青春(4)
駅を出るとすっかり日は暮れていて、辺りから虫の鳴き声がリーリーと聞こえた。夏とはいえ夜はソヨソヨと優しい風が吹いて心地いい。
歩いて10分、霧山家の住むアパートが見えてきた。別段古くもなくかと言って新しい訳でもなく、築6年の普通のアパート。
ポケットから取り出した鍵をドアに刺し込み、ガチャッと捻る。
「ただいまー」とは言ったものの両親は仕事に出ていていないのだが。
電気をパチッと点けると無数の人気アニメヒロインのポスターが目に入る。棚には美少女フィギアがいくつか置かれているいつもの俺の部屋。
しかし暑い。むあっと熱気を感じる。密室になっていたから熱がこもってしまったのだろう。窓を開けカーテン全開にする。
鞄をベッドの上に放り投げ学校指定のブレザーを脱ぐ。
そいや今日は誰か見てくれたかな……。
パソコンを起動し小説投稿サイトのページを開く。俺の書いてる小説『まさこ・まさこ、の少女戦国記』の小説情報の欄をクリックする。2秒くらい間があってパッと出てきた画面にはブックマーク6人、文章評価9、ストーリー評価14、総合評価35。一週間前と変わらない。ため息をつく。PVも昨日更新したのにそんなに見られてない。
やっぱり毎日投稿とかじゃないとダメなのかな。それとも単純に面白くないとか……それだったらショックだが。
『まさこ✖︎まさこ、の少女戦国記』は主人公まさこが戦国時代に異世界転生して戦国武将として生き抜いていくという話。我ながらよく出来たと思ってるが世間の目はどうだろうか。感想もなにもないから正直モチベーションが下がってしまう。
それに最近は更新が遅れていた。初めは毎日投稿すると決めていたのに話の展開に行き詰まり今は一週間に一度のペースで投稿に変わっていた。
運動もダメだし文学もダメ、俺ってあらゆる面で才能ないんだな……
俺が小説を書き始めたことは誰も知らないし誰にも教えていない。
自分の実力を知って欲しくないから。自分の実力を決め付けたくないから。自分の限界を定義付けて欲しくないから。どうせ教えるんなら有名になってから。賞を取って書籍化もされて、そうして初めて俺がこの小説の作者だと教えてやる。そう決めて書き始めた。
しかし現実はそう甘くない。誰も面白いと思わなければそれは駄作、自己満足に過ぎない、それが小説の世界。それがサブカルチャーで生きる人の世界。
ろくに人生経験も積んでないこの平々凡々な頭脳しか持たない俺に面白い作品を書けなんて無理だ。
そんなこと分かってる。分かってるけど真面目に働くのは嫌だから、サラリーマンになって働くとか面倒臭いから千載一遇のチャンスを求めて小説を書き始めた。
今の生きている日常に退屈を感じているのは俺だけだろうか。学校行ってバイト行って、夏休みどこか行くと混んでるから家でゲームして、けどそれもやっぱり退屈で、そんなつまらない毎日が365日延々と続く。恐らくこれから先もこうした退屈な毎日が続くのだろう。何もない退屈な生活、退屈するのにはもう飽きた。