裏切り(2)
「信じらんないね、好きな人に変身出来るスマホなんて常識的にあり得ない」
「信じられない気持ちも分かる。でも本当なの、試しに……ヒラクくん、私に変身してみて」
俺の目を見てお願いするミホ、俺はCfの存在を教えるのは反対なんだが……大体なぜここまでこの男を信用出来る? 例え知り合いだろうが裏切る時はとことん裏切る、それが人間だ。奴が俺のスマホを奪って一人で逃げることだって考えられるだろう。
ミホは躊躇う俺を見てスマホを奪った。そしてミホ自身にカメラを向けて写真をパシャっと撮る。そしてアクタにスマホを渡し、
「画面のこのアイコンをタップしてみて」
アクタは言われた通りにタップする、するとグニャッと体が変化して数秒後にはミホに変身していた。Cfの能力を知った時は誰もが驚くだろう。そしてこの男も俺が思った通り驚いていた。
「マジかよ……」
すぐにミホが変身を解く。アクタは少し名残惜しそうだった。
「分かったでしょ? これがCfの能力、この力を持つスマホはこの地球上に5台存在しててね、だけど力を持つ人は一人でいいって考え方の人が現れたの。やがてスマホを奪う争いにまで発展してね、その争いに私達は巻き込まれてるってわけ」
「信じがたい話だけど、さっきのスマホの力を見る限り……本当なんだよな?」
コクリと頷くミホ。
「だとしたらその争いは今の科学技術を遥かに超えた争い、まさに神の域まで達していると考えていいだろう」
「アクタ、それは言いすぎ」
「いや、誰にでも変身出来るんだろ? 実際警察まで動かしてるわけだし……なんかやべーな。その内国ごと動かしてくるぞ」
「……うん、そうなるかもしれない」
「それでアクタに庇って欲しいから山梨に来た訳か」
「……うんごめん、それがこんなことになっちゃって」
「過ぎたことを気にしたってしょうがないじゃん……っで、あてもなく富士吉田まで来たけどこれからどうすんだ? ヒラクさんよ」
ーーなんか俺抜きで大分話が進んだけど
「……とにかく今は逃げるしかない。どこかもっと遠くに、どうせなら外国へ逃げようか? アメリカ? ロシア? オーストラリア? どこでもいい、どこか遠くへ……」
「ヒラクくん……」
「大丈夫、ミホは俺が守る。アクタには悪いことをした。そこら辺で降ろしてくれて構わない、盗難車の件は全て俺が受け持つ。お前を脅して盗難させたって言えばいい、すまなかった……」
「それは随分と自分勝手な答えじゃないかい?」
「……どういう意味だ?」
「このまま逃げっぱなしでいいのかよ、このまま好き勝手やらせて」
「アクタ、何か方法があるの?」
「……や、考えてなかったけどさ、例えば警察署に潜入調査とか、あとソイツは警察を支配してるんだろ? 一箇所にソイツらを集めて……とか」
「いや、ヨシオがその考えに乗って動くかどうか」
ーーでも、そう動くようにヨシオを誘導出来れば
「とにかく今は身を隠すことを優先して考えよう」