アクタ(3)
「行こ、お爺さん寝てるのに起こしちゃ悪いから。それにアクタ達が来たらミホか二人いる?! って騒ぎになるだろうから」
白く光る明かりを消し立ち去るミホ、後から追いかける。廊下にはニャーと鳴く猫。
「あの猫は?」
「アクタのお婆さんが野良猫に餌あげてたんだって、そしたら次第に家の周りに何匹も集まるようになってやがて家に上がり込んできて知らぬ間に一緒に生活してるって感じ」
人と猫が共存する家ってか? なんかすげーな。
「……なあミホ、この家にいつまでいる気だ?」
「ヒラクくん、仲良くやっていけそうと思って来たんだけど」
「第一俺金髪な奴無理だし、発作が出る勢い」
「発作ってどんな?」
「……気分が悪くなる」
俺を呆れた様子で見つめるミホ。
「分かった、明日にでもこの家出て行く」
「明日じゃなくて今すぐでも……」
「駄目、今日は疲れたから。また明日ねヒラクくん」
ミホはアクタがいる居間へ戻った。
ーーまてよ? そしたら俺は今夜どこで寝ればいいんだ?
誰かに変身したって同じ顔の人が二人いるんじゃ怪しまれるのは当然、外へ出るか? でもミホが心配だし眠いし、出来れば布団の上で寝たい。アクタの家にいる野良猫に変身しようとも考えた、でも変身から戻る時どうすんだ? だって猫の手が触れてスマホが反応するのかが心配じゃないか、やったことないから分からないけど。もし俺の心配したことが当たってたら誰かにスマホの解除ボタンを押してもらうまで俺は猫として生きていかなければならない。そんなのは嫌だからやめておく。
結局朝まで外で野宿か、アクタの家の裏庭で夜を明かした。
今日は早く起きた。まああまり眠れなかったが正解なのだが。時間を確認するともうすぐ8時、ポケーッとしながら朝の光を浴びる。さすが夏、暑い。
ミホはまだ眠っているだろうか、窓からそっと中を確認するが居間にミホの姿はない。寝室で寝てるのか? アクタと一緒に? まさかミホをーーって考えすぎだろう。さすがにそんなことはない……と思う。
そこら辺をふらふら散歩にでも行こうか? そう思ってアクタの家を出ようとする俺の足が止まった。
ーー誰かいる
家の敷地を示すレンガの向こう側に誰かがいる。それも大人数、確かな人数は確認出来なかったがとにかく沢山、
こんな時間にこんな大人数? アクタの友達? いや、何かが違う。雰囲気? 嫌な予感がする、まさか
ーー警察?!
まさかとは思うがもし当たってたら……思い当たるフシもある。多分昨日バイクに乗ってたのを通報されたんだと思う、俺達はヘルメットを被ってなかったから。
ーー警察がここにいるとしたら家の中に突入して来るんじゃ? それはマズイ、非常に
俺は家の裏に回りドンドンドンと何度も窓を叩く。だが返事はない。
ーーこんな時に
今の窓を叩く音が警察に聞こえてなきゃいいけど、でもどうせ突入されるんだ、時間はない。
俺はガラスに向けて思い切り蹴飛ばした。そして中へ入る。ミホを探す。一階をババッと見たがいないのか? ガラスを割った音で出て来ると思ったんだが。気づけば額に汗、心臓がいつもより激しく鼓動している。