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Sm(3)

ーー熱い


 目が覚めてみれば太陽はすっかり昇っていて、ボーッとする意識の中起き上がってみると頭がズキズキと痛んだ。


ーー熱中症だ


 日陰に入って休む。

 危なかった。このままじゃ脱水症状とかで死んでたかもしれない。

 死。ミホが死んだ。大切な人を失った。けど一回寝たせいか、さっきみたいな絶望感は消えていた。実に人間は都合がいいように出来ている。けど全て消えたわけじゃない。ミホのことを考えると心が痛んだ。

 どうしよう。

 死にたいと口に出してみるが本気で死にたいとは思ってはいない。かといって生きていく気力もない。僕が望むのは消滅すること。痛みもなく消えて跡形もなくなくなって、霧山ヒラクという人間がこの世に存在していなかったことに……

 妄想というのは勝手だ。ありもしないことを自分の好きな展開に持っていくことが出来る。

 やはりそんな都合のいいようにならないか、


『いやぁー、面白いことになったねぇー』


 聞き覚えのある声、


『また独りぼっちになったヒラクくん、これからどうするのかなぁ?』


「ーーカオモジ……随分と久しぶりじゃないか? 今まで何してたんだ」


『フフフ、ねぇこれからキミはどうするんだい? 戦う? 逃げる? それともこのまま死ぬ?』


「ーー……」


『最初に言ったよね、ボクはキミを助けに来た。ここで死ぬなんて結果はないよ』


「……じゃあなんだ? 未来テクノロジーとかなんかでミホを生き返らせてくれるのか?」


『なんで死んだって決めつけてるんだい?』


ーー?


『実は彼女はまだ生きてて、ヒョッコリ帰ってくるかもよ?』


「なんでそんなことが言える?」


『だってスカートを見ただけだろう? 彼女のことは見たのかい?』


「見るって言ったって……確かに爆発で弾け飛んで肉片がそこらにあるだろうよ。でもそこまでしてミホを確認しろって言うのか? お前残酷だな」


『冷静に考えなよ……なんて、そこまで干渉する義理はないんだけど』


「……まさかミホは生きてるって言いたいのか? そうか、そうだね、そう言われればミホは生きてるかもしれない。でも俺には助けに行く気は今ないんだ。分かるか? 俺は弱いから。これまでの人生、面倒臭い面倒臭いで何の努力もしてこなかった。何に対しも積極的になれずいつも逃げることばかり、正直疲れたんだ。俺はこの世で生きるのが疲れたんだ……」


『ーー……』


「なあカオモジ、Cfは返すからさ、未来の力で俺と言う人間を消滅する道具とかないか? 何でもいい、悪魔でも薬でも秘密道具でも何でもいいからーー」


『そんなド●えもんみたいなこと言われても困るけど、さっきも言ったろう? ボクはキミを助けに来たんだ』


ーー!


 途端にスマホがボゥッと輝く。


『ボクは第2のアプリを渡しに来た』


 Skill meterの文字が赤く光る。


『そのアプリはSkill meter、略称をSmと呼ばれている』


 俺が画面をタップすると3つの棒グラフのようなものが現れる。


『その3つはそれぞれ意味があり体力、学力、表現力の役目に分かれている』


 棒を弄ると上下に動いて、同時に他の棒も上下に動いた。何となく左の棒を上に上げると他の2つの棒が下がり、瞬間、体が軽くなった気がした。


『体力を上げれば運動に優れるようになり、学力を上げれば知能が高くなり、表現力が上げれば饒舌になる。その分他の2つが下がり……簡単に言うと運動音痴になり馬鹿になりコミュ症になる』


ーーこれがSm……


『今のキミにピッタリじゃないか、だってキミは弱いから』


ーー!


『行動力もなく、力も弱く、悪知恵ばかり働かせて、出来もしない約束なんかして』


「やめろ!」


『キミは何のため戦う? ミホチャンを助けたいんじゃないのかい?』


「ーー……ッッッ」


『Smを使って学力を最大限まで上げれば究極の頭脳を手に入れることが出来る。その頭脳を持ってすれば、他の所有者を倒せるかもしれない。彼女を助けれるかもしれない』


「ーー……」


『心に誓ったんじゃないのかい? 何があろうと俺がミホを守るーーとね』


「ーーーー…………」


 気付けば指が動いていた。カオモジにまんまと誘導されてしまった俺、だが時既に遅し。Smの力を甘く見ていた。俺が画面の上で指をスワイプさせた瞬間、電撃が走る。


「!!!!!」


 まるで脳をハンマーで叩かれたような衝撃が襲い、目の前が真っ暗になる。

 体の全ては脳のために、俺はその時からロクに歩くことが出来なくなり、人間として大切な感情というものを失った。


 あのミホに恋をしていた馬鹿な俺はもういない。

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