逃亡(3)
こんなことになったのはなぜか、改札には既に警官がいた。つまり俺達が何かしたということになり警察が先を呼んで動いた、要は俺達が何かをしたというのが分かればいいんだ。
でも、あの時は雰囲気だけで警察に狙われてると判断したが、もしかして事件なんて起こしてないのかもしれない。俺達の関係のないところで事件が起きてその時偶々改札の前にいて、それを俺は勘違いして自分達が狙われてるとばかりーーいや、警察は今も甲府市街をパトカーで捜索している。それはつまり俺達が何か大きなことを仕出かしたという証拠。やはり俺達は何か事件を起こしたということになっているのか? 分からない。でも、これがヨシオの仕業だとしたら……ヨシオが昨日の復習に警察を使ったとしたら。あり得そうだがだとしたら俺はなんの事件を起こしたんだ? 第一犯人はヨシオだとは限らない。同盟とか言っといて犯人はユウタかもしれないし5人目の所有者かもしれない。マリナちゃんはユウタに捕らえられてるし単独で行動は考え難い。ヨシオか? でもわざわざ警察の力を借りなくても俺を殺そうと思えばいつでも殺せるんだ、ヨシオなら。今ヨシオが見ているなら今殺すことだって出来るはずなんだ。
分からない。俺達は何をしたことになっているんだ。
『先日殺人の罪で逮捕状が出ていた学生二人組みは今日お昼頃山梨県甲府駅でその姿を確認、警察は確保に向かうが再び逃走、警察は現在も行方を追っている』
ネットの記事にはそう書かれていた。スマホを片手に眉間にシワを寄せる俺。どういうことだ? 殺人って俺は人を殺してはいない。ミホに至っては昨日までヨシオによって監禁されていて殺人なんか出来る訳がない。
警察が誤って俺達を犯人にした? いや、そんな訳ない。そんなことしたら誰かがデマの情報を流した?
それになぜあの場に警察がいたのかは分からない、だって俺達は少年法で世間に名前と顔は出されていないはず、なのに最初から甲府駅で降りるのを分かっていたかのように警察は待ち構えていた。これは誰かが通報したという証拠なんだが。意味がわからない。
俺達はあてもなく住宅街をさまよっていた。
「さて、とりあえず今日はネカフェにでも泊まるか?」
「……ねぇヒラクくん、返事来たよ? 私の友達」
ーーえ
まだそのこと気にしてたのか。
「ミホ、今の状況分かるだろ? もう警察に狙われてるんだ。友達なんか信用出来ない」
ミホ、分かってくれ。今の状況は誰も信用出来ないんだ。しかしミホの気持ちは変わらない、
「平気、私の友達にとっても警察って敵だから」
ーー?
それはどういう意味ーーそう聞く前にはもう電話をかけていた。
「もしもし? うん、久しぶり。今から会える? うん今……分かった。じゃあ今から言う場所に来てよ。うん、それじゃあ……」