裏切り(5)
コンコンと部屋をノックして入る。
「ユウタ? いるのか?」
3人は中へ入った。疲れていたのもあって完全に油断していたと思う。扉が閉まった瞬間ガチャと何かが閉まる音がした。
ーー?
「今、ガチャって……」
嫌な予感がして急いで今来たドアを開けようとしたが、遅かったらしい。ドアは既に開かなくなっていた。
ーー閉じこめられた
そこは客室なんかじゃなくて、どうやら従業員の更衣室らしい。ロッカーがいくつか置いてあった。白い蛍光灯がつき、そこはまるで古いホラー映画のセットみたい。
「クソ、どこにも逃げ場がねぇーぞ? 罠だったんだ。そのユウタって言うやつも結局は信用出来なかったじゃねぇーか!」
返す言葉がない。ユウタは信用出来るなんて無責任なことを言ったのは俺だ。
「とにかく今はここから出ることを考えないと……」
ーー出るって言ったって……
瞬間、ザザッというノイズ音、それは部屋の隅にあるスピーカーから流れているようで、やがて聞こえてくるあの自称”ウソつき”の甲高い声。
『ハイこんにちはこんばんは、みんなのアイドル、ユウくんだょー!』
完全にふざけてる喋り方、おちょくってるのか?
『まずはなんでこんなことをしたかだよね、実を言うとさおれは手を組んだ訳さーー』
ーー誰と
『ヨシオくんと』
ーー!
コイツの口からその名前が出るとは……まさかヨシオとユウタが手を組んだと言うのか? 一度は敵対した仲だと言うのに
『さて、おれはお前達を閉じ込めた。これからおれが何をするか分かる?』
ガタガタッと音がしてロッカーの一つが開いた。ずっと隠れていたのか茶髪の髪の女性がヌッと出てくる。その女性はよく知っている顔、見たことのある顔だった。
ーー西条マリナ
マリナちゃんはあれからユウタに捕らえられていたはずだがこんな所で会うとは……
「誰だコイツ!」
突然現れた茶髪の女性に気が動転している二人。
「あら? ヒラク様じゃありませんの」
笑みを浮かべるがその目には光がない。
「おい、知り合いか?」
「前にヨシオと一緒に行動した人だ。今はユウタに捕まっていた」
『さて、マリナちゃん例の物を』
例の物をーーと言われマリナちゃんは持っていたショルダーバッグを開ける、中には如何にもという時限爆弾。しかもタイマーはあと10分
『さて、そこにはあるのは見ての通り時限爆弾、あと10分後にお前達には死んでもらいます』
ーーな
『ちなみにおれの目的はCfじゃないんだ、おれは面白いものが見たいんだ!』
ーー……コイツ
『さて、今の状況、このままだとみんな死にます。そこで救いの手を差し伸べてあげましょう』
ーー救いの手? 一体何を……
『奥から二番目のロッカー、そのロッカーは特別製になってて爆弾のダメージから逃れられるようになっています。ただし一人分のスペースしか空いていませんので悪しからず、ロッカーを使えるのは一人まで、別に入らなくてもいいけどね、タイムリミットはあと10分程、さてお前ら面白い物を見せてくれよ!』
狂ってるとそう思った。みんな不安の顔をしている。当然といえば当然か、いきなり死の淵に直面して……
この部屋に監視カメラが見当たらないなは多分元々置かれていなかったからだと思うけど、どうせ隠しカメラでも設置されてるに違いない。
でもまさかヨシオとユウタが手を組んでいたなんて……
「どーすんだよヒラク!」
「ヒラクくん……」
最早考えるのを諦めている様子。正直俺だってどうしたらいいのか分からない、何か策があれば……