表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

ヨシオ

「なあヒラク、分かるだろ? 金欠なんだよ」


 ニヤニヤニヤニヤ気持ち悪い。またコイツか。


「何言ってんだよ。昨日財布盗った癖に、この泥棒め。もう金なんかねぇーよ」

っていうのは嘘だ。本当は鞄の中に3000円入ってる。


「おいおい泥棒はないだろ? 助け合いだよ助け合い。さっきも言ったろ? 金欠なんだよ」


ーー何が助け合いだ。


「いや悪いなヒラク。いつもオレのために働いてくれて、感謝してるよ」


ーーお前のためじゃねぇーし


「そんな訳でさ、これからもイイ仲でいようぜ……」

ーー!!


 アキラの手がスーッと伸びてきて、その手はガッとオレの俺の鞄をつかんだ。


「見せろよ」


 突然のことに必死になって鞄を抑える俺。


「よこせ」


「やめろ」


「よこせっ!」


「やめろっ!」


「よこせぇッッッ!!」


「やめろぉッッッ!!」


 必死に抵抗する。だがやはりアキラの方が強かった。


 また盗られた。毎度毎度金を盗られて、これで何度目だろうか。天井を正面にしてそう思う。


 なんだかんだいっていつもやられっぱなし、こんだけやられて何も出来ない自分が嫌になる。まあアキラの方が力強いし足速いし、しょうがないと思うんだけど。


 それでも今日は違う。


 俺はポケットからスマホを取り出した。

 見てろよ、これさえあれば……






 男子生徒数人を前にワハハと笑うアキラ。すると体操服姿の女子達が近付いてきた。


「ちょっとアキラ、どういうこと」


 ぶっきらぼうに言う。女子達の迫力、後ずさりするアキラ。


「……なんだよ、オレに何か用かよ」


「トボけるんだ……最低」


 一人の女子が叫んだ。


「私のパンツ返してよ!」


 衝撃の発言にみんなが振り向いた。


「私のもよ!」


 私のも、私のも。だがなんのことやらという顔をするアキラ。その表情がより一層女子達の怒りを誘う。


「体育の時間更衣室に忍び込んだでしょ! そして私達のパンツを物色した。おかげで制服にも着替えらんない。ってか私達のパンツどこ!」


「ちょ、ちょっと待てよ。オレはそんなことしてねぇ! 第一証拠がないじゃねぇか」


「証拠もなにもアンタ私達が見てる前でやったじゃない!」


「私達が嘘を言ってるとでも?」


「ーーや……」


 クラスの視線が痛い。


 その時、ピンポンパンポーンと放送が鳴る。


「2年B組、鈴木アキラ君、職員室来なさい」






「知ってるか? アキラ謹慎になったんだって。何かパンツ盗んだとか」


「知ってる知ってる。女子のパンツ物色でしょ?」


「そうそう」


「度胸あるなー」


「変態を通り越してサイコパスだな」


「で、謹慎か」


「馬鹿だな」


「馬鹿だな」


 はははと笑いトイレを後にする男子生徒。


 ジャーと流水音が流れて個室から出てきたのは俺。霧山扉だった。


 まさかこんなにうまくいくとは……

 ニヤニヤニヤニヤ、今にも吹き出しそうな気持ちを抑える。


『凄いね、嫌いな人を謹慎にさせちゃった。一体どうやったんだい?』


ーー!


 声はスマホからだった。見ると画面には例の顔文字。


「何だ? お前は画面がある所にはどこにでも現れるとかそういう設定か?」


『その通り。どこへ行こうがパソコン、スマホ、ゲーム機、テレビなんかがある所ならどこにでも現れるよ』


「へぇ、ストーカーめ」


 言いつつも嫌な気はしなかった。


『そんなことより教えてよ、キミは一体どんな手を使ってアキラ君を謹慎にしたんだい?』


「簡単なことさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ