Sm(skill meter)
今、俺は一体どこを歩いているのだろうか? ふらふらと頼りない足取り、
ーーミホが死んだ
あまりのショックで全身の気が抜け足がもつれて盛大に転ぶ。
「ーー……っィた」
足を擦りむいて汚い膝から血が流れる。だがそれ以上に心が痛い。
朝日が昇り始めている。ミホのいないこの世界を嘲笑うかのように皮肉に輝いていた。
「ーー……」
あの時ミホは言った。”私の代わりにヒラクくんをこのロッカーに入れて下さい”と、次に見たのは変身を解いたヨシオ……なぜ?! なぜアイツがあの場にいた? それはつまり、最初からアクタはヨシオだったということか? 警察を動かしていたのがヨシオならヨシオはあの状況を楽しんでいた? とんだキチガイだ。
さらにヨシオはユウタと手を組んだと言っていた。マリナちゃんがあの場にいたのはそういう訳だ。ヨシオは同盟を組みマリナちゃんの返還を頼んだ。それだけじゃない。奴らが同盟を結んだということは3台ものCfを所持してることとなる。あの2大勢力が手を組んだらどうなるか? 世界の終わり、これは大袈裟じゃない。
しかしなぜヨシオはミホの言うことを聞いた? 知り合いだから? それだけの理由であのヨシオが言うことを聞くとは思えない。
俺はヨシオのCfを奪おうとした、普通なら俺のCfを奪うとか殺して奪うだとかそれくらい考えそうなものだが、なぜ? いや、ヨシオの考えることなんて最初から滅茶苦茶なのくらいよく分かってるではないか、ヨシオに散々振り回されて、その状況さえ楽しんでいた奴だ。
むしろ自分の命より大切な人を失った。これこそ最高の復讐と呼べるだろう。
ーーミホ……
ミホを死なせてしまい結局俺は生かされた。守ると誓ったあの日が全て水の泡、生かされたのは俺が狂って暴れ回る姿が見たいだけだ。アイツはそういう奴だから。ふざけるな、それだけの理由でミホを、ミホをミホをミホをミホをミホを!!
ジワジワと込み上げる。今奴がここにいたらブン殴ってやりたいがそれすらも出来ない屈辱、
「糞ッ!!」
代わりに地面を拳で叩きつける。この怒りを形にしたいがそれも出来ず負け犬のようだと察して手を引っ込める。何とも遣る瀬無い気持ち。
涙がポロっと流れる。悔しかった。結局俺は何も出来ずヨシオに利用されただけではないか。
ーー俺がもっと強ければ……
もしかしたら今こうして絶望しているところも奴には筒抜けかもしれない。例えば盗聴器とか、俺の気付かない内に体の何処かに仕込まれてるかもしれない。何となく体を見つめる、が特に何もせず止めた。
ーー別に盗聴したいならすればいい
今の俺にはそんな元気はない。
ーーこれからどうしよう
前にもこんなことがあった。いっそ何処か遠くへと、そんなことを考えた。だがそんな気分ではない。大切な人を守れなかったのにそんな呑気なこと言っては駄目だと思う。
ポケットから布を取り出す。ミホのスカートの破片、見ているとどうしようもなく虚しくなってまた涙を流す。
ミホのいないこの世界にいても意味はない。自殺なんて人聞きの悪い、彼女を迎えに行くだけだ。
何となく自分の首筋をグッと強く締め付けてみた。でも苦しくて何となく止めてしまった。人は痛いことを嫌がる。
ミホ、ミホに会いたいミホに会いたい。俺はミホがいなくては駄目などうしようもない性格なんだ。もう一度、あの優しい声で優しい表情で……最早そう思う自分が憎い。気持ち悪い。
ならば今までの記憶を全てなかったことにしたいと、そう願う。
朝日が昇る。広大な空、太陽、小鳥のさえずり、木々がサワサワと揺れる気持ちのいい朝、陽射しの下で俺は地面にひれ伏し静かに目を閉じた。
このまま二度と目覚めないことを何となく願った。