君はもしかして童貞さん? 可愛い。もう準備万端だねっ」
ーーミホ、何言ってんだ
「ところでヒラク君に質問、ヒラク君は私のこと好き?」
「は? いやいやホント何言ってんの?!」
「私は好きだよ」
ーーえ
きゅっと小さな手が俺をの手を握った。服の襟口から可愛い胸のシルエットが見えて必死に目をそらす。ドキドキしすぎて胸が苦しい。頭がおかしくなりそうだ。
おかしいだろ、変わりすぎだろ。
「ねぇ、ヒラク君の答えを教えて」
吐息がかかる至近距離。思考が停止する。
ーーやばい、好きだ。俺もやっぱりミホが好きだ。どうしようもなくミホが好きだ……
俺も好きだよ、そう言おうとしたが、
「なーんてね」
「え?」
クスクスクスクスクスクスクスクス
ミホはやけに楽しそうに笑っていた。
「なんだよ、からかったのか?!」
「からかったっていうかーー」
ミホはスマホを取り出した。何かがおかしい気がする。
「性理的に無理なだけ、いくら体は本物っていってもやっぱ気持ちは萎えるわ」
その言葉がどういう意味か、イマイチよく分からなかった。
ーー唐突
途端にミホの頭がグニャと歪む。目眩? と一瞬錯覚したがそうじゃない、そこにミホはもういなかった。