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Sm(2)

 一般道を走る車、手足を縛られ身動きが取れない状態の私、七野ミホ。両脇にはマリナと呼ばれる女性とヨシオくん。


「大丈夫ですか? ヨシオ様。お怪我は?」


「大丈夫。それよりアクタに変なこと言わなかったよね?」


「大丈夫です。わたしの心はヨシオ様のものなんですから!」


 ヨシオ様? 洗脳でもしたのか?


「ねぇヨシオくん……それで、私をどうする気なの?」


 考える仕草をするヨシオくん。


「さてどうしようか、このまま僕の女になるとかは?」


「変態」


「ヨシオ様酷いです! 二股かける気ですか?」


「ははは冗談だって」


 ふざけてる。


「ねぇ、ヒラクくんは本当に平気なの?」


「大丈夫さ、対爆ロッカーの力を信じればいいさ」


 信じればいいさって……


「……こんなことして、ヨシオくんいつか地獄に落ちるよ」


「なんだ? 死後の世界なんて信じてるの? 死後の世界なんて何も縋るものがなかった昔の人が勝手に作り出した空想に過ぎない。仏とか神とか閻魔大王様とか何様だよって思う。でもミホちゃん知ってるか? その話じゃ虫一匹殺しただけで地獄行きらしいよ?」


「それならみんな仲良く地獄行きですね!」


「……最低」


「死んだら人間は土に還る。それが真実ーーとは限らないけど、僕はそう思ってる。だから短い人生の中で好きなことを目一杯やるんだ」


「ヨシオ様、流石です」


 そのために犯罪まで犯すその精神、理解に苦しむ。


「だからってこんなこと……警察に行ってバラしてやりたい気持ちだよ」


「無駄だよ、警察は既に僕が乗っ取った」


「流石ですね」


 手を叩き賞賛する彼女、


「大体日本人は糞真面目でつまらない。生まれた時から法律に縛られ、子供の内に教育されて”国”と言う名の組織に相応しい人間に育てられた人間はお国のためにセコセコと働く。つまらない。なんてつまらない世の中なんだ。好きな時に食べ、好きな時に寝て、好きな時に性欲を出す。それが人間、動物、生物の本来あるべき姿なんだ」


「私にはダメニートの言い訳にしか聞こえない」


「そんな厳しいこと言わないでよミホちゃん。でも僕は考えたんだ。自分で法律を作ってしまえばいいんだよ」


「そんなこと認められる訳がない。そんなこと出来ない。させない」


「何を根拠に?」


「こっちの台詞」


「まあ見てなって、ミホちゃん。いずれ僕の考えが世界にまで届くようになるから」


「……ところで何処に向かってるの?」


 ヨシオくんが振り向きニヤッと笑う。


「お城」


ーー?


「僕達のお城へ行くのさ」


ーーお城?


「それはどういう?」


「警察署」


ーー?!


「ちょっと、どういうこと?」


「どういうことって、捕まりに行くんだよ。簡単に言うなら……出頭?」


「出頭って……本気で行くの?!」


「捕まったらしばらくは外へは出れない、もしかしたら一生かもね。一生を退屈な労働で終える。これぞ時間の無駄、残念な人生、だが身の安全は保証される。そして今から警察署に行くのはーー」


 こちらを指差すヨシオくん。


ーーなるほど、そういうこと……


「君だよ、ミホちゃん。君には僕に変身してもらってしばらくの間刑務所で過ごしてもらう。時が来るまでね」


「時が来るまでって、いつ?」


「さぁ、それは分からない。一年? 十年? 百年? 一生助からないかもしれない」


「ーー……」


「だが僕の計画を成功させようとするならミホちゃんは絶対必要なんだ。まあ心配することはない。ミホちゃんには刑務所にいる間の相棒として彼を送ることにした」


 助手席を指差す。知らない男。


「彼が刑務所ライフを満喫出来るよう色々教えてくれるから。ちなみに彼は前科があって刑務所じゃ有名人らしいから安心するといい」


 ヨシオくんが彼のことを紹介すると人相の悪い男が『よろしく』と言う。

 いやいや、逆に安心出来ないよーーとは言わない。相手は犯罪者だ。何されるか分からないから。


「さて、そろそろ着くから僕に変身してよ」


 言われるがままに変身した。嫌々ではあるが抵抗したって無駄なことくらい知ってる。


「ちなみに変な気は起こさないように、警察は僕の手に落ちた。何かすれば僕に届く。今回は脱走なんか考えたら……Dead endだから」


 窓の外は物々しい雰囲気、何処の警察署だろう。分からないけど私は寂しかった。家族と別れ今までの友達もいない、先生もいないご近所さんもいない、何よりヒラクくんもいない……そんなところへ行くのだ。寂しい、寂しいよ? でも私は信じてるから。白馬の王子様がーーみたいな夢見ちゃって、でも私を救いにくる、そんなヒラクくんが来てくれることを……

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