裏切り(4)
「その男は本当に信用出来るんだろうな?」
「ああ、実はミホが監禁から解放されたのもユウタのおかげなんだ。信用していいと思う」
ーー本当に信用出来るかは俺も定かではないのだが……
だが今の状況を切り抜けるにはユウタの力を借りるしかないと考えた。
「ユウタの隠れ家に一旦避難する。すまないが今から指定の場所に行けるか? 近くにあるらしいんだ」
「待てよ、ここで逃げるのか?」
ーー逃げる……違う
「もちろん逃げるつもりはない。いずれヨシオと決着をつけなきゃいけない、それくらい分かってる。分かってるがだが今奴と戦っても勝てる気がしないんだ」
そう、ヨシオの居場所さえ分かっていない俺達が無駄な抵抗したって何も得しない。それよりも今は戦いの準備をする、それが賢い方法だろう。
「ユウタもCfを持っている。本当に戦うなら彼にも助けを頼むべきだ」
それしかこの状況から逃れる方法はないから、
「……そうだね、私もその方がいいと思う。このまま逃げ回っててもいつか捕まる。私達指名手配されてるから」
「指名手配?! 聞いてねぇーぞ」
ーーミホ、知ってたのか
「全てヨシオの仕業だ。ヨシオが俺を恨んでやったこと、悪いのは俺だ……悪いと思ってる、だからこそ今は避難するんだ」
「マジかよ、指名手配……」
アクタは聞いていない様子だった。無理もないある日突然自分が指名手配されたら誰だって動揺する。
「アクタ、大丈夫?」
心配する横顔、
「ミホ、大丈夫だ。むしろ清々しいよ、これでミホ達と同じ状況な訳だ。協力出来る理由も出来た」
「すまない……」
これしかかけてあげる言葉も浮かばない。ヨシオのせいで……いや、俺のせいだ。
「とにかく今はそのユウタって奴の隠れ家に行けばいいんだろ? 分かったよ、行こう」
俺の指定したホテルの場所に来てくれと、ユウタにはそう言われた。ホテルとかヨシオみたいだ。ホテルへは車で30分、その間会話とかは一切ない。そういう俺もお喋りする気力はない、とにかく今日は疲れた。ホテルに着いたらとりあえず真っ先に寝よう。
「着いたぞ」
森の中のホテルだった。夏休みに入ってるからか車が何台か停まっていて、逆に車が一切なかったら流石に怪しむ必要があるからこの方がいい。
「ホテルの中にユウタはいるはずだ、行こう。それからマスクした方がいい、指名手配されてるから……」
「言われなくても分かってるよ」
アクタは既にマスクをしていた。マスクだけじゃなくてサングラスにフードを被って……
「いや、それじゃ不審者。伊達メガネとかにしとけよ」
「ヒラクくん、アクタ、行こ? 今日は疲れたよ」
「あ、わり。行こう」
車はホテルから数十メートル離れた茂みに停めた。ちょっとしたことが命取りになるから。
ユウタはホテルの305号室で待っているという。中はそれ程豪華ではないが民宿的な生活感溢れる所だった。受付には丁度誰もいなくて俺達は階段で3階を目指した。