裏切り
車を走らせて約2時間くらい経っただろうか? 俺達は富士山を見上げられるところまで来ていた。アクタはどこに車を走らせているのだろう。あれからずっと車を走らせている。
車内は静かで道路を走る車の音だけが響く。
さすがに警察は来ていないようだがこうやって公道を普通に走ってたらいつ見つかるのかなんて気が気じゃない、すごい恐怖。こうして盗難車を走らせているのだってすごい恐怖、車のナンバーから特定されたら終わりだし……
「雨だね」
ミホが呟く。見ると水滴がポツリポツリと窓に降って流れて落ちて、灰色の空、富士山の頂上も霧がかかったみたいに隠される。なぜだろう、天気がこんなんだと気持ちまで暗くなる。
ーー犯罪者か
人をいじめてはいけません、人の物を盗んではいけません、人を苦しめてはいけません、命あるものを殺してはいけません、そんなは分かってる。法律に基づいて子供の頃から日本国民にとってあるべき姿でいましょうとそう教えられてきた、悪い意味では国にそうなるよう洗脳されてきた。動物本来としての生き方ではなく、高い知能を持った唯一の存在、人間としての道徳精神を教育されてきた。勿論それでこの国は十分成り立っているからそれでいいんだと思う。日本は平和、それでいいんだと思う。でもこの国には冤罪という言葉があるだろう。悪いことは何ひとつしてないのに逮捕され本人がいくら無罪を主張しようが犯人に仕立て上げられる、今の俺達のようだ。
「ねぇ、私達これからどうなるの」
ミホは独り言みたいに言う。俺は答えれなかった。大丈夫、心配ないの一言でもかけてあげるべきか? とでも思ったがそんな無責任なことは言えない。
ーーこれからどうなるのか?
俺達はヨシオのせいで逃亡生活を送らなければならなくなった。Cfは1つしかない、俺とミホの二人を変身させるにはどうしても足りない。このまま逃亡生活を続けるか警察に捕まるか、それとも……
「なあ、ヒラクとかいったな」
今度はアクタが口を開く。
「お前らは一体何したんだ?」
ーーCfのことはまだ話していないし話すつもりもない
「……人を殺した……ってことになってる」
「なってる……って、なんだよそれ」
「言ったろ? 俺達は人殺しなんかしてない」
ふぅーん……と呆れた顔。
「正直さっきはパニックして逃走なんてしちまったが……あの時お前らを大人しく渡せば、アクタは面倒なこと合わずに助かったか?」
「あの時あの状況だと例え俺達を警察に渡そうがお前も殺されてたって、マジで」
「……お前ら嘘ついてないか? 犯罪を犯してなけりゃこんな無理して逃げる必要もないのになぜ逃げる? 第一警察は最初から銃を構えていた、なぜだ? こっちは武器も何も使ってないのに……」
「それは」
ーーさすがに怪しまれるか
「お前らは一体何をしたんだ?」
答えれなかった。色々隠してて何を話していいか分からなかった。
「ヒラクくん、もういいんじゃない? 別に話しても……それより私は協力してもらうべきだと思う。アクタだって私達と同じ、犯罪を犯したんだから」
ミホはそう言う、しかしこのことは出来るだけ話さずにいたいのだが。
そんな俺の考えを無視してミホは今まで起こったことをアクタに話した。